2004年読了本リスト(毎月初め頃に更新)

隔離病棟へ戻る。

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 7月 8月 9月 10月 11月 12月


 今年読んだ本のリストです。

1月の読了本
1 『呪われた天使、ヴィットーリオ』 A・ライス
2 『アナザヘヴン2 VOL.1』    飯田譲治・梓河人
3 『アナザヘヴン2 VOL.2』    飯田譲治・梓河人
4 『アナザヘヴン2 VOL.3』    飯田譲治・梓河人
5 『アナザヘヴン2 VOL.4』    飯田譲治・梓河人
6 『パラノイア』          和田はつ子
7 『美女』             連城三紀彦
8 『レモン・インセスト』      小池真理子
9 『血文字パズル』         アンソロジー

 数年ぶりの続編である『アナザへヴン2』。新キャラ(ドラマ版のキャラ)多数登場で展開が大きく広がり、事件を継続して追い続けた一作目とは大きく印象を異にする。「絶対に負けない男」皆月悟郎を主役に据えたストーリーの軸は、飛鷹と早瀬という対抗する個性がぶつかりあった一作目に比していささか印象が弱く、だがそれゆえに主人公自身のキャラは引き立って感じられる。ホラー的要素は大きく影を潜め、現代に救う病巣を描いた悪魔的な絶望感も消えた。より純化して暴走し、滑稽ささえ感じられる「悪意」は、しかし変わらぬ重さでもって主人公たちの前に立ちはだかる。開かれた世界観でファンタジックな一面を見せた今作を「現実味が薄くなった」というのは容易いが、それで切り捨てるには惜しいテーマ性は、依然として確かにここにある。『アナザへヴン3』も出そうだなあ。
 
 幼い頃生き別れになった姉と弟が再会し、やがて禁断の恋に落ちゆく……。『レモン・インセスト』やばすぎるエロさ。こんなものばかり?読んでる故か、ムッツリ呼ばわりされたりもするのですが、しかしいいもんはいいのだ。読む前は「姉弟? やばいんじゃないの?」とか思ってる、つまらん(爆)倫理観は中盤を過ぎて崩壊し、「姉弟? まーやばいけど仕方ないかなあ」となるのだが、小池真理子に遠慮仮借はない。不器用なまでにまっすぐで、人の迷惑など一切無視する豪腕。熱すぎる。

2月の読了本

10『輪廻』             明野照葉
11『ジュリエット』         伊島りすと
12『呪禁局特別捜査官 ルーキー』  牧野修
13『終戦のローレライ』上      福井晴敏

 うわーい、四冊しか読めなかったよ。『ローレライ』が分厚すぎるのがいかんのだがや。

 明野『輪廻』(りんかい、と読もう)デビュー作なのですが、それらしい力の入りよう。作中の邪悪な存在には思わず吐き気を催すが、その悪のスケールの小ささと、小ささと弱さゆえの執念、それに翻弄される無力な人間の姿。それらの描写が素晴らしい。ある意味「得体の知れない存在」としての「子供」を描いた点も、それらの恐怖感に華を添えている。現時点でこれと『赤道』『闇の音』をベストに推したい。人間の「弱さ」を自分の視点から描ける、良き作家である。

 同じくデビュー作『ジュリエット』、これもデビュー作らしく、力の入った作品。ただ、内容よりも描写それ自体、いうなればグログロ部分に力点が流れているような? 「ホラー大賞」を意識した結果だとすれば、もったいない事である。

 『ローレライ』に関してはまた来月に。

3月の読了本

14『終戦のローレライ』下      福井晴敏
15『薔薇船』            小池真理子
16『誘拐者』            折原一
17『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午
18『歌の翼に ピアノ教室は謎だらけ』菅浩江
19『妖怪新紀行』          瀬川ことび
20『半身』             サラ・ウォーターズ
21『逃避行』            篠田節子

 旅行(つっても社員旅行だが)行った割にはあまり読めていないのであった。

 『ローレライ』、上巻二回目の見せ場あたりでは、「ふん、くさい盛り上げしやがって。そんな簡単に感動しないぞ」といつものひねくれ根性で思っていたのですが、上巻終わる頃には「見よ、伊507の勇姿。大日本帝国万歳! ハイル・ヒットラー!」と絶賛?に転向。下巻中盤を差し掛かって、久々にやめたくてもやめられない状態にシフト、そのまま一気に読了。熱い! 個人的に一番印象に残った台詞は「当たれよ……!」でした。終章は絶対必要だが、もう少し短くても良かったかも。

