紅葉の背中に圧し掛かった村雨は、紅葉の小さくてやわらかな耳朶を噛みながら、器用に
ベルトを引き抜いた。
「……耳朶は許しちゃいないが?」
「気持ちはわかるぜ。やわらかくて、かーいい耳朶だもんな」
どこもかしこも感じやすい紅葉の身体の中、好きな場所は数え切れないほどにあるのだが、
通常時でも触れていて違和感のない耳朶は、これもまた好きな場所。
第三者が居る時の、ここへの接触は、二人の仲を見せ付けるのにちょうど良い。
今、村雨がやっているように。
牽制にも使える。
「っつ!」
触れられて零れた声だと、普通は思うかもしれないが、それは違う。
紅葉は、村雨の『かーいい』に反応したのだ。
慣れない甘ったるい言葉は、何時だって紅葉を困惑させ、本人預かり知らぬ所で興奮もさせ
る。
言葉攻めが案外と有効だったりした。
村雨は簡単に紅葉の性癖を見抜いたのだろう。
相変わらず、良い目をしている。
このまま、どっぷり紅葉に溺れさせて。
挿入を許さない状態で焦らしまくって、戻れない所まで来た絶望のまま殺すのもいいな。
恐らく紅葉は、身体を暴く村雨に心を許せなくなるだろうから。
目の前にある、蜜をたっぷりと含んだ猛毒に犯されて、どん底に落ちた時。
紅葉の信頼をも失ったと気がついた、その瞬間の絶望は、堪らなく俺好みだ。
「止めて下さいっつ!」
手早くズボンと一緒に下着も脱がされて、悲鳴を上げる紅葉の、唇を塞ぐ。
「んんっつ!むぅっつ!」
握り締められた手首の拘束は、暗殺者の腕前で以ってきつい。
離せと訴えている。
が、俺は離さなかった。
キスをして、舌を絡めていれば、村雨が弄り倒すだろう反応を、目で、舌で感じられると
思ったからだ。
「指と、口ならいいんだよな?」
「やっつ」
予想を裏切って、村雨は紅葉の尻肉を揉み始めた。
指の跡が残るんじゃないかと思う強さで、実にリズミカルに。
ぎゅっぎゅっつという、擬音まで聞こえてきそうだ。
筋肉で引き締まってはいるが、何とも言えない弾力とやわらかさがある紅葉の尻を、
俺なら噛んで、思う様歯型をつけまくった後で、じっくりと嘗め回すのがいいのだけれど。
ま。
村雨には奴の、やり方があるのだろう。
こいつは天性の賭博師で、色事にも滅法強い。
女を複数同時に転がしても刺されないのは、その天運故とすら言われている。
「んっつ!くっつ」
もしかしてマッサージにも似た風合いなのだろうか。
快楽とは違う心地良さを堪える吐息が、キスの合間に紅葉の口から漏れた。
「良い尻だろ?」
「そうさね。さすが暗殺者って感じだな。この筋肉の弾力は手に楽しいぜ」
言いながら、つるりと尻を撫ぜ上げる。
紅葉の舌の根元がびくびくと引き攣った。
キスしていなければ解らない、紅葉の興奮具合には、満足だが。
その快楽を村雨が与えているという一点は不満だ。
「ナニには、もっと楽しいぜ。すんげぇ締め付けなんだ」
「あーな。アナルSEXの醍醐味は、膣じゃ得られない締め付けだし」
「経験済みかよ!」
「相手は女だけどな」
強く揉み上げられた紅葉の尻は、より一層鮮やかな色合いになった。
ここまで血の巡りが良くなって来ると、マッサージの意味でしたことだったとしても、紅葉の
身体は違う心地良さを見出し始める。
そろりと、一回だけ。
円を描くように蠢いた尻の動きを、村雨はさすがに見逃さない。
「つ! やっつ!」
指の腹で優しく優しく。
挿入なぞしようとはせず、その襞一枚一枚を確認するように撫ぜ上げている。
首を振って否定の言葉を紡ごうとする舌先を、きつく絡み上げながら、喉を摩った。
こく、と生唾が飲み込まれる音に興奮したのは、俺だけでもなかったらしい。
村雨は、俺に見せ付けるようにして己の指を舐め上げた。
たっぷりと唾液を絡めたそれが、紅葉の蕾の中に進入を果たした時の紅葉の反応を想像し
て、口の端を吊り上げる。
声が聞きたくて、キスから解放してやれば、途端に村雨を拒絶する言葉を吐いた。
「もぉ、いい加減に止めて下さい! 龍麻に煽られないで! 貴方ともあろう人がっつ。つ、
ひぅっつ!」
温柔にも、残忍にも見える面白い笑顔を浮かべながら村雨は、己の唾液塗れの中指を、
紅葉の蕾の中へと捻じ込んだ。
「やああああっつ!」
しかも、いきなり器用に前立腺の裏を擦り上げたらしい。
それをした時に紅葉が見せる、蕩けた表情が見て取れる。
「紅葉……すっげぇ。気持ち良さそう。村雨の指は、そんなにいいんだ?太くて、硬い?
紅葉のイイトコまで、ちゃんと届く?」
「言うまでもねぇよ。なぁ、紅葉」
唇を震わせた紅葉は、まだ衝撃から逃げられないのだろう。
言葉もない。
「先生が、うんと弄ってるみたいで、ここ。すっごくわかりやすくこりこりになってるぜ」
「へぇ? これって弄ると育つんだ」
「聞いた話だぜ。一応プロが言ってたけど。まー薬中毒の言う話だから信憑性は薄いがな。
紅葉? ここ、気持ちいいんだろ。なんだったら、すぐ。出しちまってもいいんだぞ」
「や! やぁっつ! だ、めっつ」
顔を伏せて耐えようとするので、顔を上げさせる。
濡れた瞳に堪らない情欲を覚えて、舐め上げる。
驚いて、締め付けたのだろう。
村雨が唸り声を上げた。
「無茶苦茶な締め付けだな……この状態でナニが入ってたら……たまんねぇだろうなぁ」
「挿入は許さないぜ? 入れる瞬間にナニを切り落としてやるよ」
「おうおう、怖いねぇ。ま、心配しなくても。俺。先生と違って無理強い好きじゃねぇし」
「は! 紅葉をレイプしている真っ最中にナニを言う!」
「……紅葉さん? これってレイプなんだ?」
咎めたにも関わらず、紅葉の耳朶を舐め上げながら、村雨が残酷な問いを投げかける。
「さぁ。どうだろうね。君がレイプと思えばそうだし。そうじゃないと思えば違うんだろう」
「ったく。こんな時まで人事かよ」