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スイスの印象…トランジット・モールとパーク&ライド

OZ.


 この3月にスイスへ行った。ジュネーブなど数都市と、山岳リゾート地・ツェルマットを訪れた。
 そこで印象に残ったのは、ヨーロッパにおける環境保全や街づくりを考慮した交通システムのあり方だ。
 その背景には、財政面での補助等、交通機関への自治体の積極的関与があると聞いている。しかし、現時点では、私はそれらに触れるだけの知識を持ち合わせていない。そこで、今回は、私の印象に残ったことについて触れてみたい。


●ジュネーブのトランジット・モール

[写真]ジュネーブのリーヴ通り

 スイスの各都市では、路面電車・トロリーバス・バスといった公共交通機関がたいへん充実しており、市内の重要な移動手段として位置付られていることがうかがえる。
 私はジュネーブ・チューリヒ・ルツェルンの3つの街を歩いた。その中で特に印象に残っているのは、ジュネーブの旧市街にあるリーブ通りの「トランジット・モール」だ。

[写真]リーヴ通りを走る電車

 トランジット・モールとは、路面電車の軌道を中心としたモール(商店街)のことだ。軌道は一般車乗り入れ禁止。軌道の両側は歩道となっていて、人々が自由に通行できる。一般の車が進入してこないので、歩行者にとっては安全だ。また、歩道がそのまま路面電車の停留所になっているので、いちいち階段を昇り降りしなくてよい。
 なお、「一般車乗り入れ禁止」と述べたが、バスおよびトロリーバスは走っている。バスと路面電車は同じ停留所で乗り降りでき、利用者の利便性を図っている。また、軌道を自転車で走っている人もおり、自転車の軌道敷走行は構わないようだ。

 日本では、新しい公共交通機関というと、高架橋や地下を走るモノレールや新交通システムが多い。私は最近、仕事で東京の臨海副都心地区へ行くことが多く、「ゆりかもめ」をよく利用している。「ゆりかもめ」の各駅には、エレベータやエスカレータが完備されている。
 しかし、いくらエレベータやエスカレータがあるとはいえ、からだの不自由な人や高齢者にとっては、地上からホームへ行くだけで大変だろう。30代の私でさえ、例えば「ゆりかもめ」の有明駅のホームまで上るのは面倒くさい。

 地上を走る路面電車やバスならば、このような「障壁」はより少ない。特に路面電車は、排気ガスを出さない、専用軌道を走るので安全、といった長所もある。今後、日本においてももっと見直されてもよい。


●内燃車のないリゾート地・ツェルマット

[写真]タッシュ駅の駐車場

 マッターホルンのふもと、標高1620mのツェルマットの町は、空気を汚染しないように、内燃車を締め出していることで有名だ。ここは、冬場はスキー・リゾートとなり、スイス外からも多くの人が訪れる。私と友人もその中に混じって、スキーを楽しんだ。

 ツェルマットの町の中の主な交通手段は電気自動車だ。タクシー、各ホテルの自家用車、そして町のなかをまわるシャトルバスもすべてバッテリーで動く。電気自動車が普及する前は馬車が主だったそうだが、今では高級ホテルの送迎用に2台しか残っていないということだ。
 では、スキーヤーやハイカーはどうやってこの町に来るのかというと、まずは、鉄道を使う、という方法がある。私たちもそうした。

 では、自家用車の場合はどうするのか? 自家用車で来る人に対しては、「パーク&ライド」というシステムがある。ツェルマット鉄道の終点・ツェルマット駅の一つ前のタッシュという駅に大規模駐車場が用意されている。ここに車を止めて(park)、電車に乗って(ride)ツェルマットへ入るのだ。
 今回私たちが訪れた際には、ツェルマット鉄道が、さらに標高が低く、スイス国鉄との接続駅でもあるヴィスプでのパーク&ライドを宣伝していた。
 この「パーク&ライド」というシステムは、市街中心部の車の量を減らすためのもの、と認識していた。しかし、リゾート地でも活用されていることが分かった。

 日本でも、尾瀬周辺では、ハイキングシーズン中のマイカー乗り入れ規制を行なっているが、このようなシステムは、他の地域でももっと採用されて然るべきと思う。


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