 このミス一位『葉桜』『半身』は、ともにまあまあ。『葉桜』は補遺付きの親切設計に唖然。読者をバカにしてるんですな。『半身』は昨年一位の『飛蝗の農場』がほぼホラーだっただけに、今年もそのつもりで読んでしまい騙された。

4月の読了本

22『スノウ・グッピー』       五條瑛
23『壬生義士伝』上         浅田次郎
24『壬生義士伝』下         浅田次郎
25『万華鏡』            アンソロジー
26『履き忘れたもう片方の靴』    大石圭
27『蛍草』             連城三紀彦
28『世界殺人鬼百選』        ガース柳下

 『スノウ・グッピー』、五條瑛の大作を初めて読んだが、退屈しました。前半だけとはいえ、秘密兵器「グッピー」の謎だけで引っ張るのは弱い。怪しくなさそうな人が怪しいってのもセオリー通りだし……。スパイ同士のやりとりなんかも、緊迫感はあるのだが小説的面白味や諧謔が足りず、つまらん。

 『壬生義士伝』借りて読んだが、下巻序盤で見事に挫折。主人公吉村貫一郎について、色々な人間が語るのだが、全員が「いい人」「すごい人」と語る。同じ話の繰り返しはええっちゅうねん。個々のシーン、エピソードはいいものが多いのだが、二度にわたって同じシーンを繰り返されるとうんざり。斎藤一のパートは映画版の核になっただけあって一番面白い。しかし主人公が死んだ後で息子のエピソードが延々と続くのにも閉口。同じ人格の人間は出てこなくてええっちゅうねん。

5月の読了本

29『虚ろな感覚』          北川歩実
30『女切り』            加門七海
31『真実の行方』          ウィリアム・ディール
32『スパイラル4 幸福の終わり、終わりの幸福』
                   城平京
33『迷宮』             清水義範
34『殺人者の陳列棚』上       D・プレストン&R・チャイルド
35『殺人者の陳列棚』下       D・プレストン&R・チャイルド
36『いつかあなたは森に眠る』    大石圭
37『さよならの代わりに』      貫井徳郎
38『夜啼きの森』          岩井志麻子
39『永遠の森 博物館惑星』     菅浩江

 旅行行って飛行機やらホテルやらで読書三昧。いい気分。

 リチャード・ギアが演技できなさすぎのため、台詞ばかりで主人公のキャラを説明してしまった映画版『真実の行方』。みどころはエドワード・ノートン先生の名演のみでしたが、原作は面白い! 主人公の弁護士のキャラクターも冴え、法廷シーンの展開も切れ味抜群。主人公が切れ者に描かれているからこそ、あのオチも効いてくるというのに。

 『レリック』シリーズでお馴染みペンダーガスト特別捜査官が久々登場、『殺人者の陳列棚』。舞台設定のむやみやたらなスケールのでかさはいささか影を潜めたが、科学ネタをぶちこんだ展開は、メインキャラ脱落寸前の緊迫感も合わさって極上。

 同じSFネタなら西澤保彦読んだ方が面白いに決まってるだろう、という読後感『さよならの代わりに』。小説としてはうまくなってるんでしょうが、ミステリとしてはネタ切れなんだろうか……。しょぼすぎるメイン?トリックと、ドラえもんレベルのタイムパラドックスネタ、やばいんじゃないっすか? 昔のような殺伐とした作品はもう読めんのでしょうか。

 なぜかタイトルに森が入ったのを続けて読んでしまった。『夜啼きの森』、この人の作品はしょーもない田舎もんしか出て来ないし、それほど話が面白いわけでもないのだが、突然ズバッと現実を切り裂いて、読んでいるこちらを別世界へと誘うようなそんなシーンが時々ある。まるで別次元のような岡山のど田舎が、不意に私の住む世界とつながるような感覚。興味深い。『永遠の森』菅浩江、四冊目でようやく大当たりという感じ。泣ける! 美しい! 最高! 他も色々読んでみよう。

6月の読了本

40『名探偵 木更津悠也』      麻耶雄嵩
41『ドアの向こう側』        二階堂黎人
42『家族狩り第1部 幻世の祈り』  天童荒太
43『家族狩り第2部 遭難者の夢』  天童荒太
44『家族狩り第3部 贈られた手』  天童荒太
45『家族狩り第4部 巡礼者たち』  天童荒太
46『家族狩り第5部 まだ遠い光』  天童荒太

