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U.家畜改良センター(本所)

目次

1.地域概況 2.調査の進め方 3.調査の方法と結果
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1.地域概況

(1)地形,地質,土壌の概要

1)地形

調査地区は福島県西白河郡西郷村にある家畜改良センター芝原地区で通称「谷津田」地区の一角(W−2圃場)である。当区域一帯は那須火山(主峰茶臼岳1,917m)連峰の一つ赤面山より東方に展開する標高約600mから800mの裾野台地で、地形は全体に東に傾斜し、東北に流れる河川に挟まれたやや起伏の多い丘陵地である(表1)。

表1 調査地の概要
地形 丘陵地
傾斜度 平均 6゜
標高 730m(600m〜800m)
堆積様式・母材 非固結性火山岩
障害物
起伏 やや起伏あり
土地利用現況 野草放牧地
2)地質

調査地区の地質は複輝石山岩を基石とする第3紀層で、度重なる火山噴火による噴出物で厚く覆われている。

3)土壌

調査地区の土壌は那須火山の非団結成火山岩に由来し、崩積及び風積性の黒褐色の全層多腐植層である。表土は概して厚く礫はなく、腐植に富みpHは低く、強い酸性を示す。燐酸吸収係数は非常に高い。保肥力(CEC)は中程度であるが塩基飽和度は低く、カリウムやカルシウム等の塩基に欠乏した典型的な火山灰土壌である(表2)。

表2 土壌特性
分析項目 測定値 評 定
pH(H2O) 4.9 極めて強い酸性
塩基置換容量 18ml 土壌の保肥力普通
燐酸吸収係数 2,500 非常に強い
有効態燐酸 8mg 低 い
硝酸態窒素 2mg 僅かに含む
アンモニア態窒素 1mg
置換性加里 9mg 低 い
置換性石灰 60mg 非常に低い
置換性苦土 9mg 非常に低い
腐 植 6.7% 富 む


(2)気象概要

冬から春先にかけては当地で那須おろしと称せられる強風が吹く。高標高のため夏には気温が比較的低く、また雷雨の発生が多い。春秋の季節の変わり目には太平洋からの北東気流がしばしば流入するため低温、曇天、小雨のぐずついた天候が多い。

年平均気温は8.3℃。気温が最も高い8月においても最高気温は23.4℃、最高気温の極値も32.0℃にとどまる。また気温が最も低い1月の最低気温は−7.5℃、最低気温の極値は−13.4℃となる。年間降雨分布は夏期の雷雨や夏〜秋期の台風及び秋雨前線の影響で牧草の播種期とも重なる8月〜10月が最も多く、それぞれ月間300mmを超える雨量となる。最小月は12〜1月で13〜31mmの降水量となる。初霜は10月17日、終霜は5月11日で無霜期間は161日である(表3、いずれも平成2年及び3年の平均値)。

表3 気象表(谷津田地区)
9時
気温
(度)
最高
気温
(度)
最低
気温
(度)
降水量
(mm)
平均
風速
(m/s)
最高
風速
(m/s)
最多
風向
無降
水日
(日)
霧日

(日)
1月 -4.6 -1.7 -7.5 13.5 2.8 11.8 NW 8 1
2月 -2.4 0.5 -5.3 99.3 3.0 13.2 NW 8 1
3月 0.7 4.4 -3.1 90.5 3.4 13.3 NNW 12 1
4月 6.6 10.5 2.6 137.3 3.1 13.0 SW 13 1
5月 11.2 16.3 6.5 68.5 2.8 12.6 SSW 11 1
6月 16.6 20.3 12.8 207.3 2.2 9.9 SSE 9 1
7月 18.6 21.7 15.2 199.0 1.9 8.8 SW 9 2
8月 19.7 23.4 15.9 393.8 2.1 8.8 SSE 10 2
9月 16.9 19.9 13.8 334.0 2.1 13.4 SSW 9 3
10月 10.6 13.9 8.3 334.3 2.2 10.1 NNE 9 1
11月 5.4 9.5 2.1 130.3 2.3 13.6 NW 14 2
12月 0.3 3.9 -3.4 31.3 2.7 12.3 NW 13 1
計平均 8.3 11.9 4.8 2039.1 2.55 11.73   10 1
無霜日数 161日
初霜 10月17日
終霜 5月11日
注.1 谷津田地区における平成2年及び平成3年の値の平均値。
ただし平均風速、最多風向、無降水日及び霧日数は白河測候所のデータによる。
計平均の欄:降水量は年間計、これ以外の数値は年平均値

(3)植生概要

カシワ、ナラの優占する広葉樹の萌芽2次林が点在し、林床にはササがほぼ均一に密生している(表4、5)。

表4 調査地区の立木(萌芽林)状況
樹 種 生 育 状 況 備 考
樹 高 樹 径 10a当たり
本数
樹冠占有面積
落葉広葉樹
(カシワ、ナラ)
3.0 m 5.0 cm以下 435本 15〜20% 樹冠占有面積
は観察による


表5 調査地区の林床植生状況
植生タイプ 生 育 状 況
草 丈 本数(m2当たり) 生草重(m2当たり)
ササ型 74.3cm 293.5本 682.5g

(4)災害、害虫等の発生状況

平成2年4月は気圧の変化が激しく、天候が不安定で下旬には最大瞬間風速25.3m(白河測候所)の強風が吹き荒れ、樹木や建物等に被害が発生した。また、平成3年は台風の接近等により8〜10月の降水量が極めて多く、降水量合計が1,048.9oとなった。

