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アンサンブル・アメデオ 第11回定期演奏会
パンフレットより

Ensemble Amedeo The 11th Regular Concert
1994年12月3日(土)
於:昭和女子大学人見記念講堂
 


曲目解説

小組曲「降誕祭の印象」

 アマディは1866年12月9日イタリアのロレートに生まれ、1935年6月16日トリーノで没した作曲家です。マンドリンの合奏のためにも多くの優れた作品を残しています。私共のアンサンブルに名を冠し、わたしたちがもっとも敬愛する作曲家のひとりで、演奏会では、これまでほとんど必ずといっていいほど彼の作品をとりあげてきました。
 原曲は、ギターとマンドリンによる2重奏として作曲されています。出版はイタリープレットロ誌。出版年月には1923年と記されていますので、彼の最晩年のマンドリンオリジナル曲「降誕祭の夜」(作品番号484)よりも前に作曲されています。この2つの作品には類似点が多いことに気づきます。どちらも3つの楽章構成。1曲目はともに「横笛」をモチーフにしている点。「夜」では8分の12拍子、「印象」の方は2分の2拍子ですが、一拍間を8分音符3つで感じる旋律から成っている点。2曲目はいずれもゆったりとしたセレナーデ。「夜」の3曲目では鐘がモチーフになっていますが「印象」では1曲目の伴奏に「鐘」が取り入れられています。もっとも「夜」の鐘は E-Fis-E-H、「印象」は E-Cis-D-H となっています。「夜」の方が構想、構成ともにスケールが大きくなっていますが、「印象」をもとに「夜」を導いたのかも知れません。こういうことを想像すると思わずわくわくしてきます。楽譜の標題の傍らには「かわいい娘カルラ・マリアに捧ぐ」という但し書きが添えられていますので、これはきっとお嬢さんに贈ったクリスマスプレゼントだったに違いありません。
 1曲目は「鐘と横笛」と題されています。ギターは「鐘」の模倣、マンドリンは軽やかな「横笛」の調べを奏でます。素朴ながら、のびのびとして大変爽やかな曲です。副題にはSfumaturaとありますが、これには「夕暮れ」という含みがあります。黄昏時の変わりゆく空の色合いを描写しようとしたのでしょうか。
 2曲目は「薪を囲んで」。Cepoというのはクリスマスの日に焚く特製の薪のことを指します。薪を焚く習慣は欧州各地で行われており、南イタリアでも盛んだったそうです。イタリアのクリスマスには独特の習慣があって、聖歌隊やバグパイプ吹きたちが羊飼いを装って家中を練り歩くそうです。各家にはプレセピオという、キリスト生誕の場面を人形で再現したものをあつらえます。曲はアマディが好んだ「レントワルツ」。ゆったりと情感をもって歌われます。旋律は親しみやすく、平凡ですが、愛らしく、赤々と燃える薪を囲んでなごやかな家族の団らんが聞こえてくるようです。
 3曲目は平穏な「ガボット」。標題を直訳すれば「雪が降っている」という意味ですが、その主題は無邪気に、おどけて、それはそれはとってもメルヘンな曲想なので、いっそのこと「雪やこんこん」としてしまいました。中間部にはうっとりするような情景的な場面が挿入されています。にぎやかなパーティーの灯りは、深く積もった雪が重く垂れている軒の下から、ほのかに漏れています。外の空気はしんしんと凍りついています。冬の夜空に粉雪がはらはら舞ってきました。きっと明日はあたり一面にパウダースノーですっぽり覆われてしまうことでしょう。


