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  ロックとその時代


 この回はロックを中心とした若者文化の移り変わりをその時代背景とともに見ていきました。特に現代文化の転換点となった60年代アメリカの動きを中心にすえて、その前後で時代の何がかわったのかをその当時の音楽をききながら、4回にわたって解説しました。
 なお、4回にわたる講義をもとに加筆した授業内容はかなりの分量があるので、こちらに分けてあります。

→ ロックとその時代 講義ノート

【生徒の感想】

●ひとりの人間が、ただ自分の言いたいことを歌っているだけなのに、それが人の心を動かし、社会までも動かすというのは驚きです。音楽に限らず、「人を動かす」ことはすごいことだと思いました。
 授業では特にパンクの話が印象に残りました。自分にはパンクさが欠けていたかも知れない。「ロックってもっとシンプルにいいたいことをストレートに言える自由なものじゃないのか」という問いかけは、他のすべてのことに当てはまることだと思う。私は絵を描いているけど、いつもパンクみたいにはじけていて、自分の好きなものをストレートに描けたらすてきだと思う。そしてそれが人に認められたら本当にすてきだ。そこが一番難しいところだけど。
 パンクでいこう!パンク!パンク!パンク!って、でもあんまり張り切りすぎてパンクしたりして。
 いま、日本で流行っている曲はなんか迫力がないっていうか、本当に自分の言いたいことを歌っているのかなあって感じる。「LOVE」とか「愛してる」とかやたらとラブソングが多いけど、そんなに愛があふれてるのかなって思う。まあ、べつに嫌じゃないけど、一丁上がりって感じで同じような歌を作ってるんだとしたら、バカにされてる気がする。
 ときどき、今日一日あったことにてきとうに曲をつけて歌ってみることがある。大声で歌うとなんか気持ちがすっきりする。人にみられると恥ずかしいけど。こんど先生もやってみてください。くさいラブソングをカラオケで歌うより楽しいよ。

●ロックの話を聞いてて思ったことは、ロックは音楽じゃないの?ってこと。ロックをやってる人は音楽をやりたいんじゃなくて、それを通してもっと別のことを表現したいみたいだ。音楽は「包装紙」というか「かぶりもの」みたいなもので、本当に表現したいものはもっと別なところにあるっていう気がした。でも、ロックを時代や社会とむすびつけて見ちゃうとそう感じるけど、本当にロックをやっている人たちは音楽はただの手段で、目的じゃないって思っているんだろうか。時代や社会を変えようとして歌ってるんじゃなくて、歌いたいから歌っているだけじゃないんだろうか。それが結果的にまわりの人に影響を与えたっていうだけで。
 私には「ロック」と「音楽」がどう結びついているのかっていうのが、それがわからない。私、バカですもん。

●80年代後半から90年代のハードロックとへヴィメタルを特集して欲しかった。僕の得意分野だからだ。
 先生はロックを陽気でシンプルじゃなければダメみたいなことを言っていたが、時代とともにロックがシリアスな方へかわってきたというのは人々がそういうのを求めていたということだ。人の心に訴えるものがあれば、シンプルだろうがシリアスだろうが関係ない。そういう魂の叫びがあるものこそロックだ。
 僕はロックはエルビスからはじまり、レッドツェッペリンやディープパープルに継承されたと思っているので、ビートルズはロックだと思っていない。だから、今回紹介された曲で、パンク以外のほとんどはロックではなく、ポップスやフォークソングだと思う。僕なりにロックを解釈すると、「人の観念をうち破る大きな波」だ。大きな衝撃をまわりに与えて、人々の心を揺さぶるもの、それがロックだ。ジャニス・ジョプリンやツェッペリンにはそういう魂の叫びがある。
 いまのロックシーンは新しい方向を求めて混沌としている。日本でヴィジュアル系のバンドが流行っているのはそういう行き詰まりの象徴だ。最後に一言、BONJOVIは甘口ロックじゃないぞ。ハードロックだ。

●僕は何が正しいとかはわからないけど、基本的にアメリカの60年代の歌は嫌いだ。ドアーズみたいな内面的なものが好き。あと、パンクについては僕自身バンドでやっているし、言いたいことがある。
 パンクは精神の爆発というか、自分はこうありたいという強い願望、現実や世の中へのいらだち、そういう衝動に突き動かされて歌うものだと思う。自分の本当の姿をさらけ出して、それを共有できることがパンクの良さだ。パンクのブームは一時的なもので終わってしまったと授業で言っていたけど、パンクが音楽シーンに与えた影響は大きい。形を変えて、メディックコアやデスコア等に引き継がれている。
 こういう音楽の好みは一人一人違うが、今回のような授業はその背景がわかったという点で意義のあるものだったと思う。やって良かったよ。

