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エッセイ「木もれ日のアトリエから」C |
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「わあ、すごいねえ」と、いつも私の作るミニチュアを楽しそうに見ていた主人ですが、
最近は作品を前に、「う〜ん」と腕を組み、目を閉じて考え込むことが多くなりました。
というのも、私の作品の撮影は主人の仕事だからなのです。ミニチュアをどう生かし、楽しいもの
として写真に仕上げるか、ここ数年、ずいぶん頭を悩ませてくれたようです。
けれども、二人で仕事をするというのはなかなかいいものです。作品が仕上がると、
どう撮るかを一緒に考え、近くの公園にセットを持っていったり、添える花を買いにいったりします。
天気の悪い日は、リビングがスタジオに早変わりです。今度は私が主人の優秀な(?)助手を
務めるのです。
撮影の前に私たちは必ず短く祈りますが、その時にいつも私の頭にふっと浮かんでくる
一枚の絵があります。農夫とその妻が共に頭を垂れて祈っているところを描いた
ミレーの『晩鐘』です。一つのことを一緒に心と力を合わせてできるというのは、
神さまからの大きな恵みだと思います。
もちろん楽しいことばかりではありません。以前、悪天候が続いた末に主人が風邪をひいて
発熱し、締め切りが迫っていたのですっかり困ってしまったことがありました。
結局、40度近い熱だったにもかかわらず、ほんの数分のぞいた晴れ間に、
汗びっしょりになって撮った写真もあります。ピンセットを使い、時間をかけたセッティングが
終わったところで太陽が隠れてしまったこともありました。それでもそれらのことを
一人でなく夫婦でできることは、私にとって常に大きな力となっています。
フォトエッセイ集『木もれ日のアトリエから』('99発行)より
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