特徴的小品「降誕祭の夜」

 マネンテは1867年2月2日イタリアのサンニオに生まれ、1941年5月17日にローマで没したイタリアの作曲家です。初めは父から、後にはナポリにあるサン・ピエトロ・ア・ミエラの音楽学校に学びました。その後、マドリッドの音楽学校、ローマのサン・チェチェリア音楽学校でも学んでいます。歩兵軍楽隊の指揮者、楽長などを就めるかたわら、吹奏楽曲(約100曲以上)マンドリン合奏曲(35曲以上)ピアノ曲(20曲以上)など多数の作品を残しています。
 編曲者中野二郎氏は晩年のマネンテと直接の交渉があったそうです。その関係で吹奏楽曲などの作品を数多くマンドリン合奏に編曲して紹介しています。本曲もそのひとつで、中野氏自らによる解説によれば、元曲は25の吹奏楽器のために書かれているそうです。作曲の年代は、はっきりと楽譜には記されていませんが、おおよそ1903年から1908年の間と推定されています。これはちょうど彼の代表作「メリアの平原にて」のすこし前、また、吹奏楽曲「華燭の祭典(幻想曲)」などと、ほぼ同時期にあたります。
 マネンテは軍楽隊の隊長でしたから、勇ましい行進曲のような作風もその特徴のひとつですが、ときおりイタリアのロマンティシズム溢れる、叙情的な旋律も数多く残しています。この曲は後者の代表作といえましょう。終始貫かれた8分の6拍子にゆらゆら揺れながら、牧人が田園に戯れるかのような優美な調べが織りなされていきます。この曲はマネンテが書いた賛美歌です。巧みな転調によりしだいに高揚し、やがて長大なクライマックスに達すると高らかに教会の鐘が響きます。  


交響曲「イタリー風」より「夜曲」

 元曲はロシアの民族オーケストラのために書かれており、「イタリア風」と題された、大がかりな交響曲の第2楽章にあたる作品です。
 作曲者ヴァシレンコについては、はっきりとしたことは明らかではありません。ロシアメロディアのレコード解説にある僅かな手がかりに頼れば、生まれが1872年、1956年に没しているロシアの作曲家で「ロシア民族オーケストラの可能性を広げ、オリジナル作品に独自な境地を拓いた先駆者」との記述があります。彼はロシアの歌や踊りの音楽を主題に取り入れて、それらを近代的な和声と表現で彩っていくことに成功しました。
 感傷的な主題は、転調を重ねる度に、その色合いを刻一刻と変化させていきます。全体を支配するリリシズムと透明感は絶妙。トレモロは延々と連なるツンドラの、荒涼として凍てついた針葉樹林のざわめきを彷彿とさせます。副旋律は8分の6拍子。黒いマントを羽織った闇の支配人が不気味な笑みをこぼしながら飛び回っているようです。尖ったような爪先でツンツンと仲間を従えて踊りまわるのです。やがて夜のとばりの暗闇の彼方に消えてしまいます。すると、遠くの方から軽快なそりの群れがトナカイにひかれて近づいてきます。それは、陽気で喜びに満ちあふれています。賑々しくけたたましい音を鳴らしながら目の寸前を過っていきます。主題はそりのリズムに煽られて一時勢いをつけますが、それも束の間、しだいに遠ざかり、再び夜の静寂がもどります。やがて凍えるようなトレモロで、その広大な大地をすっかり敷きつめてしまいます。


メリー・クリスマス・メドレー

 クリスマスの4週間前(アーベント)になると、街じゅうは色とりどりの飾りつけで賑わい、家の暖炉の上にはクリスマスカードが並べられます。クリスマスにまつわるフォークロアは実に多彩で、それぞれお国柄を表して変化に富んでいます。キリストの生誕の様子をベツレヘムのかいばおけ、羊飼い、動物などを配して模した活人画の風習は各地で盛んでドイツではクリッペ、フランスではクレーシュ、イタリーではプレセピオと呼ばれています。サンタクロースのおこりはオランダの移民がアメリカへ渡ったときに最初に建てた教会をサンテ・クラースに献じたことにゆかりがあるそうです。貧しい人を助けたり、いじめられた子供を救ったりするなど、彼にまつわる伝説は多く、それらの話がもとになっていつしか子供の守護聖人として崇められるようになってきました。クリスマスの贈り物は、サンテ・クラースの祝日である12月6日の前夜に、気づかれないようにそっと贈り物をしたという習慣に発しています。サンタクロースが空を飛んでやってくるのは、北欧の神話に出てくるオーディンという神様が空から降りてきて人間を裁いたという、ちょっと恐ろしい伝説に基づいているそうです。クリスマスツリーは、もっぱら木が枯れてしまって、雪で白く覆われるなか、緑の木が珍重されて飾れるようになったといわれています。もみの木は悪霊を避け、幸運を呼ぶものとして大切に扱われたのです。
 クリスマスのために作られた曲はどれも明るくて暖かみがあって、穏やかなものばかりです。歌詞は素朴で新鮮なものが多く民族のクリスマスに寄せる喜びが率直に歌い上げられています。キャロルの語源は中世フランスの輪舞(carol)からきているそうです。キャロルは中世から18世紀にかけて出版されると、ただちに教会の賛美歌として受け入られていきました。

