The Animals’ Christmas By Jimmy Webb  (1986)

邦題『アニマルズ・クリスマス』

日本盤:生産中止 (CBS / Sony 32DP 532 3200円)
US盤:The Art Garfunkel Websiteで、1999年12月6日再発売
(初出 Columbia Records、廃盤)
 

  1. The Annunciation
  2. The Creatures Of The Field
  3. Just A Simple Little Tune
  4. The Decree
  5. Incredible Phat
  6. The Friendly Beasts
  7. The Song Of The Camels
  8. Words From An Old Spanish Carol
  9. Carol Of The Birds
  10. The Frog
  11. Herod
  12. Wild Geese
  1. 受胎告知
  2. 野の動物達
  3. 小さな旋律
  4. 告示
  5. ぐずネコPHAT
  6. やさしき動物達
  7. らくだの果てしなき旅
  8. いにしえのスパニッシュ・キャロル
  9. キャロル・オブ・ザ・バーズ
  10. 悪戯ガエル
  11. ヘロデ王
  12. ワイルド・グース

ささめごと

アルバム The Animals' Christmas
ミュージシャン
コンサート
レコーディング
Heading Home For The Holidays
再発
アルバム The Animals' Christmas
Art が、Amy Grant (エイミー・グラント)、Jimmy Webb (ジミー・ウェッブ) と共に作り上げたクリスマス・アルバムで、曲は全て Jimmy の作曲です。このアルバムを「オリジナル・アルバム」と位置付けて良いものか、という疑問はありますが^^;(企画もの、にするべきでしょうか…)、Art が力をいれ、時間をかけて作った非常に大掛かりな、美しいアルバムです。キリスト降誕を、そこに居あわせた動物たちの目から語る、というコンセプトになっています。

プロデュースは、Art と Jimmy Webb、The Beatles のエンジニアとして有名な Geoff Emerick (ジェフ・エメリック)です。Geoff Emerick は、88年のアルバム Lefty もプロデュースしています。このアルバムはデジタル録音されました。

ことの始まりは、Jimmy が82年のクリスマス休暇に、ニューヨーク州オレンジ・カウンティ、タキシード・パークのセント・マークス教会での子どものコンサートのために書いた協奏曲の小品を Art が歌ったことでした。

Still Water の Fire セクションのインタビューより

『アニマルズ・クリスマス』は80年代の中盤をかけて作った。演奏して、その後、レコーディングした。4年かかって86年のクリスマスにやっと出したんだ。(中略)83年(原文ママ)に、友人のジミー・ウェッブが、製作中の曲を見せてくれた。ニューヨーク州タキシードの、彼が通ってる教会の子どもの聖歌隊と小さなオーケストラのためのカンタータだった。非営利的な試みだったから、特にひきつけられた―僕は音楽業界が、音楽をやりたいという気持ちを持つ人達を傷つけうる方法でプロにしようとする、という事実にシニカルになっていたから。で、タキシードでのジミーのリハーサルに付いて行ったら、『アニマルズ・クリスマス』はすごくよかった。彼に、僕も入れてくれって頼んだよ。翌年、彼は延長部分を書き上げていた。長さを2倍にして、僕にソロ・シンガー、語り手、そして大天使ガブリエルのパートを当てた。女性のパート―聖母マリアのパートも付け足していた。僕達は、その年の12月にニューヨークの聖ヨハネ大教会、そしてロンドンのフェスティヴァル・ホールでオーケストラ、子どもの聖歌隊、少年シンガー、少女シンガーと一緒に演奏した。ショーのライブ録音もしたんだけど、後から聞き返すと、ルーズすぎる気がしてね。だから次の年のクリスマスにスタジオでレコーディングすることにした。まず僕が85年にロンドンで始めて、ロンドン交響楽団と録音した。その年の冬にウィンブルドンの聖歌隊の音を入れた。春にはモンセラットでジェフ・エメリックと僕のボーカルをとった。次にエイミー・グラントのボーカルを収録するために、ナッシュビルに飛んで、そしてニューヨークに帰って少しパーカッションを多重録音した―ドラムにスティーヴ・ガッドとかもろもろね。86年のクリスマスまでには終了させた。ゴシック教会のようなアルバムだよ。とても大掛かりで。大昔に教皇の命で実現されたようなタイプのプロジェクトだった。
(原文はThe Art Garfunkel Website こちらのページ)
日本盤の鈴木道子さんのライナーによると、Jimmy は「こどものための小品にしておこうか、きちんとした長さのカンタータにしようか迷っていたけれど、主に Art の強い熱意に動かされて、このような形にした。」と83年のビルボード誌で語ったそうです。
ミュージシャン
Amy Grant は、1960年ジョージア州生まれ。テネシー州ナッシュビル在住です。15歳でセルフ・タイトルのデビューアルバムをレコーディング、翌年リリースしました。以来、Grammy For Best Gospel Female Performance など、5つのグラミー賞を獲得した売れっ子シンガーです。現代教会音楽だけでなく、ポップ・ロックシンガーとしても人気は高いです。

