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W.宮 崎 牧 場

目次

1.地域概況 2.調査に用いたペレットの仕様 3.調査概要
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1.地域概要

(1)地形、地質、土壌の概要

家畜改良センター宮崎牧場は宮崎県の南西部、霧島山系山麓の北東部に位置し、霧島山系北部に開けた広大な台地と九州山脈の南麓は起状が激しく岩瀬川の分水嶺となっている。

土壌は霧島火山等の火山噴出物を中心にした火山灰を母体とする黒ボク土で厚層多腐植黒ボク土、厚層腐植質黒ボク土、表層腐植質黒ボク土、同造成相及び黒ボク土造成相が分布する。また、シラス、赤ホヤ等の侵食を受けやすい土壌が介在しており、降雨による土砂流失災害を受けやすい。

一般にрH、塩基飽和度がやや低く、塩基の状態がややアンバランスの傾向にある。また、りん酸吸収係数が大きいため有効態りん酸が減少しやすい。

表47 調査圃場の土壌分析等
項 目 分 析 値 改 良 目 標 値
PH (H2O) 5.36 6.3 〜 6.7
EC (1:5) ms 0.04 0.545〜 0.745
硝酸態窒素 mg 1.4 17 〜23
塩基交換容量 me 30.4
交換性
 石灰 mg
 苦土 mg
 カリ mg

24
2
6

340 〜 401
61 〜 72
35 〜 42
塩基飽和度
 石灰 %
 苦土 %
 カリ %
 全塩基

2.7
0.4
0.5
3.5




50 〜 59
有効態燐酸 mg
燐酸吸収係数
4
2,140
30 〜 50
塩基のバランス
 Ca/Mg
 Mg/K

7.6
0.9

4/1
4/1
土壌硬度 8(2〜21)
注1.平成3年度調査実施圃場における分析値である。
2.土壌分析は3か所の平均値
3.土壌硬度は10か所の平均値、( )内は最低値、最高値を示す。


(2)気象の概要

宮崎牧場は九州南部に位置するとはいえ、高台地に位置しており昼夜は温度差が著しい。冬期間は九州山脈霧島おろしの寒風にさらされ降雪は少ないが冷え込みが厳しく降霜や霜柱も多く見られる。

平均気温は、15.8℃であり、年間降水量は2,500oである。

平均初霜、終霜は11月5日(極初霜10月20日)、4月6日(極晩霜4月18日)で農作物に被害が生じることも少なくない。梅雨期や台風時は雨量が多く風水害を受けやすい。特に土壌浸食を受けやすい土壌が多く分布していることも相まって土砂流失による農業災害も発生しやすい。秋から冬にかけては降雨日数が少なく晴天の日が多い。



2.調査に用いたペレットの仕様

調査に用いたペレットの基材、肥料、添加剤、牧草種子の配合割合は表48に示すとおりである。

表48 ペレットの仕様(含有率単位:%)
  平成元年 平成2年 平成3年 平成4年

ゼオライト 15 20 20 15
ベントナイト 14 14 14 10
シルバーライト 10 10 10 30
ピートモス 5 5 5  
バーミキュライト 5      
粉炭 5      
オルビンサンド       10

炭酸苦土石灰 20 20 20 5
溶成燐肥 15 15 15 5.7
CDU 5 10 10 10
過燐酸石灰 3 3 3 10
塩化カリ 0.5 1 1 1
硫安 0.1     1
FTE 1 1 1  


亜麻仁粘着濃縮物       2
保水剤(CS−7S) 0.5      
接着剤(メチセル) 0.5 0.5 0.5  
殺菌剤(オーソサイト)   0.5 0.5 0.3
ベンレート 0.5      



オーチャドグラス アオナミ
1
アキミドリ
1
アキミドリ
1
アキミドリ
1
トールフェスク ナンリョウ
1
フォーン
1
サザンクロス
1
ナンリョウ
1
シロクローバ フィア
0.5
フィア
1
フィア
1
フィア
0.5
レッドトップ 0.5      
ペレニアルライグラス   キヨサト
1
キヨサト
1
フレンド
1
注1.牧草種子は、基材・肥料要素・添加剤を合わせた重量に対する割合
2.ダイス径(直径)はいずれも10oである。


