皇海山  庚申山から鋸岳(左)と皇海山

前年に足尾の庚申山を登った折り、松木川の源頭越しに眺めた皇海山は十分な存在感で見るものに迫ってきた。そのときはぐずついた空模様だったので時間のかかる皇海山は割愛してしまい、改めて翌年に憧憬の念をもって望んだのだった。しかし昔はどうだか知らないが今のこの山は「静かな山」とはとても思えない。直下の林道からお手軽に上がって来る人々で皇海本峰は丹沢か奥多摩なみの盛況だった。
加えて、一般のガイドにもあるがこの皇海山は眺めが悪く、鋸十一峰の稜線で日光連山上州武尊のパノラマを見てきた目には眺望という点ではまるで魅力に乏しい。さらに私の登った日は関東の下界で軒並み39度を記録した日で、当然山の上も暑く、それでも鋸山までは谷から吹き上げる風にいくらか涼を感じられたのだが、これが皇海山の登りにかかったとたん風通しが格段に悪くなった。
うるさい皇海山に比べて鋸十一峰と六林班峠は静かだった。だいたい天気のいい土日だというのに庚申山荘に泊まったのは私を含めて七人だけで、うち五人が単独行者、おかげで山荘一階にある広い二部屋のうち片方を一人で使うというぜいたくをさせてもらった。 結論から言うと、静かな山を期待する方にとっては現在の皇海山は眺める山であって登る山ではないと思う。秋、紅葉が綺麗なときに皇海山を眺めつつ鋸十一峰を越えてそのまま六林班峠に向かうプランがよいのではなかろうか。
従来の登山口である銀山平に建つ国民宿舎「かじか荘」には露天風呂があり、対岸の景色を見ながら入浴可能だ。露天風呂は浴槽、浴場ともやや広めである。
1997/7/5-6

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