for Nov. 14, 1996


  1. Stephen Stills
    Stephen Stills
    (Atlantic)
    Stepen Stills Stephen Stills
    (1970)
    
    
    Stephen Stills 2
    Stephen Stills 2 (1971)
     ファーストと同じ手触り。ちょっと楽曲的に落ちるかもしんないけど、これもいけます。物憂い表情で何かを見つめるジャケットもいかしてました。今じゃハギワラ並みのでぶでぶですが。
    
    
    Manassas
    Stephen Stills/Manassas (1972)
     クリス・ヒルマンとタッグを組んだマナサスの登場には胸が躍ったぜっ。いきなり2枚組でデビューしたってのもかっちょよかった。ジョー・ララのパーカッションがモノを言ったか、ラテン感覚がさらに強調されて、でもアル・パーキンスのペダル・スティールなんかも鳴り響いて、と思うとクリス・ヒルマンはお得意のブルーグラス感覚を全開にしているし。なんとも不思議な融合音楽に仕上がっている。
    
    
    Down The Road
    Down The Road (1973)
     マナサス名義でのセカンド・アルバム。A面3曲目に入ってた「Pensamiento」ってラテン・ロックがごきげんに好きでした。
     最近、ノージが佐野元春&インターナショナル・ホーボー・キング・バンドのみなさんのお世話になる機会がなにかと多くて(笑)。

     そんなこんなで、バンドのみなさんとハギワラ家との間でのパワープレイ・ミュージックの奇妙なシンクロニシティが起こっちゃってるわけです。ギター担当の佐橋さんなんかも、うれしいことにぼくの前回のトップ5見て、眠ってたフライング・ブリトー・ブラザーズへの愛が再燃しちゃったらしいし(佐橋さんはちゃんと“フライング・バリット・ブラザーズ”って発音したそうです。日本人カントリー・ロック・ファンはこうでなくっちゃね)。

     でもって、ぼくもインターナショナル・ホーボー・キング・バンドのみなさんが楽屋で聞いているとレポートされている音楽に影響されちゃってるわけです。ノージのレポートを眺めていると、なんと彼らの楽屋ではマナサスが流れているらしいじゃありませんか。すっかりぼくの中に眠ってたスティヴン・スティルスへの愛が再燃しました。

     そういや、スティヴン・スティルスも、かつて日本では“ステファン・スティルス”とか言われてたなぁ。

     思えば、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングが大人気を博した1970年ごろ。世の中はニール・ヤング派とスティヴン・スティルス派に分かれてたものです。グラハム・ナッシュ派とかデヴィッド・クロスビー派ももちろんいたけど、それは、まあ、ジョージ・ハリソン派みたいなものとしてですね。

     ぼくは断然スティルスだったのだ。あの独特のしゃがれ声と、バカテクのギターとが大好きだった。フォークのような、カントリーのような、でもファンキー。そんな持ち味にはぞっこんだった。

     1970年という年は盛り上がったよー。69年にクロスビー・スティルス&ナッシュが結成されてデビュー・アルバムをリリース。これがわりとコンパクトにまとまったポップ・アルバムだったわけだけど。そこにスティルスのかつての同僚ニール・ヤングが加わって、70年の確か春ごろ、あのロック・ヒストリーに残る名盤『デ・ジャヴ』をリリース。緊張感みなぎる4人の(というか、主にスティルスとヤングの)つばぜり合いが大いに話題になって。

     で、夏過ぎ、ニール・ヤングのソロ・アルバム『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』が出て。これがまたとんでもなく味わい深い一枚で。やー、ニール・ヤングはすごいねー、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングがすごいのもこの人のおかげだねー……的な風評が広まって。

     しっかしー、同年暮れ、追撃するようにしてリリースされたのがスティルスの初ソロ・アルバム『Stephen Stills』だった。当時あんまり輸入盤とか売ってるお店がなかったもんだから、わざわざ銀座のヤマハまで行って買ったんだよなぁ。中学生のころだったっけ。高かったなぁ。空輸盤だと3800円くらいしたんじゃなかったかなぁ。くそーっ。

     でも、内容はばっちりでした。スティルスのファンキーな面がばっちりフィーチャーされていて。のちにアイズレー・ブラザーズにカヴァーされた「Love The One You're With」とか、ドラムレスなのに、アコースティック・ギターとパーカッションで強力にドライヴ感たっぷりの世界を作り上げていて。さらにリタ・クーリッジやジョン・セバスチャンを含むコーラスとハモンド・オルガンがゴスペルにも近い荘厳な盛り上がりを演出していて。最高。ジミ・ヘン参加の「Old Times Good Times」のスペーシーな感じとか、エリック・クラプトン参加の「Go Back Home」のブルース感覚、アリフ・マーディンのアレンジによる「To A Flame」の美しさ、ブッカー・T・ジョーンズ参加の「Cherokee」のジャジーな手触り、そしてパーティのあとかなんかに酔っぱらい状態でひとりで録音したという「Black Queen」のでろでろのかっちょよさ、全部サイコーに好きだった。

     ニール・ヤングの持つ深々とした滋味みたいなやつはあんまりないけど。でも、このフォーク/カントリーとファンキー/ソウルフルな感覚との間を行き来するムードって、要するに今で言うところの“フォーキー”ってやつだしね。今の時代に聞くと、さらにまたスティルスさんの才能の絶頂を正当な形で堪能できるような気がする。

