□□ OCEAN 17石 手巻き □□
□2009/4/23


 今回は、OCEANという名前の時計です。SWISSと書いてあるので、スイス製です。それ以上のことは、ネットで調べてもわかりませんでした。やはりジャンクです。文字盤も周辺が青くなっているので、サビが出た形跡があります。おそらく、一度、水没や汗などでひどい状態になって、その後、誰かがメンテナンスして、そらに、それから数年、あるは数十年経っている、というような印象の時計でした。分解作業をやったのは、10日くらい前です。


これが入手時の写真。このあとメンテナンスして、文字盤もキレイもそれなりに手を入れましたが、それほど変化はしてません。入手した時点では、一応動いていました。遅れ気味ですが、機械の調子は悪くないようです。


これが機械。いつもと同じように見えるかも知れませんが、何個か分解をやった私としては、これまでとは違う機械という印象。上からの写真ではよくわかりませんが、真ん中の歯車を押さえる板(ルビーが4つついているところ)が、一段高くなっています。これまでの時計の機械は、上面は水平で凹凸はありません(自動巻きを除き)。


テンプとアンクルをはずし、中央の歯車の押さえ板を外してみると、なんと、歯車の下に、さらにもう1枚押さえ板があります。2段構造になっているのです。こんな機械は初めてです。しかも、この板の下にも歯車があるので、これまでの機械よりも2〜3つ歯車が多いんです。


まずは、見えている歯車を、恐る恐る引っ張ってみると簡単に抜けました。上の写真は歯車を2つ抜いたところです。下から、中間の板を突き抜けている小さめの歯車もあります。


その小さめの歯車はなんだろうと、横から見てみると、これまた初めて見る形の歯車です。小さい歯車が上下について、上の歯車と下の歯車を連絡しているようです。

ここまで見て、なんとなくわかりました。

文字情報としては、直接中三針とか間接中三針という言葉を聞いたことがありました。1960年以降の時計は、ほぼ、直接中三針構造の時計です。こーいってもわかりづらいですね。時針、分針、秒針が中央の軸で回る時計が、中三針式です。で、そのなかで、秒針を直接ガンギが動かしているのが、このページでこれまで取り上げていた時計たち。つまり、直接中三針式だったわけです。そして、今回、出会った時計が、おそらく間接中三針式時計です(例によって早合点かも知れませんが…)。

というのも、テンプで制御された動きがガンギ車に伝わり、それが、直接秒針の歯車を回すのではなく、間に3つ(2つかなぁ)の歯車を連絡して、秒針の歯車を回しています。間接的ですよね。

どうしてこういう面倒なことになるかというと、それには理由があります。

昔は、スモールセコンドといって、6時位置のあたりに秒だけを示す小さな針がついている時計が基本だったのです。

こんな時計です。→

そこから、中央に秒針を持ってくる発想が生まれ、元の構造から無理やり動力を持ってきたのが間接中三針。そのうち、基本構造が進化して、直接中三針式に替わったというわけです、たぶん。

ちょっと感動。



2枚目の押さえ板もはずしたところです。歯車の数でいえば、この程度になって、やっとこれまで分解した時計と同じになります。配置は、若干違います。



というようなわけで、これまでの時計とは違うため苦労しました。特に、組み立て時に下構造と上構造を正しく噛み合わせるあたりに時間をとられました。間接中三針式のほうが、歯車が多くなるので時間が合いづらいという話は、どこかのサイトで読んだことがありましたが、今のところ、ちゃんと時間もあっています。ただ、油ぎれなどは起こしやすいのかも知れません。

話は少し飛びますが、エニカの分解をしている時に、裏蓋に刻み込まれたメンテナンス履歴にビックリしました。35年、36年、37年と3年続けて、毎年やっているメンテナンス記録が刻み込まれていました。分解していても想像していたのですが、インカブロックと呼ばれる耐震装置が施される前の時計は、保油機能が低い印象があります。最近の時計は、3年〜5年は油ぎれの心配をすることはないようですが、昔の時計は、2年くらいしか持たなかったのではないか? と想像していましたが、やはり、そうなのかも知れません。エニカの方は、3年間続けてメンテして、買い替えたか、メンテ代を払うが馬鹿らしくなったかのどっちかなのでしょう。その頃も耐震機能付き時計発売されていたはずですし、クォーツが登場したりしたのも、その頃か、ちょっとあとくらいなので、そちらに乗り換えたのかも知れません。

※耐震と保油は直接関係ないのですが、耐震機能がつくと、その構造に余裕が生まれるためか、ルビーの根元がカップ状の軸受けとなり、そのカップに油を貯められる構造になっています。耐震機能がない軸受けは、ルビーに小さなが穴が空いているだけです。油を差す時にも、そこに、ホントにちょびっとつける程度なんです。

ま、とにかく組み立ては完成。見た目はそれほど変わりませんが、細部はキレイになっています。


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