3.調査概要

(1)平成元年

1)調査方法

予備調査として、野草地改良を想定し、寒地型牧草主体に改良草地化した草地がススキ主体に原野的になった標高500m、傾斜度15〜20度、南東向き斜面の圃場、又、平坦な改良草地の簡易更新を想定して、標高450mの放牧地として利用している圃場、それぞれ寒地型の草種を用いてシードペレット(以下S・P)区、マクロペレット(以下M・P)区を設けた。野草地区はススキ、チガヤなどが播種時期に草丈が1〜1.8m程に繁茂していたので、播種前処理として刈払い後、火入れを行って播種した。簡易更新区は刈払い(掃除刈)後、播種した(表49)。

表49 調査区の概要(平成元年)
区 分 ペレットの
種類
面 積
(m2
反復 草 種 播種量
kg/10a
施肥量
kg/10a
摘 要
火入れ直播区 S・P 100 3 トールフェスク
(ナンリョウ)
オーチャードグラス
(アオナミ)
シロクローバ
(フィア)
レッドトップ
1

1

1

1
S・P10 肥料はペ
レットに含
まれる分
のみ
M・P 50 3 同上 同上 M・P 50
放牧地区 S・P 100 3 同上 同上 S・P100
M・P 50 3 同上 同上 M・P 50
注1.播種期:9月28日
2.播種法:散播


2)調査結果
a. 発芽状況

播種後2週間目の発芽率は、火入れ直播区ではS・P区6%、M・P区2%と非常に悪かった(表50)。低発芽率の要因は一つに播種後の極端な少雨及び地表のリターの堆積によりペレットと土との接触が妨げられたことによるものではないかと思われる。

放牧地区では、播種後2週間目、S・P区14%、M・P区10%と火入れ区よりは良かったが、これは既存の牧草や野草に庇蔭され水分が保持されたからと思われる。この調査区においてもリターの堆積がみられ、これにより土と密着していないものの発芽は悪かった。

b. 生育

良好に発芽が出来たものは、播種後2か月目にトールフェスクで草丈が12cm程度に達している。ペレットによる差異は無かった(表50)。

表50 発芽率、草丈 (平成元年10月12日)
区 分 ペレットの
種類
発芽率(%) 草 丈(cm)
火入れ直播区 S・P 6 0.5
M・P 2 11.8
放牧地区 S・P 14
M・P 10
注1.各区20個体調査
2.放牧地区は既存牧草の繁茂により調査不能であった。


(2)平成2年

1)調査圃場の設置

平成元年の予備調査の結果からは、発芽率を高めるには地表面の撹乱の必要性が示唆された。このため実用性を考慮して、平坦部の簡易更新を目的に寒地型牧草のS・Pを簡易更新区(デスキング)、完全耕起区(ロータリー耕)、無処理区(不耕起)を設定した(表51)。

M・Pについては単位面積当たりの粒数が少ないことから、葡伏茎や自然下種による草地化が期待できるものとして、暖地型牧草のバヒアグラス種子を配合したS・P区及びM・P区を設定した。

対象区として従来より宮崎牧場で行われている草地更新方法(耕起後にイタリアンライグラスとの混播)による調査区を設定した。

表51 調査区の概要(平成2年)
区 分 面 積
(a)
草 種 播種量
kg/10a
施肥量
kg/10a
摘 要


S・P区 20 バヒアグラス
(ナンゴク)
2   無処理
M・P区 20 S・P区と同じ   無処理
完全耕起区   苦土石灰 100
ヨウリン 40
鶏 糞 50
化成肥料 20
ロータリー耕


S・P
無処理区
20 トールフェスク
(ナンリョウ)
オーチャードグラス
(アキミドリ)
ペレニアルライグラ
(キヨサト)
シロクローバ
(フィア)
1

1

1

0.1
   
デスキング
耕法区
20 無処理区と同じ 化成肥料 20
(14ー14ー14)
3回掛け
S・P
完全耕起区
20   ロータリー耕
播種期、播種法:暖地型  9月21日 散播
 寒地型 10月 5日 散播


2)調査結果

播種後4日目の降雨と台風20号の降雨により種子及びS・Pが流されたため、発芽確認が出来たのは極わずかで、収量等、調査維持が困難となり調査を取りやめた。



(3)平成3年

1)調査圃場の設置

平成元年調査、平成2年調査と発芽、生育等良い結果が得られなかったことから、播種時期、鎮圧効果及び除草剤の使用の可否など、改めて基礎的調査とし9月播種分は標高450m、南東向き緩斜面でススキ、チガヤなどが播種前処理時1〜1.8m繁茂していた圃場、10月播種分は標高280mの平坦な所でチガヤが播種前処理時0.5〜1m程度繁茂していた圃場を調査圃とし、表52による調査区を設定した。