なお、調査期間中においては害虫の被害はみられなかった。

2.調査の進め方

(1)調査の全体概要

a. 平成元年播種調査(予備調査)

平成元年度は本調査に備えた知見を得る目的から、予備調査として、a.原植生の処理、b.表土撹乱、c.鎮圧、d.ペレットの形状の4要因の牧草の定着・生育、原植生の消長に及ぼす影響について調査した。

なおこの調査は、平成元年度に調査ほ場の設置・播種を行い、播種当年には発芽後の初期生育状況を調査した。翌2年度において生育状況及び収量調査を行った。


b. 平成2年播種調査

平成2年度からは予備調査で得られた知見をもとに本調査を実施した。調査区としては、放牧の強弱及び放牧に代えて刈払いを実施した区を設けた。また、使用するペレットとして、シードペレット及び2種類のマクロペレットを用い、それらの比較を行った。

なおこの調査は、放牧区においては播種前に放牧を実施した。播種当年には発芽後の初期生育状況を調査した。3〜4年度には管理放牧を実施しつつ生育状況及び収量調査を行った。


c. 平成3年播種調査

3年度は適正播種量を調査する目的で、播種量50kg/10a区と75kg/10a区の2水準の調査区を設け、播種当年の発芽後の初期生育状況及び平成4年における生育状況及び収量調査を行った。

(2)調査方法

1)ペレットの仕様

シードペレットとは、種子、土壌改良資材、肥料、基材等とを結合剤で固めて団塊にしたものである。また、マクロペレットは土壌改良資材、肥料、基材等による固まりに接着剤で牧草種子をまぶしつけたものである(図1、2)。

種子は草種・品種としてオーチャードグラス(アキミドリ)、トールフェスク(フォーン)、シロクローバー(フィア)を用いた。

肥料以外の成分としては基材と添加剤とに分けられ基材としてベントナイト、ゼオライト、ピートモス、バーミキュライト(商品名:シルバーライト)が用いられ、添加剤としては接着剤としてメチルセルローズ(メチセル)、殺菌剤オーソサイドが用いられている。成分含有率は表6のとおりである。

表6 シードペレット及びマクロペレットの仕様
ペレット
の区分
成 分 種 子 備 考
肥料成分 含有量
(g/kg)
肥料以外の成分 含有量
(g/kg)
種 類 含有量
(g/kg)
S・P 炭酸苦土石灰
溶リン
CDU
過燐酸石灰
KCl
FTE
200
150
100
30
10
10
基材
 ベントナイト
 ゼオライト
 ピ−トモス
 シルバ−ライト
添加材
 接着剤メチセル
 (メチルセルローズ)
 殺菌剤
 (オ−ソサイド)

140
200
50
100

5

5
オーチャードグラス
(アキミドリ)
トールフェスク
(フォーン)
シロクローバ
(フィア)
10

10

5
球形
ダイス径10cm
M・P
(B)
窒素 (N)
燐酸(P25
加里(K2O)
原料
CDU
UF
重過
熔燐
硫化
珪酸加里
炭カル
70
75
35
    オーチャードグラス
(アキミドリ)
トールフェスク
(フォーン)
シロクローバ
(フィア)
10

10

5
楕円偏平形
1個12g
播種直前、
に溶いた洗
糊により種
を接着
(下記参照)
M・P
(CDU)
窒素 (N)
燐酸(P25
加里(K2O)
原料
CDU
苦土燐安
重過
炭カル
泥炭
70
75
35
    オーチャードグラス
(アキミドリ)
トールフェスク
(フォーン)
シロクローバ
(フィア)
10

10

5
(同上)
注.CDU:Crotonylidene diurea(2オキシ−4−メチル−6ウレイド−ヘキサヒドロピリミジン)
 UF :Ureaform(メチレン2尿素、2メチレン3尿素、3メチレン4尿素の混合物)

(参考)マクロペレットへの種子付着作業の手順
  1. 固形肥料5kgをバケツ(当センタ−ではオイル空缶を利用)に入れる。
  2. ヤマトノリ100ccを水50ccで希釈してこれに加える。
  3. これに牧草種子(オーチャードグラス種子50g、トールフェスク種子50g、シロクローバ種子25g)を均一に振りかける。
    (種子量は面積当たり基準播種量がシ−ドペレットと同量となるようにした。)
  4. 固形肥料に牧草種子が均等に付着するように撹拌する。
2)所要労力

平成3年度に開始した調査においては、前植生処理、播種及び管理(刈払い)に要する労力を測定した。

3)生育等調査

播種当年において、草種毎の草丈及び草生密度(1u当たり本数)を測定した。播種翌年以降については、草丈及び収量(草種別)を測定した。なお、本調査では年に数回の放牧を実施したので、草丈、収量等の調査は放牧を開始する直前に実施した。

3.調査の方法と結果

(1)平成元年播種調査(予備調査)の概要及び結果
1)調査圃場の区分

平成元年度は、原植生の処理、表土撹乱、鎮圧、ペレットの形状の4要因について調査することとし、表7による処理区分を設定した。なお、これら調査区における追肥は表8により行った。

表7 平成元年度 調査区の概要
処 理 ペレット
の種類
1区面面積
×反復数
播 種
原植生
処理
表層
破砕
鎮圧 播種
月日
散布量
kg/10a


S・P 16m2×2 H1,8,31 156.3
M・P
S・P
M・P
S・P
M・P


S・P
S・P
S・P
    
表8 追肥時期と施肥量(成分量:kg/10a)
施肥月日 シードペレット区 マクロペレット区
N P2O5 K2O N P2O5 K2O
H2.4.10 3.5 1.75 1.75
H2.5.29 2.5 1.25 1.25 2.5 1.25 1.25
H2.7. 6 2.0 1.0 1.0 2.0 1.0 1.0
H2.8.18 2.0 1.0 1.0 2.0 1.0 1.0
10.0 5.0 5.0 6.5 3.25 3.25
注.S・P区で肥料欠乏が観察されたので、播種翌年の早春
(平成2年4月10日)にS・P区のみ施肥を行った。


