エアコン現代化

 2001年の8月の事になるが、エアコンを修理した。既にコンプレッサーはオシャカになっており、オイル漏れまくり=ガス漏れまくりとなっていた。当然冷風が出るわけもなく、A/Cは好んで使わなかったのでそのまま放って置いた。しかし、必要に迫られ修理に至った。
 もちろんただ修理するだけでは面白くないので、新ガスのR−134にコンバージョンすることにした。旧ガスのR12はご存知のように93年くらいに製造中止となり、もはや入手困難。幸い手元に250g缶が5本ほど残っていたが、これっきり入手不可能ともなりかねない。入手当時は1缶数百円だったものが、今では数千円のオーダーに達している。ガス補充にもコストがかかるし環境にもよろしくない。どうせコンプレッサーは新品にしないといけないので、ここは新ガスへの移行へと踏み切ったのだ。

 エックラーなどからR−134へのレトロフィットキットなるものが売っている。新ガス対応Oリングとオイル、フィッティングの変換アダプター、ドライヤー、リビルトコンプレッサーがセットになっている。オイルとOリングとフィッティングだけのキットもあるが、A/Cシステム分解時はドライヤーの交換は必須なので、皆さんもどうせなやるならコンプレッサーとセットになった物を使おう。

レトロフィットキット
レトロフィットキット

 新ガスと旧ガスを混ぜてはいけないのは当然だが、それ以前にオイルの相性が悪い。旧ガスに主に使用される鉱物油には新ガスが馴染まず、旧ガスのオイルに新ガスを入れると均一にオイルが循環しないなどの原因でコンプレッサー焼き付きなどのトラブルが発生すると言われる。新ガスには化学合成油が指定となっているのだ。また、新ガス旧ガスでOリングも違い、旧ガス用Oリングに新ガスオイルを使うと、これまたOリングが溶けるなどしてエキパンが詰まったりガス漏れが発生すると言われる。この辺の相性話しはまた後半に述べよう。

 さて実際のコンバージョンだが、交換した物はコンプレッサー、ドライヤー、高圧ゴムホース、エキパン、Oリングである。
 まずはそれらの分解にかかる。高圧ホースを交換するにはフードを外してしまわないと、コンデンサーのフィッティングを外すことが困難なので、フードは取ってしまう。ドライヤーへはサイドルーバーを取り外してそこからアクセスする。ドライヤーのフィッティングナットはかなりでっかいので(27mmくらい)、大きめのモンキーでも用意しておくとよい。

フード
フードは外す

サイドルーバー
サイドルーバーを外してアクセスする

 エキパンはエバポの直前に付いている(写真参照)。摘出したエキパンは黒ずんでおり、切り粉が少々付着していたが、目立った詰まりはなかった。異物はコンプレッサーから出てきた物だろう。もちろん新品に交換する。

エキパンの場所
エキパンの場所

エキパン
黒ずんで異物の付いたエキパン

エキパン
新品のエキパン

 新ガス対応オイルを入れる前に、エバポとコンデンサーのフラッシングをしなければならない。エアを使ってブレーキクリーナーをしこたまぶち込んだのだが、放熱容量が大きいので全部途中で気化してしてしまい、出口からは空気しか出てこなかった。
 前述のようにオイルを混ぜると化学変化すると言われていたので、試しに旧オイルとキットに付属のエステルベースの化学合成油を混ぜてみた。結果は、な〜んの変化もなし。少々混ざっても大丈夫そうなので、フラッシングは終了(^^ゞ まあ、殆どのオイルはコンプレッサーとドライヤーに入っていたので問題ないだろう。また、オイルのパッケージにはR12・134両方いけると書いてある。旧ガスには鉱物油しか使えないなどと言われているが、タダの噂が神話と化したのだろう。

新オイル
専用エステルベースの新ガスオイル

 コンプレッサーはリビルト物だが、新品と遜色ない。既にオイルはインストールされているが、このオイルが旧ガス用なのか今回用意したオイルと同じなのか素性が分からない。よって一旦廃棄して、新オイルを規定量補充する。少々オイルが混ざるが、これも相性テストをして問題なかったので少々混ざったまま使用する。

コンプレッサー
リビルドコンプレッサー

 Oリングは旧ガスと新ガスで色が変えてあるのが日本では一般的。旧ガスが黒で新ガスがオレンジとか緑になっている。レトロフィットキットに付属していたOリングもブルーになっていて一見それっぽかったのだが、実は普通の黒リングに上から着色しただけ。青い色はぽろぽろ剥げる(^^ゞ ということで、Oリングも実は専用である必要はないようだ。メーカーの都合上色分けしてあるに過ぎないのだろう。

 ガスを充填するフィッティングはR12と134では形状が異なるのでアダプターを付ける。これでR134専用システムになったわけだ。R12のようなねじ込み式ではないので、マニホールドゲージなどを取り付ける際にガスが漏れることがない。大気中に一切冷媒ガスを放出してはならないというキビシイアメリカが産んだ規格だ。

フィッティング
専用フィッティングアダプター

 全ての組み付けが終わり、ガスを充填するのみとなった。レトロフィットキットの取り説によると、ガスの充填量はR12の80%に留めろと書いてある。確かに缶入りのガスの容量がR12とR134では違う。R12の250g缶と同じ形状のR134缶は200gしか入っていない。恐らく、ガス圧の違いによる物でR12と同じ容量を充填するとトラブルの恐れがあるので、取り説通りR12の80%の容量を充填した。この辺のガス圧の違いが効率の違いとなりR134はR12と比較して冷えないのだろう。

 肝心の冷えの方はR12の様な凍るような冷気は出てこないが、必要十分に冷える。現在まで1年近く使用しているがガス漏れもトラブルもない。今回のコンバージョンは大成功と言えよう。ガスの入手に右往左往する必要もなく、環境にも優しく堂々とエアコンを使用できる(^^ゞ

 結論・・・オイル以外は特に新ガス専用の物を用意する必要はない。専用のコンプレッサーやエキパンが必要と言われるが、同じハリソンのR4コンプレッサーを使っている新ガス仕様の車を見ても、R134用に特化した造りにはなっていないようだ。よって、オイルさえエステルベースのものに交換してしまえば、そのままR134にコンバージョン可能だろう。
 TS−012などR12の代替ガスが出回っているが、中味はR134をアルコールで稀薄した物なのだ。これらのガスを突っ込んで特に問題も出てないところを見ると、つまりはOリングやオイルは旧ガス用でもそのまま使えるとも言えよう。新ガスを突っ込んで文句を言ってくるクレーマーを避けるためにエアコンメーカーが色々理由を付けてそんなことできませんと言ってるのだろう。。。

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