 『翼ある闇』のネタバレががっちり含まれた『名探偵 木更津悠也』、実に楽しい。『メルカトルと美袋のための殺人』と合わせ、麻耶ワールドの下支えとなる優れものですな。寡作な人だが、状況の描写という意味での文章力は図抜けた感あり。

 天童荒太、久々の新刊となるのは『家族狩り』の文庫落ち。しかし時代は変わり法律も変わり、児童虐待や家族という物に対する捉え方も変わっただけに、大幅な加筆修正が施されている。底本を読んだのがもう何年も前だけに、犯人が誰かも完全に忘れていた。が、キャラクターや描写の一部にはやはり鮮烈な印象があったらしく、読めば徐々に思い出したところも。正直、加筆部分はいささかテーマが先行気味で説教臭い感じも受けたが、終盤それらを展開に結実させ一気に読ませるストーリーテリングは衰えず。デビュー作『孤独の歌声』は隠れた名作と評価しているだけに、いつになるかわからん次回作(『永遠の仔』の文庫落ちだったりして)でも、娯楽大作としてのテイストは忘れないで欲しい。

7月の読了本

47『天の刻』            小池真理子
48『スタバトマーテル』       近藤史恵
49『夢魔の棲まう処』        藤木稟
50『4人の食卓』          大石圭
51『チェーンレター』        折原一
52『蹴りたい田中』         田中啓文
53『カレーライスは知っていた』   愛川晶
54『穴』              山本亜紀子
55『大鬼神』            倉阪鬼一郎

 藤木稟の代表作「探偵朱雀」に久々の新刊。盗作疑惑や『上海幻夜』『CROOK』の壊滅的な出来、辛うじて「鬼一法眼」シリーズで生き存えて来た感のある著者にとって、今作はまさに正念場。しかし患っていた鬱病からも脱出したそうで、なんとか復活を期待したいところである。結論からいって、今作はまあまあの出来。シリーズの中では最も完成度が低いと言ってもいいだろうか。探偵小説に欲しいある種の冒険譚的な要素がなく、朱雀や律子が表に出て来ず、脇役の刑事が延々と捜査を続ける展開はいかにも魅力に乏しい。だが、第一作『陀吉尼の紡ぐ糸』のメインエピソードを引っ張って来て、中心人物である柏木と絡めたシークエンスは、シリーズものである利点を生かしており、長年の読者には胸を打つものがある。描写自体にも、私が陰の代表作と評価している『イツロベ』を想起させる密度が甦りつつあるように思う。単発作品としては失格だが、シリーズの一作品としては及第。

 ホラー文庫からの出版、山本亜紀子『穴』。女性作家のホラーが好きなので、とりあえず新人が出て来たら買う事にしている。今作は2001年に四ッ谷ラウンドで賞を取った作品の文庫落ち。新人のデビュー作というのは、とかく粗が多く、選者が買ったであろう「粋の良さ」を差し引いても読むのが辛いものが多い。だが、今作は一読仰天、ぐいぐいと引きずり込まれるような濃密さ、こちらに現実と異界の狭間をポンと飛び越えさせてしまうような軽妙さ、ラストに向けてむらなく張り巡らされた伏線、オーソドックスながらストーリーテリングのツボを押さえた展開、めちゃ面白かった。いったい何者?と思って調べてみたが、他の著作は96年に一冊あったきりで、他には一切なし! もったいねえ〜もっと読みてえ〜。どういう人か知りませんが、ホラー文庫進出をきっかけに、次作を書く事希望。

 いったい何が起きているんだろう。ノベルス書き下ろしで陰陽師もの、倉阪鬼一郎『大鬼神』。正直読む前は、「また慣れないジャンルに無理に手を出してるな、この人は。どうせ落ちなく、いつものクラサカ小説になってるんだろう」と一連のノベルス・文庫の、ミステリ・SF系統の作品群を想起しながら考えていたのである。果たして主人公は売れない作家、キーワードは相撲……。作中で間もなく横綱になろうとしているのは、大神亀なる田舎出身の関取。傑作『田舎の事件』所収の『亀旗山無敵』を思い起こさせるしこ名と設定。はっきり言って、やってる事はいつものクラサカ小説である。だが、読んでいて戸惑いを覚える。何かが違う。設定が浮いていないのだ。いかにミステリのジャンルの中に落とし込もうと、クラサカ的発想、クラサカ的表現、クラサカの愛好するものは、それとは水と油でしかなかったのに、今作は違う。日本の片隅のど田舎に、邪悪な亀が封印されていて、ただ一人国防を担う陰陽師と、売れない作家が立ち向かう……。毎度の荒唐無稽な発想が、なぜか今作に限ってはジャンルに溶け込み、上質の娯楽作品の趣さえ醸し出している。

