ギリシア 5
エーゲ海の真珠ミコノス島
風が凪ぎますように。夕べみんなで祈ったのに、朝になっても強い風は止んでいなかった。今日は3泊したサントリーニ島に別れを告げて、高速船で3時間かけてミコノス島に渡ることになっていた。

しかしこの風で船は全て欠航だという。空路ももちろん絶望的だという。朝から荷物と一緒にホテルのロビーで待機しているみんなに重い空気が広がる。しかしベテラン添乗員のKさんの正念場はこんな時に発揮された。あちこち電話をかけて折衝を続け、45人乗りのオリンピック航空機の座席を確保してくれた。

ソレッとばかりにバスに荷物を積み込み、空港に駆けつける。小さな空港は欠航で外まで人が溢れていた。
その間隙を縫って正午発のミコノス行きに乗り込んだときは心底ホッとした。
エーゲ海の真珠
エーゲ海の真珠と形容されるミコノスは美しい町だった。旅をしていると、一瞬のうちに魅了される町というのが時にある。海の色も鮮やかでコバルトグリーンに近くサントリーニの重い海とははっきり違う。

空港から迎えのバスに乗って、荷物を降ろすためにホテルに直行する。
ミコノスタウンと呼ばれる中心街から海沿いにまっすぐ伸びた道。町からは、歩いても15分ほどでホテルに着く。<ホテル、カボタゴ>、傾斜のきつい丘の上まで、1ブロックずつの白い張り出しの部屋が続く。

部屋番号を頼っては、たどり着けない迷路のような客室。エレベーターに乗るのにも、一旦戸外に出て、傾斜地の階段を降りていく。一筋縄では行かない。何度も迷子になった。ゆったりとした空間に白いテーブルと椅子が置かれた客室のテラス。
眼下は180度紺碧の海。このホテルは食事もおいしかった。Fさんと夫の誕生日を祝って、みなさんから<ハッピーバースデー>の合唱とケーキのお祝いがあった。思いがけないプレゼントで夫は感激していた。そういえば慌しさで失念していたが、旅の初日が夫の誕生日だった。

フランスやイギリスの豪華客船が停泊している。ときたま低い警笛が聞こえると、メランコリックな気分になる。しかし魅力的なミコノス島に来て、感傷に浸っているわけには行かない。
リュックサックにスケッチ道具を詰めてミコノスタウンへ行く。海から山に向かって、迷路のように連なる小路。清潔な白い家にアクセントのように壷が置いてある。入り口の階段や門の横手に茶色や白の壷が・・・おっとっと・・これは壷のそばに寝ている猫だった。わんちゃんものったりと寝そべって惰眠をむさぼっている。
急勾配の坂道には、真っ赤なブーゲンビリアが白い塀を覆い尽くしている。
山に登るほど普通の人々の暮らしがあり、海に近づくほど、観光客と土産物屋さんが多くなる。