表52 調査区の概要(平成3年)

区 分 面 積
(m2
草 種 播種量
kg/10a
肥料名 施肥量
kg/10a
摘 要
1 火入れ直播 慣行
播種
鎮圧 20 トールフェスク
(ナンリョウ)
オーチャードグラス
(ナツミドリ)
ペレニアルライグラ
(キヨサト)
シロクローバ
(フィア)
1.5

1.0

0.1

0.1
炭酸苦土
石灰
熔成燐肥
化 成
(14-14-14)
200

80
30
対照区
慣行播種法
2 火入れ直播 慣行
播種
無鎮圧 同上 同上 同上 同上
3 火入れ直播 S・P 鎮圧 トールフェスク
(ナンリョウ)
オーチャードグラス
(ナツミドリ)
ペレニアルライグラ
(キヨサト)
シロクローバ
(フィア)
  S・P 100 ・種子は各
草種、S・P
重量の1%
・除草剤処
理区は播種
前に
グリホサート剤
1000ml/10
を散布
4 火入れ直播 S・P 無鎮圧 同上 同上 同上 同上
5 除草剤処理
立毛播種
S・P 無鎮圧
6 除草剤処理
火入れ直播
S・P 鎮圧
7 火入れ直播 S・P 鎮圧 50
8 火入れ直播 S・P 無鎮圧
9 除草剤処理
立毛播種
S・P 無鎮圧
10 除草剤処理
火入れ直播
S・P 鎮圧
注1.除草剤処理区ではグリホサート剤(非選択、移行性)を用いた。
2.播種期:9月2日(9月播種区)及び10月8日(10月播種区)
3.播種法:散播


2)調査結果
a. 発芽及び初期生育概況

9月播種区は刈払い後、雨の日が多く予定より播種が遅れた。播種後は適時な降雨がありS・Pも速やかに溶けた状態だったことから良好な発芽が得られると思われたが、予測に反して播種後1か月にようやく発芽となり、草勢等も良い結果とはならなかった。発芽・生育不良の原因としては、地表層に根群(ルートマット)が形成されているため種子に心土層からの水分供給が絶たれ、降雨だけでは乾燥しやすく水分保持が困難なためではないかと推測される。

10月播種区は播種後の降雨が少なく、1月に入っても原形をとどめたペレットが見られた。ペレットが一部でも埋没しているようなものは発芽したが、9月播種と同じようにペレットが地表面の腐植層に阻害され、土との接触が不十分のためか、発芽本数が少なかった。

10月播種区においては、アリによる種子の採食害が12月まで見られた。

b. 播種後1か月の草丈・草勢

9月播種の調査区では、調査区No.1(火入れ直播・慣行播種・鎮圧)が草丈、草勢とも他の区よりも勝っており、次いで調査区No.6(除草剤処理・火入れ直播・S・P・鎮圧・100kg/10a)となっていた。調査区No.7〜10は草勢も弱く、草丈の測定は困難であった。また、10月播種の調査区では播種後1か月では発芽本数が少なく草丈を測定するほどの状態ではなかった(表53)。

表53 播種後1か月の生育状況

9月播種 10月播種
草 丈
(cm)
草 勢 草 丈
(cm)
草 勢
1 14.1 9.0 1月末現在、発芽不良のため
測定困難であった。
2 10.8 4.8
3 10.4 2.3
4 10.2 1.7
5 10.5 1.8
6 12.0 3.1
7 1.0
8 1.8
9 1.0
10 1.0
注1.注.草勢の判定は、牧草系統適応性試験実施要領判定基準に準じ、下記により行った。
 1(不良)〜9(良)


c. 播種後3か月の牧草の生育と被度

播種後3か月の牧草の被度は、9月播種区、10月播種区とも調査区No.2(火入れ直播・慣行播種・無鎮圧)及びNo.6(除草剤処理・火入れ直播・S・P・鎮圧・100kg/10a)が優れていた。10月播種区ではこれに加えてNo.5(除草剤処理・立毛播種・S・P・無鎮圧・100kg/10a)の被度が高かった(表54)。