 メドレーのオープニングは《もみの木よ、もみの木》。樅の木をクリスマスツリーとして飾る習慣が定着したころから、このうたが歌われるようになりました。《ホワイト・クリスマス》は、きわめつきのクリスマスソング。1942年の映画「ホリデイ・イン」のためにアーヴィンッグ・バーリンが作詞作曲し、同年のアカデミー映画主題歌賞を獲得しました。のちにビング・クロスビーのレコードは世界的なベストセラーになりました。《リトル・ドラマー・ボーイ》は、合唱団のリーダーハーリーシメオンが1958年に作曲した比較的新しいクリスマスソング。「新しく生まれた王様にみんなが贈り物をするのに、貧しい少年は何も持っていくものがありませんでした。そこで、一生懸命自分の太鼓をたたいてあげると、王様はとても大喜びでした。」クリスマスといえばやはりこの曲《ジングルベルズ》。1857年、アメリカのジェームズ・ピアポンドが作曲しました。そして、《きよしこの夜》。世界中で知られるこの歌は1818年のクリスマスの日にザルツブルグ近郊のオーベンドルフで司祭だったJ.モールがバイエルンの教会にあったラテン語の歌詞に手を加えたものです。陽気に弾む《ウィンター・ワンダー・ランド》は1934年、フェリックス・バーナードの曲にディック・スミスが素敵な詩をつけて大ヒットしました。「そりの音が聞こえますか? 小道に雪が輝き美しい情景。 わたしたちは今宵は幸福。 冬の素晴らしい世界を歩いていく・・・」と歌われます。そして《もろ人こぞりて》。エンディングは力強くこの祝典的な曲で華麗に締めくくります。


「アルルの女」第一組曲

 この著明な組曲は、フランスの文豪アルフォンス・ドーデーの短編集「風車小屋便り」の6作目「アルルの女」の戯曲化にあたり、ビゼーが付随音楽として作曲した27曲の管弦楽曲のなかから、作曲者自身が選んで編纂したものです。
 物語は南フランス、ローヌ川沿いの田園地帯の小さな農村カマルグでの情事。その村の旧家の長男フレデリはアルルの少女に恋をします。2人の婚約を祝福しているときに、その女性がカマルグの牧夫の情婦であることを知り、その婚約は破棄されてしまいます。母親は幼なじみのヴィヴィアンヌとの結婚をすすめますが、フレデリは一向に関心を示そうとしません。アルルの女への思いが募るばかり。ついに聖エロワの祭の日(12月1日)、中庭での宴の真最中に、嫉妬のあまり穀物倉から身を投げてしまいます。三幕の悲劇を上演するために劇中の音楽を依頼されたビゼーは、この戯曲にすっかり惚れ込み、一気に仕上げてしまったと伝えられています。

《プレリュード》
 アレグロ、ハ短調。行進曲風の主題はプロヴァンス民謡「三人の王の行列」からとられています。三人の王というのはキリスト生誕のときに東方からそれを拝みにきたという三人の博士のことを指しています。なんとこれはクリスマスキャロルだったのです。この力強い主題は2回目には柔らかく、3回目には激情的に、4回目はハ長調で優しく、さらには、けたたましく強奏で、という具合に次から次へと変奏されていきます。2部は変イ長調に転じて甘い旋律、これはフレデリの苦悩の動機。それはしだいに高揚して劇的なクライマックスを築いたかと思うと、消えるように終わります。

《メヌエット》
 祭りの日の場面の開幕前に演奏されたメヌエットで、全体に素朴で明るさに輝き、祝宴の気分を掻き立てます。中間部ではバグパイプのような5度の伴奏型にのって、長閑でひなびた田舎の祭りのおおらかな気分を醸し出しています。

