
革に刻印などで模様を付けるときには、革の「可塑性」が高い性質を利用しています。この場合は、水で湿らせた状態で形付けた物が、乾燥後もそのままの形を留める性質だと思っていただければ良いと思います。
その「可塑性」を利用して、模様を付けるだけではなく、外形を簡単に成形できるのは、クラフト用の革のおもしろい性質の一つです。その簡単な例を見てみましょう。
花の形を作ってみます。最初に、左のように部品を切り出します。クラフト用のタンローなどの革で、厚みは0.8〜1.0ミリ程度が扱いやすいのではないかと思います。
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切り出した革に、スポンジで水気を与えます。少なからず多すぎずが良いので、成形しやすい水分量を経験の中で覚えてください。水は革の表と裏の両面から少しずつ与えると、調整しやすいかもしれません。
がくになる部分は、細く切ってあるのですが、一本一本をひねってみました。簡単に形が付きます。
花びらは、手のひらに載せて、裏からスプーン状のモデラなどで押し出し、そのあと、表を見ながら形を指先で整えました。手の平ではなく、作業のしやすい専用のスポンジなども販売されています。
花の芯に近い花びらは、コロッと丸めてみました。また、ちょっと物足りなかったので、芯になる部品を追加して作りました。画像中央付近の小さな部品です。
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準備のできた部品を、重ねて形にしたのが、左の画像です。中央には、水色の飾り金具を付けましたが、ちょっと目立たなかったですね。
コサージュとして使えるように、裏面にはブローチピンを付けています。それぞれの部品の接合には、接着剤や金具を利用していますが、ブローチピンの取り付け法も、形状によっていくつか考えられます。
革の仕上げには、レザーコートを塗っています。細かい切り口などは磨いていませんので、最初の革の切り口のままです。
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同じように作ってみた花の画像です。染色して色付きにすることもできますし、元から色の付いた革で作ることもできます。
手前の花は、葉と組み合わせていますが、この様な構成も自由に行うことができます。
ここでは花を紹介しましたが、造形的には花に限らず、様々な形が可能なのではないかと思います。
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こんどは魚の形のトレーです。魚の形に成形するのが難しいと思われるかもしれませんが、実は簡単です。
魚の形のつもりで革を切りますが、この時に周囲を立ち上げる分だけ大きめに切ります。それから、水で革を湿らせまして、指先でつまんで形を整えていくだけです。
慎重に少しずつ作業を進めていくと、曲面も徐々に形ができてきます。革の繊維を少しずつ動かすつもりで、作業を進めてみてください。
黒っぽく見える線は、革の染料で描いたものですが、マジックなどでもかまいません。後工程の仕上げ剤で不具合がでなければ、着色は何を使っても問題ないと思います。水性の仕上げ剤で滲んでしまうような着色剤は、適していません。
このトレーは床革で作りましたが、仕上げには「光沢レザーフィックス」という仕上げ剤を塗りました。一度塗るだけでもかなりの艶と厚みが出ます。
おそらく、豚の生革や渋革を多用する華やかな技法にも向くように作られた、手軽な水性仕上げ剤だと思われます。値段が、通常の水性仕上げ剤よりも高いので、少々勧めにくいところもあるのですが、効果的に使うと有用な仕上げ剤になると思います。
では、以下に革を湿らせて成形したいくつかのサンプルを紹介します。床革などの利用で、比較的取り組みやすい技法なので、サンプルは少し多めに掲載します。
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四隅をつまむだけで、トレーになります。

葉っぱ型トレーです。
葉脈をレザーコートで防染しておき、乾燥後に緑で染色しました。
レザーコートに水性の染料を混ぜると、防染部分が少しわかりやすくなります。

左が床のままでザラザラしています。
仕上げ剤を塗ると、右のように艶が出て硬くなります。

これは、30センチくらいの直径があります。
抜き型で透かし模様を入れています。

木型で作ると、この様な造型も簡単です。

これも、木型を使っています。
ローケツ染めでひび入れをしています。
防染の手法も様々な可能性があり、手軽な薬品も販売されています。

ひねるだけで、おもしろい表情が出てきます。

これも、革を湿らせて形を整えたものです。
海外土産などにも見られる、小銭入れです。

何かを革でくるむ作業にも、湿らせた成形が役に立ちます。
ちなみにこれは文鎮です。
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木型を使って立体的に成形した部品を使って、各種のケース作りなども広く行われていますが、作業学習では成形に仕立ての部分まで導入すると、作業としてはかなり高度な物になってくるので、サンプルは縫製の含まれない物を中心にしました。
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