9月播種と10月播種との比較では、9月播種区では調査区No.6及びNo.2の牧草被度が他の調査区よりも格段に優れ、27%及び22%となり、3位(No.5)の14%を大きく上回っていたのに対し、10月播種区では5つの調査区(No.6,No.5,No.2,No.3,No.4)が牧草被度19%から11%の間にあった。



d. 野草の種類と被度

全般にこの時点では野草が牧草よりも圧倒的に優勢となっていく調査区が多かった。野草の被度は、9月播種区ではNo.1の調査区の野草被度が格段に低く抑えられ、次いでNo.5,No.6の調査区が40%代の値となっいたものの、これ以外の調査区は59〜85%と高い被度を示していた。10月播種区は全般的に9月播種区よりも野草の被度は高かったが、その中ではNo.10,No.9,No.7が比較的低く57〜68%となっていた(表54)。

野草の種類では9月播種区は多年生野草としてスミレ、スイカズラ、キランソウ、越年性野草としてスズメノテッポウ、コゴメカヤツリグサがみられた。一方10月播種区では多年生野草としてヨモギ、ノガリヤス、越年性野草としてホトケノザ、カラスノエンドウ、ミミナグサ、ハコベ、オニノゲシが見られた。

表54 冠部被度(播種後3か月目) (単位:%)
草種
区分
牧 草 野 草
OG TF PR WC



1 7 8   7 2 3 5   3 5                   3 8 27
2 12 4   6 22   5   2 3 3 28             5 5 8 59
3 2 2 1   5   10     17 3 32             3 2 5 72
4 5 3     8   23     10 5 30             2   12 82
5 5 4 1 4 14   2   2 7 5 7             2   15 43
6 8 7 2 10 27         15 7 17             3   5 47
7 2 1     3 13   7     12 21             5 10 7 70
8 3 1   1 5         10 10 33             12   12 77
9 7 1 1   9         3 12 30             10 5 25 85
10 8 1   2 11 3   17   5 7 23             13 2 15 85
10


1 2 5     7       18       33 17 5 13         13 99
2 1 12   1 14       33       20 18 12   5       10 98
3 5 7     12 3 7   33       13 10 5   12       15 87
4 3 8     11   5   20       17 23 10 13 13 5     13 119
5 7 8     15               5 47 3 3 12 2     12 84
6 7 12     19       5       7 47 10   17 7     23 116
7   1   1 2   20   18       7 5 3   4       8 65
8   2     2   3   15     1 3   5 1 3       37 68
9   1 1   2       4     1 3 35 3 12 12 4     2 64
10   1     1   1   7       1 23 6   3 3     13 57
(草種と略号)
牧草 野草
OG:オーチャードグラス a:ススキ f:キランソウ k:ハコベ
TF:トールフェスク b:チガヤ g:スミレ l:ミミナグサ
PR:ペレニアルライグラス c:セイタカアワダチソウ h:ノガリヤス m:オニノゲシ
WC:シロクローバ d:ヨモギ i:ホトケノザ n:スズメノテッポウ
  e:スイカズラ j:カラスノエンドウ  
注1.調査面積:1区当り(50cm×50cm)
2.草丈の低いものと高いものとでは、葉部が重なり合うので被度割合の合計は100%を越える場合もある。
3.草種毎の冠部被度は、本来は同一調査区内のそれぞれの草種毎の比較に用いられ、その合計値により調査区相互の比較に用いられる性格のものではないが、ここでは牧草及び野草それぞれの種類毎の冠部被度の合計値をもって各調査区における牧草及び野草の広がりと、それぞれの勢力の程度を示す指標とした。


e. 播種翌年(平成4年)の調査結果

平成4年4月の段階では、9月播種区、10月播種区共に牧草よりもススキ、チガヤ等の前植生が圧倒的に強く、面積当たり牧草の本数も少なかった。特に9月播種区はほとんど壊滅状態であったため、以降の調査は10月播種区のみについて行った。

平成4年(播種翌年)10月における牧草の草勢はNo.5及びNo.6の調査区が最も優れ、次いで次いでNo.8及びNo.9となっており、これ以外の調査区の草勢は劣っていた。(表55)