●4回の授業を通して、ロックの移り変わりがよくわかった。ふだん洋楽はあまり聴かないので、基本的にガイジンがギターをうならせて叫んでいるくらいのイメージしかなかったが、そういう曲の背景に何があったのかを知って、彼らの音楽に共感できるようになった。ふだん聞いている日本のミュージシャンが「〜に影響を受けて」とか「60年代の〜ふうの要素を取り入れて」というコメントをしているが、そういう彼らの原点が今回紹介された音楽なのかと思った。
 最近の音楽はすっきりとした音で、きれいめの曲が多いけれど、当時の音楽はもっとむき出しというか、社会からはみ出したダークな印象を受けた。世の中の枠に収まりきれなくて、そういう自分の気持ちを音楽にぶつけているという感じで、切実な感じがした。あと、パンクはおもしろかった、ハマってしまいそうだ。
 最後に一言。今度は日本のやつもやって欲しい。

●アメリカでは、60年代に今とほとんど同じスタイルの音楽があったということにおどろいた。ドラムとギターを中心にしたポップスのスタイルは今では当たり前だけど、当時の日本では考えられなかったんじゃないかと思う。こういうのを見ると、今の日本の音楽はほとんどアメリカで作られたスタイルなんだなあと思った。

●やる前は興味もなく、知っているのは父の好きな「びーとるず」くらい。だが、しかーし!聴いてみるとおもしろかった。解釈はなかなか良かったというか、とても上手だった。当時の社会がどういう状況で、音楽がそれにどう関わったのかもおもしろかった。今まで、ロックというと「うるさくて耳が痛い」くらいに思っていたのが、ミュージシャンたちのおかれていた状況や考え方がわかったことで、音楽も楽しく聴けた。訳を読みながら歌詞を聴くと、けっこういいこと言ってるなあと感じたりすることもあった。
 ところで、歌詞の訳を途中からやらなくなってしまったのはどうして?息切れ?
 あと、音だけじゃなくて、歌っている人の映像ももっとじっくり見たかったところ。そこが唯一、残念。

●なんでヴァンヘイレンが出てこないんだ。ボンジョビもなんでかけないんだー。納得いかないぞ。
 音楽は自由だ!スーパーギタリストの俺が言ってんだから間違いないぞ。
 今度は日本のロックもやろう。

●ロックはオレの夢だ。でも、オレ、ロックより軍歌のほうが好きだな。

●ロックは最も身近な音楽だ。多くの人に聴かれ、歌われ、影響を与える。だからその分、時代の影響を受けやすいし、影響も与えてきた。確かに、そういう音楽だと思った。
 ロックに限らず、ひとつの文化現象は必ずいつかは飽きられ、人々は新しい刺激を求めて、廃れていく。そして新しいものが生まれていく。ロックが廃れつつあるというのはその通りだと思う。それに代わって何か新しいものが生まれてくるはずだ。それも楽しみな気がする。
 僕にとってのロックは80年代の音楽だ。ロックというと僕はU2を思い浮かべる。彼らの音楽は政治的なメッセージ色が強いにもかかわらず、ものすごく売れている。60年代のミュージシャンとは比べものにならないほど大きな市場を相手にしている。では彼らは60年代のミュージシャンのような影響力を持っているかというと、そうではない。そこが60年代と80年代、90年代の違いではないかと思う。
 60年代に社会状況はものすごいスピードで変化した。その変化とスピードの象徴がロックだと思う。人間はその速度に耐えられないのに、速度を欲する。アメリカの60年代はそんなスピード狂の時代ではないかという気がする。授業の中で、近年、60年代の文化現象をすべて否定しようとする動きがあるという話があったが、けっして60年代は無駄なんかではないと僕は思っている。社会は変わる必要があったし、今だってそうだ。だから、60年代の若者たちが種をまいた変化の芽は、ロックや漫画とともに育ってきたのだと思う。
 授業とても良かったです。