     ただ、この人の場合、ヤングさんと違って才能の絶頂を長持ちさせられなかったね。そこが悲しいところ。ぼくにとってのスティルスさんは、だから、この初ソロ・アルバムから、翌年のセカンド、そしてクリス・ヒルマンらと結成したマナサスを率いて活動していた73年ごろまでのスティルスさんだ。それ以降はねー、クロスビー・スティルス&ナッシュとしての活動も含めて、すでに“余生”みたいな感じかな。
    
    
    
  2. Ten Easy Pieces
    Jimmy Webb
    (Guardian)
    Ten Easy Pieces Ten Easy Pieces
    (1996)
    
    
     このアルバムについては、以前レビュー・ページのほうでも取り上げてます。とりあえずの内容はそちらを参照してください。

     そのレビュー・ページでも書いたことだけれど、ジミー・ウェブって人はちょうどバート・バカラックとかが注目されはじめたのと同じ、60年代後半に一気に名をあげて、だいたい67年から69年くらいまで、この3年間に大量の傑作曲を残している。ただ、バカラックとかと違って、根っからの職業ソングライターじゃなかったのだろう。持ち味はもっとシンガー・ソングライターに近いものだったわけで。おかげで、自らソロ・シンガーとしての活動を活発に展開するようになった70年代にはすっかりヒット曲も減ってしまったのだけれど。

     でも、今回のアルバムはピアノの弾き語りが中心。かつて他シンガーへ提供した名曲を自ら歌っているのだけれど、そうしたシンガー・ソングライター的な持ち味がいっそう強調されて、まじ、味わい深いものに仕上がっている。曲自体の持つ本当の表情が今はじめて明らかになったようなものもあって。泣けます。

     といっても、若いリスナーになると、むしろかつてのヒット・ヴァージョンを聞いたことがないなんて人もいるようだし。とりあえずこのアルバムをもう一歩踏み込んだところで楽しむために、オリジナル・ヒット・ヴァージョンの入ったアルバムも紹介しておきますね。
    
    

    Jim Webb Sings Jim Webb
    (Columbia) 1968
     シンガーとしてのジミーの初アルバム。参考出品です。素朴でよいス。

    Archive 1970 To 1977
    (Warner) 1993
     70年にワーナー/リプリーズに移籍してからのアルバム群からセレクトされたベスト盤。今回の新作に収められている「The Highwayman」と「The Moon's A Harsh Mistress」のオリジナル・ヴァージョンはここで聞ける。

    By The Time I Get To Phoenix
    Glen Campbell
    (Capitol) 1967
     代表作「恋はフェニックス」を聞くなら、これ。

    The Webb Sessions 1968-1969
    Richard Harris
    (Raven) 1995
     英国俳優、リチャード・ハリスをジミーがプロデュースしたセッションを完全収録したベストCD。新作の中の「Didn't We」「MacArthur Park」はここで聞ける。

    Brooklyn Bridge
    Brooklyn Bridge
    (Buddah) 1968
     ジョニー・マエストロをフィーチャーしたバンドのデビュー盤。「Worst That Could Happen」を収録。

    Garfunkel
    Art Garfunkel
    (Columbia) 1988
     60年代、ジミーにとって最高のパートナー・シンガーはグレン・キャンベルだったわけですが。70年代以降、その座についたのがアート・ガーファンクル。これは彼のベスト盤。新作の中の「All I Know」のオリジナル・ヴァージョンが入ってます。
    
    
    
  3. Being There
    Wilco
    (Reprise)

     これはピック・オヴ・ザ・ウィークのほうで取り上げました。そっちを見てください。2枚組なので、めんどくさいからMDにダダーッと入れて、パワープレイしてます。74分のMDだと、2枚目の最後の曲のケツ数十秒だけ入らない感じ。てことは、CDも同じだけ入るわけで。この数十秒のおかげで2枚組になっちゃったのかな。

     まあ、値段が安いのでいいです。日本盤は出るのかな。日本盤だと通常の2枚組の値段になっちゃったりするかな。だとしたら、罪作りな数十秒ですなぁ。
    
    
    
  4. Burrito Deluxe
    Flying Burrito Brothers
    (A&M)

     相変わらずぼくの中でのグラム・パーソンズ・ブームは続いています。ベックのコンサート見てから、ますます強くなったかも。そんなわけで、詳しくは前回のトップ5を参照してください。
    
    
    
  5. The Carnegie Hall Concert
    Carole King
    (Ode/Epic/Legacy)

     これまたピック・オヴ・ザ・ウィークで取り上げてます。そちらを見てね。何度聞いてもごきげんな一枚だなぁ。

     キャロル・キングはもともとブルックリンの出身。だけど、時代の流れの中で60年代後半に西海岸に移り住んで。そこで作った『タペストリー』が大当たり。でもって、そのアルバムがまさに全米1位に輝こうとしているその瞬間、故郷のニューヨークで行なわれたコンサートなわけで。こりゃ感動的だよね。

     間もなく日本盤も出ます。ライナーはぼくが書かせてもらいました。もちろん当夜の様子を詳しく綴った英文ライナーの訳もつきます。