また、1u当たり牧草個体数においてもオーチャードグラスにおいてはNo.5(32本)及びNo.6(28本)が最も多くとなっていた。トールフェスクにおいてもNo.6が最も多く(16.7本)次いでNo.5(11.0本)となっていた。シロクローバについては個体数の計測ではなく、調査地点での個体の有無で調べたが、No.5においては調査3地点すべてに個体が認められ、以下No.1及びNo.6においては調査3地点のうち2地点において認められた(表56)。

牧草の草丈についてはNo.5(68.3cm),No.6(66.0cm)及びNo.3(63.5cm)が最も高く、次いでNo.4(60.1cm)となっており、No.8(41.9cm),No.7(46.2cm)の草丈は低かった。また野草の草丈はNo.5(41.3cm),No.6(44.8cm),No.9(49.5cm)において低く抑えられており、逆にNo.3(107.8cm)及びNo.4(97.7cm)の野草草丈は高かった。(表57)

牧草の収量については、生草重、風乾重ともにNo.5及びNo.6が多く、生草重ではNo.5が674.0g/u、No.6が659.3g/uとなっており、逆にNo.7(10.7g/u)No.8(13.3g/u)が最も少なかった(表58)。

野草の収量(生草重)は牧草収量とは逆にNo.5(98.0g/u)及びNo.6(109.3g/u)が最も少ない値となった。また野草はNo.2,No.3,No.4,No.1の調査区に多く、それぞれ生草重で777〜1024g/uとなった(表59)。

最も成績の良かったNo.5,No.6及びこれよりもかなり劣るもののある程度の成績を示したNo.9,No.10の調査区に共通することはあらかじめ除草剤処理したことであり、シードペレットの初期の定着には除草剤処理が有効である。また、No.5,No.6とNo.9,No.10は播種量の違いによるものであり、初期の牧草定着数の確保と牧草生産量の確保のためには10a当たり播種量は50kgよりも倍量の100kgの方が優れていることがうかがえた。

表55 牧草の草勢(平成4年10月26日)
区分 T U V 平 均
1 3 3 2 2.7
2 2 5 2 3.0
3 3 2 4 3.0
4 2 5 3 3.3
5 9 9 9 9.0
6 8 8 9 8.3
7 2 5 2 2.7
8 1 2 2 1.7
9 6 3 6 5.0
10 5 6 4 5.0
注1.草勢の判定は、牧草系統適応性試験実施要領判定基準に準じ、下記により行った。
 1(不良)〜9(良)
 1(不良)〜9(良)
2.T〜Vは同一調査区における3回の測定のそれぞれの値である。(以下の表において同じ)


表56 面積当たり牧草個体数 (1年目・平成4年10月26日) (単位:本/m2

オーチャドグラス トールフェスク シロクローバ
T U V 平 均 T U V 平 均 T U V
1 18 3 8 9.7 b 7 1 0 2.7 c
2 21 5 10 12.0 b 2 3 1 2.0 c
3 16 9 15 13.3 b 1 0.3 c
4 14 5 6.3 b 1 1 0.7 c
5 25 23 36 28.0 a 16 9 8 11.0 b
6 25 33 38 32.0 a 21 9 20 16.7 a
7 10 6 3 6.3 b 1 4 1 2.0 c
8 12 20 4 12.0 b 2 2 1.3 c
9 25 9 11 15.0 b 7 2 7 5.3 c
10 19 16 3 12.7 b 7 5 1 4.3 c
注.Duncan多重検定(5%水準)で、同符号間は有意差が無いことを示す。以下の表も同じ。

表57 草丈 (1年目・平成4年10月26日) (単位:cm)

牧 草 野 草
T U V 平 均 T U V 平 均
1 66.9 43.1 52.4 54.1 c 98.6 66.5 95.9 87.0 c
2 66.6 48.4 50.9 55.3 c 118.2 42.4 122.5 94.4 b
3 56.5 70.6 63.3 63.5 a 108.0 109.3 106.1 107.8 a
4 74.9 52.9 52.5 60.1 b 101.8 97.3 94.0 97.7 a
5 68.1 69.3 67.4 68.3 a 40.7 39.2 44.0 41.3 e
6 63.5 65.9 68.5 66.0 a 45.1 46.6 42.7 44.8 e
7 43.7 48.4 46.5 46.2 e 94.9 37.6 84.7 72.4 d
8 41.6 45.5 38.6 41.9 f 60.1 87.2 75.8 74.4 d
9 42.2 43.3 63.2 49.6 d 45.4 49.7 53.3 49.5 e
10 43.2 51.1 63.8 52.7 d 72.6 47.2 105.9 65.2 d