●正直なところ、60年代の若者たちが「ラブ・アンド・ピース」のメッセージで社会を変えられると本気で思っていたことにおどろきました。花を配ってドラッグに溺れ、「ラブ」と言っていれば社会は変えられると信じていたという感覚が僕には理解できませんでした。ただ、当時の熱狂みたいなものは伝わってきました。何か新しい世の中が来るという期待が、そういう熱狂や根拠のない思いこみをもたらしたんだと思います。もしかすると、ロックもそういう期待を膨らませるのに一役買っていたのではないかと思いました。
 イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」が印象に残りました。甘いメロディーと不気味な歌詞、いまだにあのメロディーがが頭の中をめぐっています。歌詞の甘く恐ろしい物語も印象に残りました。確かにあの歌は60年代の幻想から抜け出せない人たちの姿だと思いました。そういう意味でも時代の終わりを象徴する曲だと感じました。

●私はロックについて全然知らなかった。自分のなかでイメージは持っていたけど、今回の授業でそのイメージは全部崩れた。こんなにも時代の影響を受けて、ひとつの時代を象徴しているとは思ってもいなかった。
 Hotel California はテレビのドラマとかできいたことがあったけど、歌詞の意味などまったく考えたこともなかった。それがあんなに怖い歌詞で、しかも時代の状況に深く関わっていると知って、驚いたし怖くなった。
 学校では平安時代や江戸時代の歴史や文化は教わるのに、つい最近、何があったのかまったくやらない。身近だと思っていたことが何もわかっていなかったことに気づかされた。そういう意味で勉強になった。

●1950年代の陽気で単純なロックが私も好きだ。チャック・ベリーもエルビスも良かった。
 60年代のビートルズを聴いて、「愛こそすべて」なんていってられる時代だったんだなと思った。愛が時代を変える、多くの人が本気でそう思っていたからこそ、ああいう歌ができたんだと思う。人種差別もベトナム戦争もきちんと目を向けなければいけない問題だ。そして変えていこうという気持ちが大切だと思った。
 70年代には多くのミュージシャンがドラッグで死んでいったことに驚いた。その数の多さにも驚いた。あと、80年代のテクノは退屈だった。何でこれが流行ったのか私にはわからない。最後にかかったトーキングヘッズはけっこう好きだ。

●私は音楽を聴くことも、踊ることも、演奏することも大好きだ。でも、好きなだけでロックグループにくわしいわけではない。たまたまテレビやラジオでかかった曲を気に入ったら、CDを買って聴くという人だった。だから、今回の授業でたくさんの良い曲を知ってうれしかった。ちょっと普通の授業ではできない経験をしたという感じで得した気分だ。
 Chuck Berryの"Johnny B. Goode"は映画の"Back to the future"で主人公がギターを弾きながら歌っていた。なんかごちゃごちゃしてなくて自然に体が動いちゃうって感じの曲で、大好き。
 あと、授業で出てきたバンドでよく聴くのは、The BeatlesとEagles。記録フィルムに出てきたビートルズファンの女の子たちの熱狂はすごかったけど、やっぱり、ビートルズもアイドル時代があったのかという感じだった。
 今回はじめて知って気に入ったのは、The DoorsとLed Zeppelin。
 ちなみに私の両親はというと……。
 父はボブ・ディランなどのフォークロック派。PPMやジョーン・バエズなんかが好きなようだ。
 母も同じくフォーク派だったが、40歳を過ぎてからロックにはまったようで、今一番の楽しみは来年早々に来日するローリングストーンズのライブに行くことだと言っている。母によると、「ロックは生き方だ、考え方だ、人を愛する気持ちだ」ということらしい。母はミュージシャンたちの人間性に惹かれるようで、長い時間をかけて彼らを理解してから曲を好きになることが多いそうだ。逆に父は感性の人なので、体にあったリズムやメロディーで「これ!」と決めるらしい。
 私はどちらかというと父より母に似ていることが判明。ちぇっ。
 母や父のように60年代・70年代に若者だったロック世代は、いま、社会の荒波のなかで懸命に生きていて、ロックを楽しむ余裕もなかなかないみたいだ。でも、「むかしロックきいてたなあ」とか言うのではなく、そういう今こそ音楽を聴いて心を和ませてほしいと思います。特に父にそういってあげたいと思う。
 私は3人姉妹の長女です。妹二人、特に下の妹は、Spice Girlsの曲が大好きで、CDをかけてめちゃめちゃに踊ります。ノリが良くておもしろいです。きっと見たらびっくりすると思いますよ。

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