 一方の主役は陰陽師。たった一人で日本全土の国防を担う男。この設定は、当初疑問であった。クラサカ作品では「壊してなんぼ」な展開が多い。世界は破壊。主人公は破壊。それがこの主人公は積極的に日本を守ろうとし、全力を傾ける。崩壊する主人公の心情を描く事に力点を置いて来たはずの筆者に、いかなる心境の変化があったのだろうか。一瞬、電脳世界の反逆者であったはずの主人公が、一転して体制を守ろうとする映画『マトリックス』を思い出した。だが、今作の主人公が守ろうとしているのは、日本と言う国家や体制ではないだろう。陰陽道に連なる霊的な意味でのくに、国土、あるいは作家の平凡な日常……そういったものだろうか。作中、主人公の作家はこう叫ぶ。「こんなものが受け取れるか、バカ!」 クラサカは相変わらずクラサカだ。だが、会社を辞めて以来、実は彼にも守りたいものが出来てしまったのかもしれない。シリーズ化を希望する。

8月の読了本

56『夜のない窓』          連城三紀彦
57『瑠璃の海』           小池真理子
58『首交換殺人』          和田はつ子
59『末枯れの花守り』        菅浩江
60『キマイラの新しい城』      殊能将之
61『物魂』             桐生祐狩
62『綺譚集』            津原泰水
63『42.195』         倉阪鬼一郎
64『青い鳥』(シナリオ)      野沢尚
65『桃色珊瑚』           図子慧

 またまたお耽美大長編、小池真理子『瑠璃の海』。しかし今回は主人公が惚れる男が、ダメさ加減も男前さ加減もどうも中途半端。これだったら友達の男でいいじゃん……と思ってしまった。もっとねえ、小池真理子の書く男ってのは、ある意味、女のことなんか放っといて、やりたいようにやってしまうぶっ飛んだとこがないとダメなんですよ。ある面では献身の塊なのに、ある面では誰にも左右されない人間。身勝手で優しい、悪魔のように美しい男。今作のような形のラストは、そう言った突き抜けたキャラを描いて来た今までの作品から考えると、多少、俗な印象を受ける。

 ひさびさ新刊、殊能将之『キマイラの新しい城』『黒い仏』の系譜に連なる、ちょいオカルトな要素も合わせ持った佳品。語り口の軽妙さが面白いが、そろそろ『ハサミ男』のような乾いた価値観の横溢した小説も読みたいものである。全編に共通した「アンチ名探偵」は充分に乾いているが……。

 『夏の滴』『剣の門』とあまり評価していなかったが、やや分量の減った『物魂』はヒット、桐生祐狩。あまり本筋とは関係ないが、目からウロコが落ちるような台詞もあり感動。著者得意のグロネタが、やや場違いな印象と共に恐るべきグロテスクさを吐き散らかし、ぞっとするものを覚えさせる。

 またまた倉阪の新境地? 『42.195』。オチはクラサカ小説になっていたが、冗長に間違った推理が展開される部分をのぞけば、マラソンをメインに据えた展開は臨場感があって良い。

 追悼、と称して買って来た『青い鳥』のシナリオ本。ドラマの方の第一話を見た時は、あまりにかったるい内容だったのでがくーんときたのだが、シナリオでぽっぽこと読むと、実にいい話である。キャラクターも共感出来るし、ビジュアルも容易に想像できる。夏川結衣はやっぱり演技が下手だった……。山田麻衣子はこれ以上の当たり役はとうとう得られなかった……。演出にも問題があったのかも知れないが、二時間にまとめた総集編でちょうど良い作品であった。だがトヨエツ先生、駅でプッツンする、のシーンは、俺の中で永遠に記憶に残るであろう。