2)調査圃場の整備
a. 原植生処理

立木伐採処理については、処理区、無処理区とも、カシワ、ナラの優占する広葉樹の萌芽2次林(図3参照)を地際から切り倒し、調査区外に搬出した(搬出後の状況は図4)。

ササの処理については、処理区はブッシュクリーナーで地際から約5〜8cmの高さに刈払い調査区外に搬出した。無処理区におけるササの立毛状態は長年の放牧の影響で全体的に矮小化し、葉部はかなり採食されていた。このため播種床の光条件としては十分な状態であり、また表層マットもごく少量で牧草の発芽定着に必要とされる条件としては十分であった。

b. 表層土破砕

表層土破砕はトラクターに直装型のディスクハロー(重量約470kg)を装着し、同一方向に2回掛で行った(図5)。

c. 鎮圧

鎮圧区では車輪型トラクター(2.8t)を用い、播種直後に鎮圧を実施した。

3)調査の結果
a. 播種前後の処理の効果

ササの地下茎が地表近くに密集している上、伐採樹の残根も点在していたこともあり、表層土破砕処理の効果は十分ではなく、原植生処理区ではディスクによる2〜3cm幅の浅い切傷が断続的についた程度であり、原植生無処理区においても表土に僅かな傷跡を残す程度にとどまった。

また、鎮圧区ではペレットの殆どが表土に付着し、なかには半没のものも見られた。一方無処理かつ無鎮圧の調査区ではペレットの地表への密着が十分でないものも散見された。

b. 発芽及び初期生育

播種は8月31日に実施した。播種後の9月上旬は雨天が続き雨量も10日間に98.4mmあり、牧草の発芽に必要な土壌水分も確保された。このような発芽に最適の条件となったことからマクロペレットではマメ科牧草の発芽が播種後4〜5日後で、イネ科牧草の発芽は7〜8日後であり、10日目には発芽揃となった。

一方、シードペレットは播種後15日目にはマメ科牧草が、20日目にはイネ科牧草の発芽が認められ、発芽揃までに25日を要した。従ってペレットの形状等による発芽の差が顕著であった。

また、生育初期の草勢はマクロペレットから出芽した牧草は茎葉の発育が良好で葉色は濃緑、葉幅も広く頑丈な生育相を示したが、シードペレットからの出芽牧草は葉色は淡緑、葉幅も狭く一見ひ弱な生育相を示した。なお播種前処理と牧草の発芽、初期生育との関連は、原植生処理の有無間で顕著な差がみられ、刈払いの効果が明らかになったが、他の処理方法(表土撹拌、鎮圧)間では明瞭な差は見られなかった(表9)。

表9 生育状況 (平成元年11月21日調査)
処 理 ペレット
の種類
草 丈(cm) 草勢 葉色
原植生処
理方法
表層
破砕
鎮圧 OG TF WC
刈払区 S・P 12.9 8.8 4.3 5 5
M・P 13.0 13.1 4.1 5 7
S・P 13.1 10.5 4.3 3 5
M・P 12.2 10.6 4.7 7 7
S・P 15.6 11.7 4.3 5 5
M・P 13.8 11.2 3.4 5 7
無処理区 S・P 17.3 14.9 4.5 3 5
S・P 15.8 14.1 4.8 3 5
S・P 13.9 12.6 4.1 3 5

注.1種類欄の記号と草種は次のとおりである。(以下の表に同じ)
 OG:オーチャードグラス  TF:トールフェスク  WC:シロクローバ
草勢、葉色:1(不良)〜9(良)


c. 牧草の生育及び収量等

野草地(ササ地)を対象にしたペレットによる簡易草地造成では、草地造成工法及びペレットの形状の相違により草地化速度(牧草割合の増)に差はあるものの、いずれも刈り取り毎に牧草優占度が高まった。

刈払いを行った調査区における、ペレットの形状と牧草の生育及び産草量では、表層破砕及び鎮圧の有無にかかわらず、生育初期の草勢とは逆にシードペレットがマクロペレットよりも優れていた(表10)。

表層破砕及び鎮圧の有無による収量及び牧草割合の違いは明確ではなかった。

前植生処理については、刈払い区において野草がm2当たり 40〜145g(生草収量全体の0.9〜4.9%)と低く抑えられたのに対し、無処理区においてはm2当たり530〜672g(15.7〜18.3%)と比較的多い割合で残っていた。

表10 収量調査表
前植生
処理
表層
破砕

区分 牧草
種類
1m2当たり生草収量(g) 構成比
(%)
1番刈 2番刈 3番刈 4番刈
刈払い S・P OG
TF
WC

945
80
280
15
1,320
840
10
415
25
1,290
910
25
91
0
1,026
650
15
13
0
678
3,345
130
799
40
4,314
77.5
3.0
18.5
0.9
100
M・P OG
TF
WC

420
25
17
45
507
670
110
110
55
945
885
30
35
5
955
620
10
17.5
17.5
665
2,595
175
169.5
117.5
3,057
84.9
5.7
5.5
3.8
100
S・P OG
TF
WC

