トップの画像植井努の一秒間に24

hula-hooper発行「ふらぴすとに屋」にて連載中!




二人乗りで行こうよ

1997年公開 カラー60分 監督、出演者、不明。

 蒸し暑くなってくると思い出す親子がいる。汗っかきのその親子がシャツの脇に汗染みをつくりながら挨拶に来る。平日の午後、宗教の勧誘に耳を貸すのは私くらいで、5分程の訪問を追い返すわけでもなく暇つぶしに対応してたら、何度目かに集会に誘われた。動機の九割を占めるのが冷やかし的な感情であったことで熱心な親子に罪悪感を感じつつも集会へ行った。梅雨時の区民会館。ほぼ全員、無印良品で売ってるような服を着て。

 教祖様の話はありがちで、私がその説法の原稿を書き直そうと思ったくらいのものだったが、その後唐突に上映された映画は面白かった。
 たぶん信者達が撮ったのであろう。たどたどしい演技と酔うようなカメラワークが映画に集中するのを絶えず邪魔したことは確かだが、教祖様が次々と奇跡を起こし世界(主に杉並区)を救うので気持ちよい。救う理由は全て教祖様の超人的な能力で前フリも説明もなしなので、それが逆に映画のテンポとありえないストーリー運びになっており、はっきり言って傑作であった。

 その後、続編が出来る度に集会に足を運んだ。彼らの演技、技術はどんどん向上していき、そして彼らはどんどん映画にのめりこんでいったようだ。それまで駅前で勧誘のビラ配りの姿をみかけていたが、だんだんロケ撮影している姿ばかりをみかけるようになったのだ。

 私が見た彼等の最後の映画は「二人乗りで行こうよ」というタイトルで、例の親子が主演の普通の映画だった。どう深読みしても、そこから宗教的な匂いは感じられず、普通の、つまらない映画だった。そして集会は開催されなくなった。

駅前で教祖様が一人、背中丸めてビラ配り。脱会した信者達はきっと今頃、映画作り。さみしいから集まってただけで映画でも宗教でもどっちでもよかったんだよ。大抵のことはどっちでもいいし、なんでもいいし、どうでもいい。君の、それを、信じるな。




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