Carl Davis (カール・ディビス) 指揮のロンドン交響楽団、イギリスのキングス・カレッジ・スクール聖歌隊、ピアノの Jimmy Webb、ドラムに Steve Gadd (スティーヴ・ガッド) (81年のセントラル・パーク再結成コンサートのドラマーで、Lefty にも参加)と豪華な顔ぶれです。アコースティック・ギターとバンジョーに、今や Art ファンにはおなじみの Erik Weissberg (エリック・ワイズバーグ) が初めて顔を見せています。
エンジニアリングには Geoff Emerick、Roy Halee (ロイ・ハリー)、John Kelly (ジョン・ケリー)、そして、Art の以後のアルバムには全て参加している Stuart Breed (ステュアート・ブリード)がアシスタント・エンジニアとして参加しています。

コンサート
本来はコンサートの録音がリリースされるはずだった The Animals Christmas ですが、「コンサートがあまりの好評だったためと、持ち前の完璧主義のせいだろう、アートとジミーはレコード用にきちんとレコーディングしなおすことにしたのだった」(日本盤ライナーより抜粋)だそうです。

コンサートは、83年12月18日にニューヨークの聖ヨハネ大聖堂(St. John the Divine Cathedral)で2公演、21日にロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールで1公演、子ども達へのチャリティー・ショーとして行われました。この時、女性シンガーは Amy ではなく Jimmy Webb の妹、Susan Webb (スーザン・ウェッブ)でした。

ロンドンの公演の録音は、22日にArt、Jimmy、Roy によって北ロンドンのラウンドハウス・レコーディング・スタジオで編集され、25日にイギリスのラジオで放送されました。Artが Still Water の Poem 3( 試訳分析を参照)で聞いているのはこのテープだと思われます。

レコーディング
レコーディングの様子は、Still Water の Poem 46 (キングス・カレッジ・スクール聖歌隊とのセッション)、Poem 59 (Amy Grant とのナッシュビルでのセッション)、Poem 60, 62, 63, 64, 65(モンセラットでのボーカル録音)などで垣間見ることができます。
Headin' Home For The Holidays
86年12月21日に Amy Grant のクリスマス特別番組 Heading Home For The Holidays に Art とJimmy もゲスト出演し、The Animals' Christmas から2曲歌っています(口パクですが^^;)。Amy Grant's Old Fashioned Christmas のタイトルで、ビデオ化されていますので、詳しくはこちらを。

また、日本盤ライナーによると、"Carol of The Birds"はアニメ・ビデオ化の話が進んでいて、Art、Jimmy、Amy も出演する予定、とのことでしたが、この企画はどうやらお蔵入りになってしまったようですね。

