平等院鳳凰堂のある京都府の宇治は、気候、風土に恵まれた宇治茶の産地としても有名です。繊細でやさしいお茶の香りを求めて新茶の季節に宇治に出掛けました。

日本アロマテラピー協会の協会誌「Japan Aromatherapy」に、かおり風景100選「宇治平等院表参道茶のかおり」のレポートを寄稿させていただきました。
このページには、
オリジナルの画像とリンクを添えて、そのレポートを再掲させていただきます。



5月は新茶の季節です。そこで新茶の香りと甘みを楽しもうと、関西のお茶の名所として有名な京都の宇治に行くことにしました。

宇治には10円玉の図案で親しまれている鳳凰堂のある世界遺産の「平等院」をはじめとして、源氏物語の最後を飾る「宇治十帖」の舞台となった宇治川のほとりにいろいろな社寺や史跡があり、特に女性観光客に人気があります。

宇治橋の西詰から平等院の入口までの石畳の「宇治平等院表参道」には宇治茶の老舗が軒を並べ、それぞれのお店でとても上手に淹れた新茶を試飲することができます。また、蕎麦屋さんでは茶そば、喫茶店では茶団子がお勧めのメニューです。抹茶ソフトクリームを手に散策する人にもたくさんすれ違いました。



宇治平等院表参道のお茶のお店
(三星園ではありません)


参道に立ち並ぶお店の中でも、創業500年の最老舗「三星園上林三入(みつぼしえんかんばやしさんにゅう)」を訪ねました。こちらのお店の商標は三星紋ですが、これが地図記号の茶畑の由来にもなっているという、天正年間創業の将軍家御用御茶師の伝統あるお店です。1階はお茶の販売店と喫茶室です。こちらのお茶は小売店やデパートには卸していないので、ここでしか手に入れることができません。2階の「三休庵宇治茶資料室」には、千利休の書状や茶道具などのお茶に関する資料が無料公開されています。そして3階では、自分でお茶を石臼で挽き、できたてのお抹茶をいただくことができます。さっそく体験してみることにしました。

石臼の上の小さな穴に碾茶(てんちゃ)と呼ばれるお茶を少し入れ、時計と逆周りに1秒間に1回のペースでゆっくりと挽いていきます。挽きたてのお抹茶の色は早春の若葉のようでうっとりとします。碾茶は抹茶の原料として生産され、碾茶用の茶葉は玉露用の茶葉と同じく、一番茶の茶葉を摘む予定日の2週間〜3週間前から茶樹の上にスノコやムシロなどを張り、太陽光をさえぎって育てます。こうすることによって、緑色はより濃く鮮やかに、旨味が増えて、渋味はマイルドに変化します。日光を遮断してつくられるため、テアニンというアミノ酸、カフェインや葉緑素が豊富です。また、茶葉を丸ごと飲むので、普通のお茶では得ることのできないベータカロチンやビタミンE、食物繊維など多くの成分が摂取できるそうです。


 
石臼のお茶碗が伏せてあるところから碾茶を入れ、
ゆっくりと挽いてお抹茶をつくります。


お隣のお茶室に移り、点て方も教えていただきながら、先ほど自分で挽いたお抹茶をいただきます。クリーミィで香りもとてもやさしいのです。茶葉のクロロフィルは光をさえぎることにより『覆い香』と呼ばれる独特の香りがするようになりますが、この青くさい生海苔のような香りがお抹茶の香りの特徴です。繊細でやさしいお茶の香りに思わず緊張感が解け、肩から力が抜けていきます。

「お茶を気楽に日常的に飲んでいただきたい。それは伝統のある店だからこそ提案できることなんです。」と当主の21代目上林三入さんはおっしゃいます。「お抹茶は一度点て方を覚えるととても簡単です。また、お抹茶は高いとよくいわれますが1回で使う量が少量なので、高価なお抹茶でも1杯約250円くらい。ペットボトルのお茶1本分よりちょっと高いぐらいです。」「実は、100年ほど前は1,300haもあった宇治の茶畑は、現在では70ha弱に激減し、東京ディズニーシーよりも小さな面積になってしまいました。このままだと宇治のお茶はブランドだけになってしまいます。私は老若男女、特に次世代を継いでいく子どもたちにお茶のおいしさと気軽さを知っていただきたくて、利益は度外視して資料室や体験コーナーを設けました。」とのこと。茶道とは別に、気楽に自宅で日本茶を楽しんでもらいたいという熱い気持ちが伝わってきました。



三星園上林三入3階お茶室の茶道具。
このお茶室で自分で挽いたお抹茶をいただきます。


 
三星園上林三入2階の「三休庵宇治茶資料室」には、
千利休の書状などがあります。


どうやら私はお抹茶は敷居が高いものと思い込んでいたようです。上質なお抹茶さえ手に入れれば、後は抹茶椀と茶杓(ちゃしゃく)と茶筌(ちゃせん)があれば、自宅のリビングでゆったりとお抹茶をいただくことができます。そんなときにはエッセンシャルオイルやお香を焚いてもよいし、好きな音楽を聴きながらでもよいですね。もっと自由な気持ちでお抹茶とつき合えたらどんなに暮らしが潤うか、そんなことを思いつつ宇治を後にしました。



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