恐怖のステンレススリーブキャリパー

 エックラーにブレーキO/Hキットを注文したところから始まる。このキットには本来SSBC製のキャリパーが付いているはずだが、送られてきた物は廉価版のライフタイムブレーキキャリパーだった。いずれもステンレススリーブ(S/S)だからまあいいかと考えたのが運の尽き。これがもうとんでもないまがい物だったのだ。
 「パワステO/H」でも触れたが、このキャリパーを付けて高速道路を走ると、エアを咬んでブレーキが効かなくなってしまうのだ。長時間ブレーキを踏まずに振動を与えると、どこからかエアが入ってくるのだ。街乗りではこの症状は再現しないのだ。しょっちゅうブレーキをかけているので内圧でエアが入ってこないようである。高速道路でブレーキが効かなくなるので始末が悪い。東京-広島を往復したときだったが、2〜30kmおきにエア抜きをしないと、ペダルが底付きしてしまうのだ。それ以来ブレーキを踏む時に心拍数が上がるようになってしまった。
 このウンコキャリパーだが、SSBCと違うところはインレットシートが打ち込んでいない、スリーブにホーニングがされていない、ピストンがノーマルと同じ(SSBCはアルマイト処理)、塗装の色が違う(SSBCはシルバーだがこれはラクダ色で所々錆びてる)、ブリーダースクリューがテフロンコートじゃない、リークテストされていない(たぶん)等々数え上げればきりがない程の粗悪品なのだ。しかもばらしてみると、スリーブの高さや形状がまちまちだったり、ピストンとシールの間に金属薄膜が挟まっていたり・・・これまた数えればきりがない。命に関わる部分だけに怒り爆発なのだ!!全く、目の青い奴らの作る物はこれだからいかん!!
 SSBCの物を見たこと無いので何とも言えないが、きっとSSBCを使っていたらこんな事は無かったのだろう。
 まず、スリーブだが、これが最もいい加減だ。内面は鏡面仕上げ(カタログにはミラーフィニッシュと書いてある)どころか旋盤で削りだした状態だ。内面にドライバーを這わせると”ぴゅー”と音がする位ぎざぎざになっている。かと思えば、小さなぶつぶつの凹みがあるやつもある。スリーブの上部も面取りしてある物と無い物があるし、一目でいい加減だと認識される。
 挙げ句の果てに、ピストンシールを外していたら間から金属片まで出てきた。こんな物が挟まっていたらオイル漏れして当然だ。
 オイル漏れ&エアリークの箇所は、1.スリーブのぎざぎざから、2.ピストンシールの異物から、3.打ち込んであるスリーブの隙間からと断定した。頭にきたのでスリーブはリューターで削ってペーパーで磨いて、コンパウンドで磨いて”ピカピカのピカチュー状態”にしてやった。スリーブとキャリパーの隙間にはシール材を流し込んだ。このウンコみたいなラクダ色もいただけないので、余っているエンジンエナメルで真っ黄色に塗ってやった。これでだめならもう捨てるしかない。コンクリート詰めにして海に沈めてやる。誰にもあげないからね。こんな物で命を落とされでもしたらかなわない。

クソキャリパー

 だいたいこのキャリパーの設計が古すぎる'65年から変わっていないのだ。取り付け精度によっぽど自信がなかったのかシリンダーの中でピストンが首を振る構造になっている。つまり、少々ローターに対して斜めに付いても、ピストンが傾くことで相殺するようになっているのだ。ピストンシールもシングルリップの頼りない物だ。また、ピストンがスプリングで常に押されているというおかしな構造をしている。
 現代の車は四角い断面をしたシールが一般的だ。そして、マスターシリンダーで押されたピストンは、たわんだシールが元に戻る力でシリンダー内に引き戻される。しかし、コルベットの場合シールがプアーなためシールの力でピストンが戻るのでなく、ローターに叩かれたり、振動でピストンが戻っていくのだ。この時、ピストンスプリングがないと、いつまでも奥に入っていき、しまいには首を振ってオイルがだだ漏れということになる。私はもう怖い思いをしたくないのでやらないが、試しにスプリングを抜いて走ってみると良いだろう。きっと、しばらくブレーキを踏まないでいると、ポンピングしないと踏み代が出なくなるはずだ。

ピストン

 そもそもこんな物まで鉄で出来ているのが信じられない。なんと1個で6kgもあるのだ。6kgだよ6kg!バネ下加重も何も考えてなさそうだ。これではせっかくの対向4ポットキャリパーも宝の持ち腐れというものだ。
 誰か国産キャリパーを移植したと言う人がいたら連絡いただければ非常に嬉しいのだ。

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