702.5
35
317.5
30
1,085
815
22.5
380
35
1,252.5
745
17.5
80
0
842.5
770
15
9.5
0
794.5
3,032.5
90
787
65
3,974.5
76.3
2.3
19.8
1.6
100
M・P OG
TF
WC

355
22.5
23
25
425.5
795
50
225
30
1,100
1,085
37.5
220
1.5
1,344
745
15
11
0
771
2,980
125
479
56.5
3,640.5
81.9
3.4
13.2
1.6
100
S・P OG
TF
WC

652.5
35
80
60
827.5
935
25
225
35
1,220
1,035
20
127.5
5
1,187.5
705
14.5
15.5
0
735
3,327.5
94.5
448
100
3,970
83.8
2.4
11.3
2.5
100
M・P OG
TF
WC

320
37.5
10
45
412.5
710
90
70
90
960
885
47.5
50
7.5
990
585
18.5
13.5
2.5
619.5
2,500
193.5
143.5
145
2,982
83.8
6.5
4.8
4.9
100
無処理 S・P OG
TF
WC

665
15
12.5
480
1,172.5
805
7.5
37.5
60
910
740
15
11
10
776
620
5.5
8.5
0
634
2,830
43
69.5
550
3492.5
81.0
1.7
2.0
15.7
100
S・P OG
TF
WC

525
7
9.5
480
1,021.5
800
25
35
45
905
750
11
15
5
781
590
10.5
1.5
0
602
2,665
53.5
61
530
3,309.5
80.5
1.6
1.8
16.0
100
S・P OG
TF
WC

470
11.5
5.5
495
982
625
11
6
155
797
945
35
11.5
20
1,011.5
865
21.5
1
2.5
890
2,905
79
24
672.5
3,680.5
78.9
2.1
0.7
18.3
100


注1.計測日1番草:平成2年5月28日
3番草:平成2年8月17日
2番草:平成2年 7月 5日
4番草:平成2年10月29日
注2.計測は0.5gの単位(精度)で行った。
注3.種類欄の記号と草種は次のとおりである。(以下の表について同じ)
 OG:オーチャードグラスTF:トールフェスク
 WC:シロクローバ野:野草(笹が主体)


(2)平成2年播種調査の概要及び結果

1)調査圃場の区分

平成2年度からは前植生処理としての放牧圧がペレット種子による草地造成に及ぼす効果を明らかにするため、2段階の放牧圧を設定した。

また、平成元年開始の調査に引続きシードペレットとマクロペレットの比較を行ったが、マクロペレットについては配合する肥料(窒素源)を2種類設定した(それぞれのペレットの配合については表6を参照)。

これとは別に放牧を行わず、ロータリースラッシャーで刈払いを行った区(刈払い区:播種したペレットはシードペレット)設定した。



a. 刈払い区

刈払い区には原植生としてカシワ、ナラ等の優先する広葉樹2次林が点在しており、樹高3m、樹径5cm程の立木が10a当たり453本あった。

前植生処理として、これらの立木の刈払いを春先の4月10日と播種前の8月16日にロータリースラッシャーで実施した(表11、12)。刈払い所要時間はそれぞれ4月10日が1時間、8月16日が36分であった(表13)。

なお、刈払い区においても播種翌年の管理放牧は軽放牧区と同じ放牧圧で実施した。

表11 駆動機械の概要
供試トラクター 馬力 エンジン回転 PTO回転数 走行速度
メルセデスベンツ
440314-4
7 PS 2,500 rpm 540 rpm 1.2km/h


表12 刈払い用機械の概要
作業機 銘 柄 作業幅 平均
刈高
ロータリースラッシャー ウエスタン自動車 125cm 15cm


表13 所要時間、燃料所要量
刈払
時期
面積 所要時間 燃  料
消 費 量
ha当たり
時 間 燃 料
4.10 20a 1時00分 軽油6.0リットル 5時00分 軽油30.0リットル
8.16 36分 〃 3.5リットル 3時00分 〃 17.5リットル
  1時36分 〃 9.5リットル 8時00分 〃 47.5リットル

b. 放牧区

前植生処理としての放牧は当センターのけい養牛(黒毛和種)の年齢10歳前後の25頭群で実施した。

放牧の程度がその後の牧草の生育にどのような影響を与えるのか、調査するために軽放牧区と重放牧区を設けた。

放牧は平成2年8月1日〜8月13日に実施し、軽放牧区については10a当たり延べ25頭、重放牧区は10a当たり延べ50頭で実施した。放牧実施の詳細については表14、15、16のとおりである。

表14 放牧実施概要
区 分 面積
(a)
放牧期間 放牧日数
(日)
頭数
(頭)
10a当たり放牧
頭数(頭)


S・P 20 8. 1〜8. 3 2 25 25
M・P(CDU) 10 8. 3〜8. 4 1 25 25
M・P(B) 10 8. 4〜8. 5 1 25 25


S・P 20 8. 5〜8. 9 4 50 50
M・P(CDU) 10 8. 9〜8.11 2 50 50
M・P(B) 10 8.11〜8.13 2 50 50
注.放牧に用いた家畜は黒毛和種である

表15 放牧牛の体重推移
家畜の種類 放牧期間
(日数)
放牧前平均
体重(kg)
放牧後平均
体重(kg)
体重増減
(kg)
黒毛和種 8.1〜8.1
(12日)
517.2 509.44 △7.76


表16 牧柵設置作業所要資材及び労力
仕 様 延長
(m)
ha当たり資材費(金額単位:円) 所要労力(人)
品 名 数量 単価 金額 ha当 100m当
牧柵3段張 840 有刺鉄線 10玉 5,500 55,000 15.5 20.9