9月の読了本

66『ボディ・アンド・ソウル』    古川日出男
67『殺しの迷路』          V・マクダーミド
68『ネフィリム』          小林泰三
69『邪悪な花鳥風月』        岩井志麻子
70『<私>の愛国心』        香山リカ
71『ジェシカが駆け抜けた七年間について』
                   歌野晶午
72『虚無のオペラ』         小池真理子
73『邪悪の貌』上          ウィリアム・ディール
74『邪悪の貌』下          ウィリアム・ディール
75『小説探偵GEDO』       桐生祐狩

 うーん、どうも今月は期待外れが続いたなあ。『ボディ・アンド・ソウル』、さして面白くなかったが、作中で語られた『次回作』は、どれもえげつなく楽しみ。つーか、書くんだろうか。『サウンドトラック』同様、乗り切れずに読んでたのに、最後にサムゴーが出て来てミドルキックを炸裂させ、俺はレバーを蹴られて悶絶寸前。つ、つええ……。どこか、僕のツボを外さない作家なのです。

 いったい何年ぶりの続編なんだ、マクダーミドの『殺しの……』シリーズ(原題は全然違うんだけど)。一作目、二作目と完全にインポテンツだった主人公トニー・ヒルさんは早々と第一線を退き、バイアグラに頼ってキャロルとは別の女とつき合っているのだが……。とにかくこの人のダメさ加減が最初から爆裂。思わず「すいません、身勝手で」とオレが謝ってしまったではないか! 今回も二人には安息は訪れず、目を覆わんばかりの受難が降りかかる……! これだけなら珍しくないが、恐ろしいのは、主人公二人はどんなひどい目にあっても立ち直る事を要求され、まだまだ続編で頑張らねばならんところだろうか……。この作者は間違いなく変態である。

 『ジェシカが駆け抜けた七年間について』、いやあ、つまんねえもん書いてんじゃねえよ!と思いましたが、それでもミステリとしての洗練は『42.195』より遥かに上なのが痛いねえ。無駄に感動的なラストがもったいない。ラストと言えば毎月のおなじみ小池さん『虚無のオペラ』。ラストを読み終わって、本棚に直して三分後に号泣してしまった。珍しいパターンである(何が)。

 『小説探偵GEDO』、作者お得意のグロ描写が、単なるサービスに終わらず一応物語とリンクした感じに仕上がっており、なかなか良い感じ。いくつもの小説の中を巡る展開は、もっと上手い作家なら作中作の一つも挿入してのけただろうが、主人公のキャラのハードボイルドタッチを重視してか、そういう手法は取らず。しかし明野照葉『赤道』を読んだ時も思ったが、女性の書くうらぶれたハードボイルド野郎は、やってることは大して変わらんのに、どうしてこんなに上品なのだろうか。

10月の読了本

76『眠れない夜のための短編集』    藤木稟
77『暗黒館の殺人』上         綾辻行人
78『暗黒館の殺人』下         綾辻行人
79『203号室』           加門七海
80『螢』               麻耶雄嵩
81『呪文字』             倉阪鬼一郎
82『記憶の果て』           浦賀和宏
83『魔術師』             J・ディーヴァー

 なんだ、普通に読めるじゃん。『眠れない夜のための短編集』、読む前はかなり不安だったが、ほどほどに楽しめた。一時のどうしようもないクオリティの低下からは完全に回復した模様。鬱病が治るとこうも違うのか……というか、鬱病を完全にネタにしているところが笑える。

 他の作品に関しては「行動記録」を参照のこと。

11月の読了本

84『陰摩羅鬼の瑕』          京極夏彦
85『gift』            古川日出男
86『海鳴』              明野照葉
87『桜姫』              近藤史恵
88『オールド・ボーイ』        大石圭
89『夜陰譚』             菅浩江
90『銀河英雄伝説1 黎明篇』     田中芳樹
91『銀河英雄伝説2 野望篇』     田中芳樹
92『6ステイン』           福井晴敏
93『わたくしだから改』        大槻ケンヂ
94『妖虫の棲む谷』          J・ソール
95『銀河英雄伝説3 雌伏篇』     田中芳樹
96『鉄の花を挿す者』         森雅裕

 「行動記録」を参照。

12月の読了本

97『銀河英雄伝説4 策謀篇』     田中芳樹
98『銀河英雄伝説5 風雲篇』     田中芳樹
99『どすこい。』           京極夏彦
100『自由戀愛』           岩井志麻子
101『ユートピア』          リンカーン・チャイルド
102『プリンセス奪還』        牧野修
103『悪いうさぎ』          若竹七海

 「行動記録」を参照。