表58 牧草の生草重・風乾重 (1年目・平成4年10月26日) (g/m2

生 草 重 風 乾 重 牧草
割合
(%)
T U V 平 均 T U V 平 均 指数
1 102 17 40 53.0 b 28 4 9 13.7 b 100 4.4
2 36 55 14 35.0 b 8 8 3 6.3 b 46 1.5
3 14 56 62 44.0 b 3 11 12 8.7 b 64 2.2
4 48 98 18 54.7 b 7 21 6 11.3 b 82 3.3
5 738 760 524 674.0 a 240 265 164 223.0 a 1628 87.2
6 914 460 604 659.3 a 285 138 185 202.7 a 1480 85.3
7 20 8 4 10.7 c 4 2 1 2.3 b 17 1.0
8 18 14 8 13.3 c 6 2 2 3.3 b 24 1.1
9 185 95 265 181.7 b 40 28 80 49.3 b 360 32.6
10 90 258 114 154.0 b 27 72 26 41.7 b 304 20.1
風乾重の指数欄はNo.1の調査区の風乾重を100とした指数値
 牧草割合={牧草風乾重/(牧草風乾重+野草風乾重)}×100
 野草風乾重は表59の値


表59 野草の生草重・風乾重 (1年目・平成4年10月27日)(g/m2

生 草 重 風 乾 重
T U V 平 均 T U V 平 均
1 894 594 844 777.3 a 338 215 334 295.7 a
2 1254 624 1194 1024.0 a 520 234 502 418.7 a
3 890 786 1244 973.3 a 325 340 490 385.0 a
4 1204 569 774 849.0 a 492 209 305 335.3 a
5 56 98 140 98.0 f 15 40 43 32.7 e
6 74 124 130 109.3 f 25 44 36 35.0 e
7 760 440 740 646.7 c 323 73 290 228.7 b
8 770 754 630 718.0 b 310 330 260 300.0 a
9 230 170 440 280.0 e 90 66 150 102.0 d
10 308 240 790 446.0 d 125 62 310 165.7 c


f. 播種翌々年(平成5年)春期の調査結果

播種翌々年(平成5年)春期における牧草の生育、収量等については基本的には前年と同様にNo.6及びNo.5の成績が優れていたが、播種翌年(平成4年)には草丈、収量において際だって優れているわけではなかったNo.9及びNo.10の調査区の牧草収量がNo.5に匹敵する優れた成績を示すようになった(表60)。このことから収量に関しては除草剤処理区が、鎮圧、無鎮圧、ペレットの播種量の水準に関わらず他の区に比べて有意に多いことがわかった。草種はほとんどがオ−チャ−ドグラスで、一部ト−ルフェスク、シロクロ−バ−が見られた。これ以外の調査区でもNo.1において牧草の収量が前年を下回ったのを除いて前年よりも上回った。しかしNo.5,No.6,No.9,No.10に比べると低い水準にとどまった。

全収量(牧草+野草)に占める牧草の割合についても、No.1の調査区以外はすべて前年の値よりも増加したが、50%を超えた(野草よりも牧草が多い)のはNo.5,No.6,No.9の調査区であった。

以上のことからシードペレット播種に際しての除草剤処理による既存野草抑圧とこのことによる牧草の生育促進効果が明らかになった。また播種量については、播種翌年において成績が優れていなかった播種量が50kg/10aの調査区が成績を伸ばしてきており、播種量を減じた場合は早期の草地化はできないが、野草の抑圧が適正になされることにより徐々に野草地を牧草地とすることができた。草地化速度を播種量によりコントロールできる可能性を示した。

表60 牧草の草丈 (2年目春季・平成5年6月11日)

草 丈 (cm)
T U V 平 均
1 62.9 69.7 64.3 65.6 b
2 77.1 91.1 61.3 76.5 a
3 58.6 62.7 61.4 60.9 c
4 72.5 66.5 45.6 61.5 c
5 63.3 71.4 85.9 73.5 a
6 82.4 58.2 74.5 71.7 a
7 56.4 54.5 50.8 53.9 d
8 45.8 53.5 49.9 49.7 e
9 62.5 58.9 61.4 60.9 c
10 54.2 72.1 69.4 65.2 b