再発
The Animals' Christmas は長らく、各国で廃盤の憂き目にあっていましたが、1999年の12月にArt自身が Jimmy Webb のマネージメントの助けも借りて、Sonyから版権を買い取り、The Arthur Garfunkel Trust というレーベルで再発させました。当初は、The Art Garfunkel Website を通してのみの販売でしたが、現在は各オンラインショップ等でも扱われています。ミュージシャン自身が版権を買いとって再発する、という画期的なこの企画、Art の思いいれの強さが伝わってきます。ファンとしてはサポートして行きたいですね^^。
Part T
1. The Annuciation(受胎告知)-Jimmy Webb
マリア(Amy)が大天使ガブリエル(Art)に受胎告知され、喜びに満ち溢れたガブリエルの歌とは対照的に、マリアの不安な気持ちが歌われます。
2. The Creatures Of The Field(野の動物達)-Jimmy Webb
ガブリエルの告知を家の外で聞いていた動物たちはマリアを心配し、フクロウがマリアをきづかう歌を歌う場面。
3. Just A Simple Little Tune(小さな旋律)-Jimmy Webb
心配したこおろぎがバイオリンを弾き、ナイチンゲールが優しい歌を奏で、野ひばりがナイチンゲールに加わり、ホタルが明かりを灯してダンスを踊ります。野ウサギとアライグマがダンスを踊り出し、大鹿は驚いてファゴットのように吠える、そんな一場面。
マリアは微笑んで、眠りにつきます。
Part U
4. The Decree(告示)-Jimmy Webb
ガブリエルは、(婚約者マリアがみごもった事を知り、婚約を破棄しようと考えていた)ヨセフの元へ行き、マリアを妻に娶れと告げます。そこにアウグストゥス帝の(人口調査の)お触れがでます。「それぞれが自分の(生まれた)街に行き税金を納めよ。」ヨセフとマリアもガリラヤから故郷のベツレヘムへ旅をして税を納めねばならなりません。ロバに乗ったマリアと傍らを歩くヨセフを、山に住むライオンが見守ります。ダビテの街(=ベツレヘム)に着くと、空には見なれぬ輝く星が彼らを導くように昇ります。
5. Incredible Phat(ぐずネコ PHAT)-Jimmy Webb
その年で一番寒い夜、パブ「象の耳」は14人の男たちでにぎわっていました。宿屋のネコ、ファットは皿につがれたビールをなめていました。そこにぼろをまとったヨセフが現れて、「部屋はないか」と尋ねる。宿屋の主人は笑ってヨセフを軽くあしらいます。涙をかくしつつマリアの元へ戻るヨセフを、ファットが追って言います。「元気を出しなさい、風雨をふせげる小屋が近くにあるから。」ネコは二人を宿屋のおかみさんが雄牛を飼っている納屋に案内し、「こんな寒い夜にはここが街で一番暖かい」と言います。
Part V
6. The Friendly Beasts(やさしき動物達)-Jimmy Webb/poem from The Animals' Christmas compiled by Anne Thaxter Eaton
イエス・キリストの誕生。納屋で産まれたキリストを、そばで見守ったロバ、牛、羊、鳩が、自分達が贈った物を誇らしげに挙げていきます。歌詞は Anne Thaxter Eaton 編纂の詩集 The Animals' Christmas より、12世紀のキャロル。
7. The Song Of The Camels(らくだの果てしなき旅)-Jimmy Webb/poem by Elizabeth Coatsworth
Elizabeth Coastworth (エリザベス・コーツワース) の詩に Jimmy が曲をつけたものです。(星に導かれてキリストの誕生を知った東方の三博士の乗った)らくだ達の歌。
8. Words From An Old Spanish Carol(いにしえのスパニッシュ・キャロル)-Jimmy Webb/poem from The Long Christmas by Ruth Sawyer
Ruth Sawyer(ルース・ソイヤー)の1941年の詩集The Long Christmasより。キリストの誕生を祝いにやってきた動物たちの名が挙げられていきます。
9. Carol Of The Birds(キャロル・オブ・ザ・バーズ)-Jimmy Webb/poem by Bas-Quercy, from The Animals'  Christmas complied by Anne Eaton
詩集The Animals' Christmas より、Bas-Quercy(バス・カーシー)のキリスト降誕の讃歌。祝福のためベルサレムにやってきた鳥たちの歌。
PartW
10. The Frog(悪戯ガエル)-Jimmy Webb
おずおずと祝福に来たカエルは、飼葉桶の中のキリストを見ようと飛び跳ね、他の動物たちにマナーが悪いと冷たくあしらわれます。しかしキリストとマリアはカエルを暖かく迎えます。マリアはカエルに、キリストに最初の物語を歌ってあげて、と言います。
まるでカエルが飛び跳ねているかのような、かわいらしい曲。
PartX
11. Herod(ヘロデ王)-Jimmy Webb
(キリストを探していた東方の三博士から、ユダヤ人の救世主が生まれた、ということを聞いて)イエス・キリストを殺害しようともくろむ、ユダヤのヘロデ王はベツレヘムで生まれたばかりの赤ん坊を皆殺しにせよ、という命令を下します。(夢でお告げを受けた)マリアたちはロバに乗ってエジプトに逃げ出しますが、砂漠で道に迷ってしまいます。
12. Wild Geese(ワイルド・グース)-Jimmy Webb
そこに、野生のガンの群れが空から正しい道を示します。最後のささやくようなコーダが、息をのむほど美しいですね…。
曲の解説は、一部日本盤のライナーと、遠藤紀勝・大塚光子著『クリスマス小事典』(社会思想社 1989年)を参考にしました。
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