2)播種

播種は平成2年8月16日に行った。用いた種子は前年と同じオーチャードグラス(アキミドリ)、トールフェスク(フォーン)、シロクローバ(フィア)である。

播種作業はシードペレットはm2当たり100個(10a当たり100kgに相当)、マクロペレットはm2当たり8個(10a当たり96kgに相当)を基準に散播した(表17)。

表17 平成2年度 調査区の概要
区分 前植生処理 ペレットの種類 1区
面積
播種量(kg) 備 考
/10a 全量
刈払区 ブッシュカッター
処理
S・P 20a 100 200 100個/m
放牧区 軽放牧処理 S・P 20a 100 200 100個/m2
M・P(B) 10a 96 96 8個/m2
M・P(CDU) 10a 96 96 8個/m2
重放牧処理 S・P 20a 100 200 100個/m2
M・P(B) 10a 96 96 8個/m2
M・P(CDU) 10a 96 96 8個/m2


3)草地の管理
a. 追肥

平成2年度に設置した調査区の翌3年度の放牧開始時における草勢は、葉色も淡く、葉の先端が枯死し始めており、肥切れの状態となっていた。このようなこともあり平成3年においては、調査ほ場全区において第1回放牧後及び第3回放牧後に下記による施肥を実施した。

表18 平成2年度設置調査区の施肥概要
施 肥 月 日 施肥成分量(kg/10a) 備 考
N P2O5 K2O
平成3年6月11日(第1回放牧後)
平成3年8月19日(第3回 〃 )
8
8
4
4
4
4
調査ほ場全調査区に左
記の施肥を行った。
16 8 8  


b. 管理放牧

播種の翌年(平成3年)において、5月29日から9月24日の間に各4回、1回当たり2〜3日の放牧を行った。放牧家畜としては乳用牛と肉用牛を交配した交雑種を用いた。10a当たり年間のべ放牧頭数は、刈払区及び軽放牧区においては40頭、重放牧区においては47〜47.5頭とした。

表19−1 平成2年度設置調査区における放牧実施状況(平成3年度)
前植生
処理
ペレット
の種類
面積
(a)
放牧期間 放牧
日数
放牧
頭数
放牧延頭数
頭数 /10a
刈払区 S・P 20 6/ 3〜6/ 5
7/ 6〜7/ 9
8/12〜8/14
9/22〜9/24
2
3
2
2
9
5
10
10
10
80 40
軽放牧区 S・P 20 6/ 1〜6/ 3
7/ 3〜7/ 6
8/10〜8/12
9/20〜9/22
2
3
2
2
9
5
10
10
10
80 40
M・P
(B)
10 6/ 1〜6/ 3
7/ 3〜7/ 6
8/10〜8/12
9/20〜9/22
2
3
2
2
9
2.5
5
5
5
40 40
M・P
(CDU)
10 6/ 1〜6/ 3
6/30〜7/ 3
8/ 8〜8/10
9/18〜9/20
2
3
2
2
9
2.5
5
5
5
40 40
重放牧区 S・P 20 5/29〜6/ 1
6/27〜6/30
8/ 5〜8/ 8
9/16〜9/18
3
3
3
2
11
5
10
10
10
95 47.5
M・P
(B)
10 5/29〜6/ 1
6/25〜6/27
8/ 2〜8/ 5
9/13〜9/16
3
2
3
3
11
2.5
5
5
5
47 47
M・P
(CDU)
10 5/29〜6/ 1
6/25〜6/27
8/ 2〜8/ 5
9/13〜9/16
3
2
3
3
11
2.5
5
5
5
47 47


表19−2 平成2年度設置調査区における放牧実施状況(平成4年度)
前植生
処理
ペレット
の種類
面積
(a)
放牧期間 放牧
日数
家畜の
種類
放牧
頭数
放牧延頭数
頭数 /10a
刈払区 S・P 20 6/18〜 6/20 3 黒毛和種
交雑種
7
1
98 49
8/20〜 8/23 4 黒毛和種
交雑種
7
1
11/ 4〜11/ 9 6 黒毛和種
交雑種
6
1
重放牧 S・P 20 6/ 8〜 6/10 3 黒毛和種
交雑種
7
1
36 18
8/10〜 8/12 3 黒毛和種
交雑種
7
1
10/26 1 黒毛和種
交雑種
6
1
M・P
(B)
10 6/ 6〜 6/ 7 2 黒毛和種
交雑種
7
1
48 48
8/ 6〜 8/ 7 2 黒毛和種
交雑種
7
1
10/22〜10/25 4 黒毛和種
交雑種
3.5
0.5
M・P
(CDU)
10 6/ 4〜 6/ 5 2 黒毛和種
交雑種
7
1
48 48
8/ 8〜 8/ 9 2 黒毛和種
交雑種
7
1
10/22〜10/25 4 黒毛和種
交雑種
3.5
0.5
軽放牧 S・P 20 6/14〜 6/15 2 黒毛和種
交雑種
7
1
42 21
8/17〜 8/19 3 黒毛和種
交雑種
7
1
11/ 1〜11/ 3 3 黒毛和種
交雑種
6
1
M・P
(B)
10 6/11〜 6/13 3 黒毛和種
交雑種
3.5
0.5
37.5 37.5
8/13〜 8/14 2 黒毛和種
交雑種
3.5
0.5
10/27〜10/31 5 黒毛和種
交雑種
0.5
M・P
(CDU)
10 6/11〜 6/13 3 黒毛和種
交雑種
3.5
0.5
37.5 37.5
8/15〜 8/16 2 黒毛和種
交雑種
3.5
0.5
10/27〜10/31 5 黒毛和種
交雑種
3
0.5