表61 牧草の生草重・風乾重 (2年目春季・平成5年6月11日)

生 草 重(g/m2 風 乾 重 (g/m2 牧草
割合
(%)
T U V 平 均 T U V 平 均 指数
1 87 50 166 101.0 d 17 6 30 17.7 c 100 6.4
2 80 590 25 231.7 b 14 122 6 47.3 b 267 17.1
3 65 86 330 160.3 c 13 22 100 45.0 b 254 18.0
4 600 12 8 206.7 b 162 4 2 56.0 b 316 22.0
5 1110 590 390 696.7 a 322 174 90 195.3 a 1103 68.9
6 1330 710 500 846.7 a 404 367 110 293.7 a 1659 84.5
7 305 120 190 205.0 b 85 35 60 60.0 b 339 26.1
8 130 255 120 168.3 c 35 65 30 43.3 b 245 45.6
9 1000 400 650 683.3 a 260 125 205 196.7 a 1111 59.6
10 750 1000 180 643.3 a 230 270 45 181.7 a 1027 42.1
注.風乾重の指数欄はNo.1の調査区の風乾重を100とした指数値
 牧草割合={牧草風乾重/(牧草風乾重+野草風乾重)}×100
 野草風乾重は表62の値


表62 野草の生草重・風乾重 (2年目春季・平成5年6月11日)

生 草 (g/m2 風 乾 重 (g/m2
T U V 平 均 T U V 平 均
1 900 640 600 713.3 a 320 247 210 259.0 a
2 870 320 770 653.3 a 310 112 264 228.7 a
3 550 520 500 523.3 a 230 200 186 205.3 a
4 450 400 695 515.0 a 186 159 252 199.0 a
5 330 11 350 230.3 b 130 3 132 88.3 b
6 0 5 470 158.3 c 0 1 160 53.7 c
7 500 500 310 436.7 a 170 220 120 170.0 a
8 820 515 610 648.3 a 285 180 210 51.7 a
9 180 95 140 138.3 c 60 50 45 133.3 c
10 90 235 800 375.0 a 30 85 285 250.0 a


g. 播種翌々年(平成5年)秋期の調査結果

播種翌々年(平成5年)秋期における牧草の生産量はすべての調査区において同年春期の値には及ばなかった。しかも夏期に旺盛な生育をする野草との競合もあり、全収量に占める牧草割合も全区において春期調査の値を下回った。

この中で播種に際して除草剤処理を行った各区はNo.6において52.4%、No.9において47.2%と牧草と野草がほぼ同量となった、またNo.5が36.2%、No.10が16.2%の牧草割合を保ったが、除草剤処理を行わなかったNo.1,No.2,No.3,No.4,No.7,No.8の各区は牧草割合が2%以下とほぼ全滅状態であった(表64)。

生育していた牧草草種は春期と同じくほとんどがオ−チャ−ドグラスで、一部の区で少しト−ルフェスクが見られた。

表63 牧草の草丈 (2年目秋季・平成5年10月25日)

草 丈 (cm)
T U V 平 均
1 74.3 59.1 59.9 64.4 c
2 66.4 72.7 60.3 66.5 c
3 74.5 69.4 59.9 67.9 b
4 75.9 73.5 64.3 71.2
5 73.8 73.4 78.6 75.3 a
6 81.0 76.5 88.1 81.8 a
7 61.0 62.1 73.0 65.4 c
8 59.8 66.3 70.3 65.5 c
9 64.3 67.8 83.6 71.9 b
10 58.5 74.5 75.6 69.5 b


表64 牧草の生草重・風乾重 (2年目秋季・平成5年10月25日)

生 草 重(g/m2 風 乾 重 (g/m2 牧草
割合
(%)
T U V 平 均 T U V 平 均 指数
1 2 25 0 9.0 c 1 6 0 2.3 c 100 0.6
2 0 0 15 5.0 c 0 0 4 1.3 c 57 0.3
3 8 28 3 13.0 c 3 8 1 4.0 c 174 0.9
4 21 3 3 9.0 c 6 1 1 2.7 c 117 0.7
5 205 276 485 322.0 b 55 76 124 85.0 b 3696 36.2
6 670 520 460 550.0 a 190 140 116 148.7 a 6465 52.4
7 13 12 5 10.0 c 3 3 1 2.3 c 100 0.5
8 41 10 22 24.3 c 12 3 6 7.0 c 304 1.7
9 217 173 600 330.0 b 64 54 190 102.7 a 4465 47.2
10 149 369 7 174.7 b 45 98 2 48.3 b 2100 16.2
注.風乾重の指数欄はNo.1の調査区の風乾重を100とした指数値
 牧草割合={牧草風乾重/(牧草風乾重+野草風乾重)}×100
 野草風乾重は表65の値


