ギリシア 10
エーゲ海一日ミニ・クルーズ
 5月16日 今日はエーゲ海の島々に立ち寄りながら一日ミニクルーズだ。サロニコス湾に浮かぶエギナ島、ポロス島、イドラ島に立ち寄る。船内にはサロンやレストラン、プールやブティック、銀行まである。絵を売るコーナーもあった。

 エギナ島に着くと、チャーターしていたバスで山頂にあるアフェア神殿に向かう。緑の木立に覆われた美しい島だ。バスはピスタチオの畑を駆け抜け、ギリシアに来てから見かけなかった茶色の教会や農家を見て山頂へ向けて走る。
 突然、赤土と神殿の柱が現れる。バスがそこで止まる。
円柱は大理石ではなく、この島で産出する石灰岩だ。それが一枚岩でつくられているとのガイドさんの説明に驚く。
 紀元前、5,6世紀に建てられたアルカイック時代後期のものだという。

 神殿の下の売店でこの島の名産ピスタチオを買う。夫は素朴な壷を買ってきた。次に立ち寄ったポロス島は童話の国のよううに小さな美しい島。 緑豊かな島の直径は10キロ。きれいな島なのに滞在時間が一番短い。乗船時間が迫ってくるのでスケッチは完成しない。お土産やさんを横目で見ながら船に急ぐ。

 クルーズで立ち寄る最後の島。船がイドラ島に近ずく。その景観に乗客たちの歓声が上がる。 下船時の混雑を避けてデッキで夫とスケッチをする。 もう大方下船も済んだ頃かと出口に行く。なんと船は移動のために港を離れる寸前ではないか。  危うくこの美しい島に降り立てないところだった。

 赤い屋根に白い家が緑の木立に囲まれて山の上まで立ち並んでいる。 海運業で財を成した富豪の邸宅や別荘。他の島とは一味違う洗練された、土産物屋が目立つ。白い教会も美しい。
 1829年、ギリシアは独立戦争を経験した。そのとき私財を投げ出し、商船を武装させて勇敢に戦ったのがこのイドラ島の人々だった。 誇らしげに船内放送が繰り返していたのが印象的だった。 そういえば昨日バスで回ったアテネのシンタグマ広場(憲法広場)はこのときの独立戦争を記念する象徴だった。 しかし20世紀に入っても、ファシスト、ムッソリーニが占領したり内戦があったりした。

 ギリシア全土が今日のような完全な平和を取り戻したのは1952年に入ってからのこと。<日曜は駄目よ>の映画で知られる女優メリナ・メルク−リが亡命先から戻って、華々しく文化大臣として活躍したのを私の年代は記憶している。
 覚悟していたが、一日クルーズで3つの島に上陸するのはとてもあわただしい。しかしエーゲ海の色は見飽きることがなかった。水というよりも、もっと濃密な深い色合いを持った海はくっきりと眼に焼きついた。航海中は船内の人々をスケッチして飽きることがなかった。