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内科医が語る

ベンゾジアゼピンご難の時代

「依存症」と「依存」の大きな違いを混同していることで、現在日本の医療は混乱しています。やり玉にがっているのがベンゾジアゼピン系のお薬、デパス・リーゼ・ソラナックスといった抗不安薬やレンドルミン・ユーロジン・ハルシオン・サイレース等々の眠剤で、これまで精神科のみならず内科や他の科でもバンバン出していたお薬が、突然「依存が恐ろしいからだめ!」と制限がかけられてしまいました。

  「依存症」は疾患名です。アルコール依存症や覚醒剤依存症という、はまり込んだら抜け出すのは至難の業ですが、それらが怖いのは離脱症状が強くてコントロール困難だからで、「依存症」は放置できない治療を要する疾患名です。一方「依存」とは文字通りそれに依存していて、なくなったらたちまち生活が困窮してしまうこと、です。

  ベンゾジアゼピンに依存している方は多いかもしれないけれど、ベンゾジアゼピン依存症の方はそれほど多くありません。アルコールやニコチンの依存症よりは頻度も少ないし重症度も高くないし、確かに放置はできないけれどきちんとした精神科医師が治療すれば完治することを充分期待できます。(詳しくは「デパスというお薬」で)

  
  では、「依存」はどうでしょう。私(内科医)は、コーヒーが好きです。好きというより、朝コーヒーを飲むまでは頭が働かずボーっとしています。ある朝「あなたはコーヒーに依存している。依存は恐ろしいから飲んだらだめ」と禁止されたら、困ります。なくても命に関わらないしれないけれど、少なくとも当分の間は仕事が滞ると思います。 コーヒーにはカフェインが含まれており、それが身体に良くない報告はあります。でも極端でなければ、コーヒーに依存することはそんなに悪いことではないのが現代社会の常識です。頑なに「依存はだめ」と言われるのは理不尽です。


  では、やり玉に挙がってしまったベンゾジアゼピン、例えば眠剤の場合はどうでしょう?


  よく「眠剤を飲まないと眠れない身体になってしまう」という不安を訴える方がいますが、そもそも眠れないから眠剤を飲み始めるのであって、飲むのを止めたら元の眠れない状態に戻るだけです。別に眠剤のせいで眠れない身体になるわけではありません。

  昔からアルコールを眠るために使う、いわゆる寝酒という風習がありますが、内科医としては、不眠は様々な内科疾患の危険因子だけどアルコールを使って飲むよりは不眠の方がマシ、という見解があります。だから身体への危険度としては、  「アルコールで眠る」>「不眠」>「眠剤で眠る」>「眠剤なしで眠る」の順です。

眠剤なしで眠れるのが一番良いに決まっています。でも不眠の引き金となる生活習慣を変えるなど、原因を突き止め排除しない限り、不眠が治癒、つまり治るわけではありません。そうなると、眠剤を使えず不眠になったり、もっと怖いのはアルコールに頼る恐れがあります。単純にベンゾジアゼピンを使ってはいけない、は依存が悪いどころではない危険を秘めています。



  ベンゾジアゼピンはとても良く効く薬です。それに頼ってしまい、不眠を引き起こす生活習慣を放置したり、不安・不穏を引き起こす原因疾患を見逃したりすることは慎むべきです。ですから、ベンゾジアゼピンはあくまでも一時しのぎの手段して捉えて、根本的解決を探る必要はあります。

  どんな薬も利点と欠点があります。効用と副作用は表裏一体です。   




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