豊穣のレバノン〜バールベック
 
Baalbeck
 
 
バールベック
 

  国土を南北に縦断する、西のレバノン山脈と東のアンチ・レバノン山脈に挟まれたベカー高原。そのほぼ中央に位置するのが、中東屈指のローマ遺跡であるバールベックです。レバノンきっての見どころであるこの遺跡は、古代フェニキアの豊穣の神バールに由来し、建物の多くが失われてしまった今なお、圧倒的なスケールで迫ってきます。  

 
国境
 


   
最前線
シリアから陸路でレバノン入り。検問所で待たされている間、売店のオヤジたちとダベったり、警察署のトイレを借りたりと、草の根の異文化交流を楽しんできました。ほのぼのとした田園風景ですが、有事になるとここは最前線。そんな緊張感がかすかに漂っているように感じたのは思い過ごしでしょうか。
   

 
入口〜庭園
 


       
 
神殿入口
チケットを買って入場すると左手に階段があります。かつては幅が43mもあったそうで、入口を飾る列柱にはエジプトのアスワンから運ばれたという花崗岩が用いられています。
 
前庭
階段を登ったところにあるのが前庭。しかし今では崩れた建物の破片(けっこう大きい)が足の踏み場もないほど散らばっていて、さながら資材置き場といった趣です。
 
大庭園
前庭に続いては大庭園が配置されています。この広大なスペースには夏になると仮設のステージが設けられ、クラシックをはじめとする各種のコンサートが開かれます。
 

 
ジュピター神殿
 


   
大列柱
庭園を抜けた丘の上には、かつてジュピター神殿が建っていました。唯一残る遺物が6本並んだこの列柱。20mもの高さは間近で見るとかなり威圧感があります。かつてはこんなのがにょきにょきと生えていたんですね。写真は角度を変えて撮っただけで、列柱が2セットあるわけではありません。念のため。
   

       
 
水道橋
ローマ遺跡と言えば水道橋。よく見かけるアーチ型ではないものの、10mあまりもある巨石を建材としている点が独特です。レバノン山脈の雪解け水を引いたのでしょうか。
 
芸術写真
足元から見上げると列柱の大きさがさらによく実感できます。天井には装飾が施されていますが、遠すぎるのと逆光とでなんだかよくわかりません。それもまた、いとをかし。
 
一枚岩
バールベックはいたるところに尋常ではないほどの巨石が使われています。神殿の床もよく見ると継ぎ目がありません。一枚岩なのです。いったいどうやって運んだのでしょう。
 

     
大列柱再び
ジュピター神殿を見たら、丘を一段下がったところにあるバッカス神殿へと向かいます。その途中、振り向くと大列柱が逆アングルでそびえていました。宙に浮んでいるかの如きその姿は、さすがバールベックのシンボル。荘厳なまでに堂々としています。ローマ帝国というとキリスト教というイメージですが、バールベックが築かれ始めたのは紀元後すぐの頃。まだキリスト教は国教ではなく、ギリシャの神々が信仰対象でした。ジュピターやバッカスなんてそうですよね。ちょっと離れたところにはヴィーナス神殿もあります。
     

 
バッカス神殿
 


       
 
現存
バールベックの中で唯一ほぼ完全な形をとどめているのがこの神殿です。バッカスと言うと酒の神として有名ですが、それにちなんでかベカー高原はワインが名産です。
 
落し物
神殿の周りにはこうした遺物が無造作に転がっていました。考古学的にはかなり価値の高いものなんじゃないの? 触っちゃってもいいのかな。触っちゃったけど。
 
神殿内部
バッカス神殿の内部はこんなふうになっています。レバノン杉で葺かれていた屋根はさすがに落ちてしまいましたが、柱や壁は威風堂々たるものです。
 

   
フェスティバル
この日はちょうどフェスティバル開催日ということで、レバノン国営テレビが大掛かりな機材を持ち込んで中継していました。パラソルや垂れ幕がお洒落ですね。何の番組だったんだろう。この地域では東洋人はまだ珍しいので、ひょっとしたら映ったかな。インタビューしてくれてもよかったんだけどな。
   

     
ローマ装飾
壮大な規模もさることながら、柱や天井に施された手の込んだ装飾を見るにつけ「これぞローマ遺跡」と唸ってしまいます。東地中海地域のローマ遺跡としては、トルコのエフェスやシリアのパルミラなどと比べて知名度で劣るものの、中身は全く引けをとりません。それぞれに特徴があるので、見比べるのも楽しいですね。で、バールベックの特徴といえばギリシャ風ということでしょうか。ローマ遺跡にありがちな無骨さよりも、アテネ・アクロポリスにも通じる繊細な優美さが先に伝わってきます。
     

 
街角の風景から
 


       
 
ヒズボラ
遺跡の一角にある博物館は、内戦時からイスラム教シーア派の武装組織「ヒズボラ」の拠点となっています。過激派と観光地が共存する中東の現実がここにあります。
 
東の遺跡
道路を挟んだ反対側にも遺跡はあります。周囲を住宅に囲まれた一角は、発掘のため地表よりいくぶん低い窪地になっていて、ローマ時代の遺物がごろごろしています。
 
世界七不思議
遺跡近くの石切り場に残された、現代のどんな重機をもってしても動かすことすらできない巨石。中央に点のように見えるのが人と言ったら、その大きさがわかるでしょうか。
 


   

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