4)調査の結果
a. 投下労力

労力は大きく分けて播種前作業と管理作業とに投下された。播種前作業としては刈払い区は前植生処理としての刈払いに10a当たり960分の所要時間、マクロペレット区は基材に種子を付着させる作業に 190分、播種作業は 180分であった。なお、平成2年11月13日〜15日は管理作業として刈払いが実施され、のべ所要時間はそれぞれ10a当たり960分〜2,160分であった(表20)。

表20 平成2年所要労力表 (単位;分×人/10a)
圃 場
区 分
ペレットの
種 類
圃場
面積
前植生
処 理
種子
付着
作業
播種
作業
管理作業
刈払作業
合 計
刈払区 S・P 20a 960   180   1,140
軽放牧区 S・P 20a     180 1,080 1,260
M・P(B) 10a   190 180 1,440 1,810
M・P(CDU) 10a   190 180 1,440 1,810
重放牧区 S・P 20a     180 960 1,140
M・P(B) 10a   190 180 2,160 2,530
M・P(CDU) 10a   190 180 1,440 1,810


b. 発芽及び初期生育

播種は平成2年8月16日に実施したが、同日夜に強い雨が降り、翌17日にはシードペレットは痕跡をとどめない程に溶解し、マクロペレットも種子は固形肥料から完全に離脱し、裸地化の進んだ場所では一部の種子も流されていた。発芽はペレットが溶解し、種子が露出したため、両種共にマメ科は3日後の19日に、イネ科は7日後の23日に発芽が見られた。

初期生育については、重放牧区は概ね良好な生育を示したが、刈払い区及び軽放牧区については前植生の残存の影響により生育が阻害され、葉幅も狭く軟弱な生育相を示した。ペレットの形状による相違についてはマクロペレットから出芽した牧草は茎葉の発育が良好であった(表21)。

表21 生育状況
処理 ペレット
の種類

草 丈(cm) 密度(m2当たり本数)
OG TF WC OG TF WC
刈払 S・P 5 36.1 30.1 10.2 147.2 60.8 166.4 2


S・P 4 32.5 39.1 12.7 332.8 172.8 236.8 3
M・P(B) 5 30.8 30.5 12.3 236.8 361.6 236.8 3
M・P(CDU) 5 43.8 30.6 13.9 332.8 35.2 326.4 3


S・P 7 36.2 29.5 13.0 464.0 147.2 297.6 4
M・P(B) 8 30.2 27.9 13.0 256.0 240.0 412.8 5
M・P(CDU) 8 36.7 36.3 18.8 307.2 201.6 312.8 6
注) 1.調査月日
発芽平成2年 9月 7日
草生密度及び草勢  〃  10月31日
2.草勢は「牧草、飼料作物系統適応性検定試験実施要領(H2.3.14改案)」による。(以下も同じ)
1(不良)〜9(良)


c. 平成3年度(播種翌年)における牧草の生育及び収量等

播種翌年の放牧開始時における牧草は、葉色も淡く、葉の先端が枯死し始めており、肥切れの様相を呈していた。

平成3年度(播種翌年)における牧草等の収量については表22に示したが、牧草収量については、刈払区( 2,430kg/10a)<軽放牧処理( 2,740kg〜 2,880kg/10a)<重放牧処理( 3,810kg〜 4,830kg/10a)の関係が見られた。収量全体に占める牧草の割合も同様な傾向を示し、4回の刈取り量の全体では刈払区(61.1%)<軽放牧区(69.0〜75.5%)<重放牧区(88.8〜93.9%)となった。

野草収量においては牧草収量とは逆に重放牧処理<軽放牧処理<刈払区の関係が見られ、雑草抑制のための放牧効果、特に重放牧の有効性が認められた。

ペレットの種類による生産量の違いについては、重放牧処理ではM・P(CDU)>S・P>M・P(B)の関係が見られたが、軽放牧処理ではペレットの種類による差は認められなかった。また産草量全体(牧草+野草)に占める牧草の割合は、重放牧処理がM・P(B)>M・P(CDU)>S・P、軽放牧処理がM・P(CDU)>M・P(B)>S・P(M・P(B)とS・Pは僅差)となり、いずれもマクロペレットがシードペレットを上回る割合を示した。

なお、播種後の降雨によりペレットが溶解してしまったことから、ペレットの種類による違いはこの調査結果のみで判断することは困難と思われる。

表22 平成3年における収量調査結果

ペレット
の種類
草種 生草収量(kg/10a) 構成
割合
(%)
1番刈
(5/28)
2番刈
(6/25)
3番刈
(7/31)
4番刈
(9/12)
合 計


S・P 牧草
野草
350
350
700
650
400
1,050
570
400
970
860
400
1,260
2,430
1,550
3,980
61.1
38.9



S・P 牧草
野草
160
300
460
720
400
1,120
900
380
1,280
960
150
1,110
2,740
1,230
3,970
69.0
31.0
M・P
(B)
牧草
野草
380
520
900
600
400
1,000
780
200
980
1,100
100
1,200
2,860
1,220
4,080
70.1
29.9
M・P
(CDU)
牧草
野草
240
310
550
650
380
1,030
850
230
1,080
1,120
10
1,130
2,860
930
3,790
75.5
24.5