《アダジェット》
 アダージョのはやさの小さな曲という意味。老僕、老婆が幾十年ぶりに再会し、互いの昔の恋を思い起こして静かに語り合い、やがて抱擁するという場面で奏でられます。この音楽の美しさは類稀であって、ビゼーの作品中でも傑出しています。

《カリョン》
 鐘の音楽。祭りの日の花飾りが施された中庭を、晴着姿の若者が往来するという賑やかな場面で演奏されます。その曲想は華やかで屈託がなく、歓びに満ち溢れています。中間部は、感傷的で牧歌風の2つの旋律からなるデュエット。双方の旋律は互いに寄り添うように交錯して、田園のまばゆいばかりの光の音楽を織りなしていきます。


組曲「マ・メール・ロワ」

 ラヴェルはたいへん子供好きでした。友人ゴデブスキーの家にもよく遊びに行き、2人の子供ジャンとミミーをひざに抱いてはお伽噺をよく聞かせたりしたそうです。ピアノ連弾用に作曲された「マ・メール・ロワ」は、この2人の子供に捧げられました。マザー・グース(鵞鳥のお母さん)という意味のこの題名は、17世紀の有名なシャルル・ベローのお伽噺集からとられました。ラヴェルは、この小組曲に、子供の世界への愛着と、遠いルイ王朝時代のバロック様式の優雅な世界への憧れとを重ねあわせて表現したのです。

《眠りの森の美女のパヴァーヌ》
 パヴァーヌというのは16世紀初頭に宮廷で流行した舞曲。Pavoとはラテン語で「孔雀」の意で、あたかも孔雀がその羽を広げたように高貴に、威厳をもって踊られました。蔦の生い茂る深い森の奥で眠る王女フロリーヌ姫に、優しくささやきかける子守歌です。その僅かな20小節のなかに優雅、憂愁の情緒を端的に折り込み、まさに俳句のように簡潔で味わい深い逸品です。

《親指小僧》
 楽譜のト書きにはペローの物語からその一節が直接引用されています。
〜親指小僧は自分の通った道にパンを捲いておいたので、それでたやすく道がみつかると思っていました。ところが驚いたことに、パンはひとかけらも残ってはいませんでした。小鳥たちがやってきてみんな食べてしまったのです。〜
 定まらない拍子は森の迷路を彷徨う不安な情緒を巧みに表し、揺れ動く和音のうねりは鬱蒼と生い茂る森を覆う靄のようです。森の寂しさ、いつしか焦燥感に替わっていきます。雀やカッコウの囀りそれらは子供心には、恐ろしい悪魔の囁きに聞こえてくるのかもしれません。

《パゴダの王女レードロネット》
 これはドールノワ夫人の「緑色の小蛇」という童話にもとづくもので、やはり曲頭に物語からの引用が記されています。
〜女王様は着物を脱いでお風呂に入りました。するとパゴダの人形たちは歌をうたい、楽器を鳴らし始めたのです。くるみの殻の堅琴を持つもの、アーモンドの殻の胡弓をな鳴らすもの・・・だって、小さい体には小さい楽器が必要だから・・・。〜

《美女と野獣の対話》
 あまりにも有名なド・ボーモン夫人の童話。呪いにかけられた王子は、醜い野獣の姿になって王女に会います。王子は美しい王女を一目見たので、もう死んでもいいと言いますが、王女の純粋な愛情はついに呪いを克服して、王子は再びもとの姿にもどってめでたしめでたし。「美女」を表す優雅なワルツと、うめき声のような「野獣」のモチーフ。これらが交錯しあいながら激しく葛藤を繰り返して盛り上がっていきます。

《妖精の園》
 眠りの森に帰ると、あたりは魅惑的な光で満たされた妖精の楽園。やがて花園にまどろむ美女が映し出されます。王子がゆったりとしたサラバンドにのって、森のなかに入ると、魔法はみるみる解けて、王女フロリーヌは永遠の眠りから目を醒ますのです。太陽が昇り、二人のよろこびは陽の光りに包まれて、輝かしい幸福感で満たされます。

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