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放送大学で「ショパン自筆楽譜」の話題!?

 放送大学って知ってますか? 
そう、関東だと16チャンネルでやっている、あれです。 もう少してきぱき講義してもらえればという気もしますが、 あれ、結構面白いことやってると思いますよ。 たまにチャンネル回してみると、 講師がボソボソ話していたりとちったりするので「ええい!」とチャンネル変えてしまいそうになるのを、 少しだけ我慢して「何について喋っているのかな」と見てみると、 結構そのまま見入ってしまうことがあります。 皆さんはあまり見ませんかね。

 さて今日(2003年1月12日)昼頃、なんの気なしにチャンネルを回したら、 いきなり「幻想即興曲」の異稿ヴァージョンの譜面が画面にアップ!  ウォッと思って見入ったら、 ルビンシュタインが演奏したやつでした。 むかしそういうのがあると聞いて、調べようと思ったきり記憶から去りかけていたところです。 6連の八分音符の伴奏形に変化が付けられていることだけは聞いていたのですが、 それ以外の違いもたくさん見せてくれました。 ついでにルビンシュタインの演奏も聞かせてくれました。
 これはショパン自身が改訂したものですが、 もちろんこのヴァージョンの方が現在世界に流布している幻想即興曲より大分いい(一カ所を除いて)と思いました。 ショパン全作品を斬るで私は幻想即興曲についてどちらかというとけなし気味に「もっと推敲して欲しかった」と書きましたが、 やはりショパンはブラッシュアップを図っていたわけです。 なぜ古い方の単調な版が現在流布しているのでしょうか。 たまたまフォンタナ出版(同「はじめに」参照)が出回ったということかもしれません。 それにしてもJim Samson講演会「ショパン自筆楽譜を巡って」をアップロードして間もないので、 タイミングのいいこと。
 番組ではもう一つメンデルスゾーンの「イタリア」の異稿についても説明がありました。 これは、講師ははっきりとは言わなかったのですが「メンデルスゾーンはなぜ改良とは思えない方向に改訂したのか。 まだまだわからないことがある。 自筆譜の世界は奥深い」と言いたい感じがうすうす見え隠れし、ちょっと面白かった。 最後に「最近ファクシミリ版で自筆譜が手に入りやすくなったので、これからぜひ異稿についてももっと考えて行きましょう。異稿も文化的財産なのです」という締めくくりでした。

 というわけで番組は私好みの内容だったのですが、 なんでまた放送大学でこんな内容をやっているのかと思って講師を確認すると、 笠原潔という方でした。 さっそくインターネットで検索すると、 音楽考古学(考古学といってもそもそも音楽自体そんなに古くから記録があるものではありませんが)、特に江戸から明治にかけての日本における洋楽の受容について研究している方だそうです。 どういう基準で放送大学の教育内容が検討されているのかなと思って放送大学のシラバスを見てみました。 教養教育・生涯教育が基調となっているようで、 大局的な方向性はしっかりしたコンセプトが感じられます。 個々のテーマについてはたまたま講師が得意なテーマを話しているようにも見受けられました。 番組的にはNHK教育テレビにも近いと言えます。 誰でも見られるという点も。 違いはと言えば、 教育テレビの方は一方通行なのが、 放送大学では単位取得したい学生は試験を受ける必要があることでしょう。 今日のは私にとってはとても嬉しい講義でしたが、 自筆譜に興味ない人にとっては試験、苦痛かもしれませんね。 (どんな試験か多少興味あり。)

 それにしてもファクシミリ版が手に入りやすい時代になったというのはその通りだと思いますし、 デイビット・コレヴァーさんのところで彼も「ファクシミリ版の自筆譜を買うべきだ」と言っていた話を書きましたが、 そうは言っても高いんだし、 こんなの全部買ってたらたまんないですよね。 と言いつつ、 いずれまた妻にねだらなければならないものが増えたかな、 という予感の足音が背後から・・・)

[2003年1月12日 記]
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