表65 野草の生草重・風乾重 (2年目秋季・平成5年10月25日)(単位:g/m2

生 草 (g/m2 風 乾 重 (g/m2
T U V 平 均 T U V 平 均
1 1190 1100 950 1080.0 a 480 330 425 411.7 a
2 1400 1040 1110 1183.3 a 590 330 570 496.7 a
3 1280 840 1260 1126.7 a 510 315 500 441.7 a
4 1140 1210 690 1013.0 a 460 460 270 396.7 a
5 640 180 380 400.0 c 230 85 135 150.0 c
6 480 190 430 366.7 c 175 80 150 135.0 c
7 1240 740 1260 1080.0 a 505 310 500 438.3 a
8 525 1245 1080 950.0 a 220 510 460 396.7 a
9 295 190 360 281.7 c 110 95 140 115.0 c
10 425 293 1180 632.7 b 175 130 445 250.0 b


h. 平成3年播種による調査の総合評価

平成3年に開始した調査においては、播種当年における草丈等生育状況はNo.1(火入れ直播・慣行播種・鎮圧)及びNo.2(火入れ直播・慣行播種・無鎮圧)において比較的良好であったが、播種翌年以降においては牧草の生育は優れず、播種翌々年(平成5年)秋にはほぼ壊滅状態となった。No.5(除草剤処理・立毛播種・S・P・無鎮圧・100kg/10a)及びNo.6(除草剤処理・立毛播種・S・P・鎮圧・100kg/10a)は播種当初の生育はさほど優れたものではなかったが、播種後3か月後に調査した冠部被度の調査以降はほぼすべての調査において優れた成績を示した。No.5とNo.6の播種量を半減したNo.9(除草剤処理・立毛播種・S・P・無鎮圧・50kg/10a)及びNo.10(除草剤処理・立毛播種・S・P・鎮圧・50kg/10a)は、播種翌年までの成績はさほどではなかったが、播種翌々年においてはNo.5,No.6に準ずる成績を示した(表66)。

表66 総合評価表
表No 事 項 調査区番号 備 考
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
表53 草丈(播種後1か月)         9月播種分のみ
草勢( 〃 )          
54 冠部被度(牧草)・9月播種          
冠部被度(牧草)・10月播種          
冠部被度(野草)・9月播種          
冠部被度(野草)・10月播種     全体に高い
55 牧草の草勢(4年10月)    
56 牧草個体数(4年)・OG                 a=◎
   〃   ・TF                 a=◎、b=○
   〃   ・WC           a=◎、b=○
57 牧草草丈(4年)             a=◎、b=○
野草草丈( 〃 )         e=◎、d=○
58 牧草風乾重(〃)                 a=◎
59 野草風乾重(〃)               f=◎、e=○
60 牧草草丈(5年春)           a=◎、b=○
61 牧草風乾重(〃)       a=◎、b=○
62 野草風乾重(〃)               c=◎、b=○
63 牧草草丈(5年秋)           a=◎、b=○
64 牧草風乾重(〃)             a=◎、b=○
65 野草風乾重(〃)             c=◎、b=○
注1.調査区番号は下の各調査区の概要の表を参照のこと。
2.野草に関する評価は冠部被度の低いもの、草丈の低いもの、風乾重の少ないものをよしとした。


(参考:各調査区の概要)
調査区No 除草剤処理 火入れ有無 播種区分 鎮圧 S・P播種量
(kg/10a)
No.1   火入れ直播 慣行播種 鎮圧  
  火入れ直播 慣行播種    
  火入れ直播 S・P 鎮圧 100
  火入れ直播 S・P   100
除草剤処理 立毛播種 S・P   100
除草剤処理 火入れ直播 S・P 鎮圧 100
  火入れ直播 S・P 鎮圧 50
  火入れ直播 S・P   50
除草剤処理 立毛播種 S・P   50
10 除草剤処理 火入れ直播 S・P 鎮圧 50

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