豊穣のレバノン〜アンジャール
 
Anjar
 
 
アンジャール
 

 
アンジャール遺跡
 


   
ウマイヤ朝時代
アンジャールはウマイヤ朝によって8世紀に建設されたイスラム都市です。一見するとローマ遺跡のように思えますが、石の積み方やアーチの形状などが違うので、慣れるまではどこか違和感を覚えます。そのため、同じベカー高原にありながらバールベックとは少し趣が異なります。
   

   
四面門
パルミラやジェラシュでよく見かける四面門がここにもあります。ウマイヤ朝は歴史上初めてのイスラム王朝であったため、イスラム独自の様式というものがまだ確立しておらず、部分的に伝統的な建築、すなわちローマ時代の方法が採用されていました。柱の継ぎ目のあたりを見ると過渡期の状況がよくわかりますね。
     
宮殿
戦乱の歴史を経てきたせいか、アンジャールには往時の姿をとどめる建物はあまり現存していません。その中でひときわ目を引くのが宮殿跡です。イスラム様式に従って色違いの石を交互に積み重ねた壁が、まるでウエハースのよう。二階部分にアーチ型に組まれた柱と相俟って、「お菓子の家」を連想させます。
   

 

 
レバノン杉
かつてレバノン山脈はおろか、トルコのアナトリア高原一帯を覆っていたレバノン杉は、有史以来の長期間にわたる開発により、今ではレバノン全土でも1200本あまりにまで激減しました。石や日干し煉瓦が建材の中心だった中東において、神殿の屋根材などに重用されたのです。この貴重な自然遺産を未来に残すために、さすがに今は一切の伐採が原則的に禁止されています。日本ならまず間違いなく特別天然記念物に指定されるであろうその貴重な植物が、アンジャール遺跡の中に1本だけ植えられています。
レバノン杉と普通の杉との最大の違いは樹皮の形です。普通の杉の樹皮が縦に細長く剥がれるのに対して、レバノン杉の樹皮はまるで魚のうろこのような形をしています。松ぼっくりの表面と言った方が良いかもしれません。
   

 
街角の風景から
 


       
 
壊れた線路
バスの車窓から、内戦時の爆撃で文字通り分断された線路を見つけました。平和な現在からは想像することすら難しい惨劇が、この地で繰り広げられたという証拠です。
 
レバノン料理
レバノン料理は他の中東諸国の料理とは明らかに「ひと味」違います。フランス料理並みに手の込んだ味付けは、世界三大料理のひとつにぜひ推薦したいものです。
 
海水浴とスキー
2000m級の山々が連なるレバノン山脈には夏でも雪が残っています。地中海にも近いことから、午前は海水浴、午後はスキーという楽しみ方ができるのです。すごいでしょ。
 


   

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