S・P 牧草
野草
690
280
970
1,250
160
1,410
1,250
100
1,350
1,150
5
1,155
4,340
545
4,885
88.8
11.2
M・P
(B)
牧草
野草
540
100
640
1,000
28
1,028
1,200
120
1,320
1,070
0
1,070
3,810
248
4,058
93.9
6.1
M・P
(CDU)
牧草
野草
650
90
740
1,180
110
1,290
1,400
160
1,560
1,600
0
1,600
4,830
360
5,190
93.1
6.9


d. 平成4年度(播種翌翌年)における牧草の生育及び収量等

平成4年度においては前年における施肥の効果もあり、前年において見られた初期の生育不良は見られなかった。

基幹草種であるオーチャードグラスの草丈は1番刈の時点においては重放牧処理が刈払い及び軽放牧処理よりも高かったが、2番刈以降は明確な違いは見いだしえなかった(表23)。

牧草収量においてはシードペレットでは重放牧処理が刈払い区及び軽放牧処理を上回ったが、マクロペレットでは逆に軽放牧処理によるものが重放牧処理よりも多くの収量を得た(表24)。

表23 平成4年度における草丈調査結果 (単位:cm)
処理 ペレット
の種類
1番刈(5/29) 2番刈(7/30) 3番刈(9/29)
OG TF WC OG TF WC OG TF WC
刈払 S・P 83.8 67.8 25.1 105.9 105.9 30.4 50.6 45.5 18.2


S・P 30.6 25.6 9.1 111.0 99.0 39.9 69.1 62.2 29.3
M・P(B) 73.1 58.4 28.3 116.6 113.9 34.1 55.5 58.2 23.3
M・P(CDU) 74.2 59.8 58.8 121.4 126.1 44.3 62.8 54.6 22.6


S・P 77.4 62.2 24.4 118.0 109.2 44.6 67.8 53.3 21.6
M・P(B) 105.3 69.5 47.9 119.0 119.3 37.4 62.8 33.7 21.0
M・P(CDU) 99.7 70.1 59.6 107.2 118.7 44.8 62.6 57.2 13.7


表24 平成4年における収量調査結果
処理 ペレット
の種類
草種 生草収量(kg/10a) 構成
割合
(%)
1番刈
(5/29)
2番刈
(7/30)
3番刈
(9/29)
合 計


S・P 牧草
野草
640
380
1,020
410
440
850
1,060
480
1,540
2,210
1,300
3,410
61.9
38.1



S・P 牧草
野草
922
310
1,232
595
375
970
700
510
1,210
2,217
1,195
3,412
65.0
35.0
M・P
(B)
牧草
野草
1,990
190
2,180
620
460
1,080
870
350
1,220
3,480
1,000
4,480
77.7
22.3
M・P
(CDU)
牧草
野草
2,210
100
2,310
720
435
1,155
1,140
440
1,580
4,070
975
5,045
80.7
19.3



S・P 牧草
野草
1,830
50
1,880
708
350
1,058
1,460
450
1,910
3,998
850
4,848
82.5
17.5
M・P
(B)
牧草
野草
1,200
0
1,200
610
265
875
730
480
1,210
2,540
745
3,285
77.3
22.7
M・P
(CDU)
牧草
野草
1,925
50
1,975
760
493
1,253
800
140
940
3,485
683
4,168
83.6
16.4


(3)平成3年播種調査の概要及び結果

1)調査圃場の区分
a. 区分の概要

平成3年度に開始した調査では適正播種量を調査する目的とした。このためペレットはシードペレット1種類とし、これの50kg/10a区と75kg/10a区を、それぞれ重放牧区と軽放牧区とに設けた。これにより4調査区が設定されるが、それぞれ1調査区当たり面積は20aとした。

シードペレットについては、前年の調査に用いたものと同じ製法のものとした。

b. 放牧による前植生処理

放牧による前植生処理は播種に先立ち6月及び7月の2回実施し、10a当たりのべ放牧頭数は、軽放牧処理においては25頭、重放牧処理においては50頭とした。なお、これによる裸地率は軽放牧処理で20%、重放牧処理では40〜50%であった(表25)。

表25 平成3年放牧実施表(前植生処理)
前植生
処理
播種量
(kg/10
面積
(a)
放牧期間 放牧日数
(日)
頭数
(頭)
10a当
頭数
裸地
率%
軽放牧 75 20 6/17〜6/20 3 5 10 25 20
7/17〜7/19 2
50 20 6/20〜6/23 3 5 10 25 20
7/19〜7/21 2
重放牧 75 20 6/ 5〜6/11 6 10 10 50 50
7/ 9〜7/13 4
50 20 6/11〜6/17 6 10 10 50 40
7/13〜7/17 4
注.放牧に用いた家畜は交雑種(黒毛和種×ホルスタイン)雌牛(平均
体重約550kg)である。


2)播種

播種は平成3年8月22日に行った。用いた種子はこれまでの調査と同様オーチャードグラス(アキミドリ)、トールフェスク(フォーン)、シロクローバ(フィア)とした。

播種作業はシードペレットは1m2当たり75個(10a当たり 75kgに相当)、及び50個(10a当たり 50kgに相当)を基準に散播した。播種に要した延べ所要時間は75kg/10aとした調査区が1区画20a当たり100分、50/10aとした調査区では同じく60人であった(表26)。

表26 平成3年播種の概要
前植生処理 ペレット
の種類
面積
(a)
播種量 (kg) 播種所要
時間(分)
10a当 全 量
軽放牧 S・P 20 75 150 100
S・P 20 50 100 60
重放牧 S・P 20 75 150 100
S・P 20 50 100 60

注. 所要時間は延べ時間(人数×時間(分))である。


3)草地の管理
a. 管理放牧

播種の翌年(平成4年)において、6月下旬、8月下旬〜9月中旬、10月中旬〜11月中旬のうち2〜3回、重放牧区ではのべ12〜14日、軽放牧区ではのべ8日の放牧を行った(表27)。放牧家畜としては黒毛和種及び交雑種(乳用牛と肉用牛を交配したもの)を用いた。10a当たり年間のべ放牧頭数は、重放牧区では44.8〜46.5頭、軽放牧区においては20.8〜26.5頭とした。なお軽放牧・75kg/10a施用区は草量が不足であったため、この区のみ第1回目(6月下旬)放牧は行わず放牧回数は2回とした。

表27 平成4年度放牧実施表
前植生
処理
ペレットの
種類と量
面積
(a)
放牧期間及び日数 家畜の種類 放牧
頭数
放牧延頭数
頭数 /10a
重放牧 S・P
(75kg/10a)
20 6/19〜 6/24 6 黒毛和種
交雑種
7
1
89.5 44.8
8/27〜8/29 3 黒毛和種
交雑種
7
1
11/13〜11/17 5 黒毛和種
交雑種
3
0.5
S・P
(50kg/10a)
20 6/27〜 7/ 2 6 黒毛和種
交雑種
7
1
93 46.5
9/11〜9/13 3 黒毛和種
交雑種
7
1
10/19〜10/21 3 黒毛和種
交雑種
6
1
軽放牧 S・P
(75kg/10a)
20 6/25〜6/26 2 黒毛和種
交雑種
7
1
53 26.5
9/14〜 9/17 4 黒毛和種
交雑種
7
1
11/17〜11/18 2 黒毛和種
交雑種
2
0.5
S・P
(50kg/10a)
20 8/24〜18/26 3 黒毛和種
交雑種
7
1
41.5 20.8
10/13〜10/17 5 黒毛和種
交雑種
3
0.5


b. 追肥

追肥は第1回放牧の後(1調査区は草量不足のため放牧は行わなかったが)に全区実施した(表28)。なお、第2回目以降の放牧後は草量も十分あると認められたため、追肥は行わなかった。

表28 平成4年の施肥概要
施 肥 月 日 施肥成分量(kg/10a) 備 考
N P2O5 K2O
平成4年 7月 6日(第1回放牧後) 8 4 4 調査ほ場全調査区施用


4)調査結果
a. 発芽及び初期生育

播種は8月22日に実施した。その後7日間は降雨がなかったが、8月29日の降雨と共に溶解した。しかし種子はペレット溶解後も生存し、播種後10日目の9月1日頃から発芽が見られ、発芽期は9月10日であった。

発芽は良好であったが、9月〜10月は秋雨前線の停滞が続き多雨寡照で生育が悪く、加えて台風5回の強風雨に見舞われ、発芽後の牧草が流されたため定着数は少なかった(表29)。

表29 平成3年生育調査
処 理 ペレット
の種類
発芽
良否
草 丈 (cm) 密度(m2当本数) 定着時
草勢
OG TF WC OG TF WC
軽放牧 S・P
75kg/10a
5 11. 15. 6.8 128 64 48 1
S・P
50kg/10a
5 7.6 6.6 4.0 120 64 8 1
重放牧 S・P
75kg/10a
7 15. 18. 3.6 184 96 80 2
S・P
50kg/10a
6 19. 6.8 3.6 88 64 16 1
注) 1.調査月日
発芽の良否 9月20日
草生密度及び草勢11月 1日
2.草勢: 1(不良)〜9(良)


b. 平成4年度(播種翌年)における牧草の生育及び収量等

越冬後の生育状況については前植生に抑圧され、牧草個体は軟弱な生育であり、2年度播種の調査区は5月上旬より順調な生育を示したのと対照的であった。

放牧処理による比較では、3年度の調査結果では、重放牧区が軽放牧区の産草量を著しく上回っていたのに対し、4年度の調査では産草量、草丈、草種別収量ともその傾向は見られなかった。

また、75kg/10a区、50kg/10a区共に牧草の定着が思わしくなく、春以降、ササを中心とした野草類に被陰され、産草量、草丈とも非常に悪い結果となった。草種別収量でも野草類が4〜9割を占める結果となった(表30、31)。

表30 平成4年度における草丈調査結果 (単位:cm)
処理 ペレット
の種類
1回目(5/29) 2回目(7/30) 3回目(9/29)
OG TF WC OG TF WC OG TF WC


S・P
(75kg/10a)
45.6 37.8 11.3 54.1 87.3 14.9 35.4 25.8 8.9
S・P
(50kg/10a)
43.8 33.8 12.8 71.2 79.9 11.1 38.2 44.4 11.0


S・P
(75kg/10a)
85.5 65.0 29.8 103.4 83.1 18.3 43.6 38.1 13.7
S・P
(50kg/10a)
40.1 25.6 9.1 56.0 48.1 9.9 40.4 21.8 8.5

表31 平成4年における収量調査結果
処理 ペレット
の種類
草種 生草収量(kg/10a) 構成
割合
(%)
1回目
(5/29)
2回目
(7/30)
3回目
(9/29)
合計


S・P
(75kg/10a)
牧草
野草
170
280
450
145
835
980
110
530
640
425
1,645
2,070
20.5
79.5
S・P
(50kg/10a)
牧草
野草
1,610
40
1,650
40
750
790
100
420
520
1,750
1,210
2,960
59.1
40.9


S・P
(75kg/10a)
牧草
野草
8
405
413
65
690
755
170
410
580
243
1,505
1,748
13.9
86.1
S・P
(50kg/10a)
牧草
野草
10
305
315
210
305
515
135
510
645
355
1,120
1,475
24.1
75.9



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