夏の音 7/28
気象庁はまだ梅雨明けを発表していませんが、連日の猛暑で実質梅雨明けみたいなもの。虫たちも待ちきれずに出てきています。ぼくの家で聞こえた今年の蝉の初鳴きは、15日にアブラゼミ、20日にミンミンゼミ、25日になんとヒグラシ! さすがにヒグラシは珍しい。しかも朝4時半頃というのは、妙な感じ。やっぱり夕方に鳴いてほしいなあ。でもね、蝉の声が聞こえると、ああ夏やなあと思って、嬉しくなるんですよ。ちょうど5日ずつずらして鳴き始めたというところが何とも律儀です。
Tシャツに ブローチがわりの 油蝉
しかし、そんな風情のある夏の音をかき消す騒音が町に溢れています。そう、参院選の選挙カーの音です。ぼくはふと思うんですよ。怒鳴っていては決して伝えられない言葉があるんだよって。何人の政治家がそれを自覚しているのでしょうか。最大限のボリュームで名前を連呼するだけの候補者にコミュニケーション能力などあるはずがないでしょう。そんな騒音に影響されることなく、明日は投票に行きましょう。
棟方志功の版画 7/22
先日、中学時代の友達に会いに町田へ行って来ました。食事のあと、町田市立国際版画美術館に行きましょうかと誘ってくれたので、喜んで行きました。企画展・常設展とも、いろんな作家の興味深い作品がたくさんありました。企画展は「料治熊太(りょうじくまた)と仲間たち」。ぼくはこの版画家のことは知らなかったのですが、ここで勉強になったのは、この人が棟方志功につながっているということ。
その棟方志功の作品がいくつか展示されていました。「二菩薩釈迦十大弟子」は、黒一色で力強く彫られた菩薩と釈迦の弟子たちの像。テレビや本では見たことがあったけど、実物は初めて。1955年ブラジルのサンパウロ国際美術展版画部門で最高賞、翌56年のベニス・ビエンナーレで世界版画最高賞を獲得した元となった出世作ということです。迫力があって、さすがだなと思いました。
ぼくは作品に近づき、まるで制作をするときの棟方志功のように版画に顔をくっつけて、その刀のあとを惚れ惚れと見つめたのでした。
ディスプレイを買い換えた 7/16
コンピュータのディスプレイ(モニター)を買い換えました。先月末のある日、急に画面のタテヨコの比率がおかしくなって、その場で調整したものの、それ以来不調で、先週などは電源を入れたら、画面全体が赤紫色に染まっていたのです。もう、この世のものとは思えないホラーな画面にぼくはすっかり青ざめてしまい、こりゃあ新しいのを買わないと、そのうち突然プッツンと切れるぞ、そうなったら仕事も何もあったもんじゃない、と思いました。
先月からデジカメやモニターが立て続けにダメになり、わが家が今IT「危機」に陥っています。本当に10年持たないんだなあ。実はプリンターもすでにかなりダメになってきているのを、騙し騙し使っているんですよ。購入はやむを得ないけど、出費が痛い。
しかしながら、金曜日に買ってきた新しいディスプレイは液晶で、これまでのCRTとは違って、後ろスッキリ、表示クッキリ、画面広々で(同じ17インチなのに)、びっくりしています。8年経つとこんなに違うのかと、テクノロジーの進歩に、子どものように目を丸くするのでした。
東京オリンピック招致ロゴ 7/13
先日、2016年東京オリンピック招致のロゴが発表されました。水引をモチーフに作られたデザインで、「人と人を結ぶ、子どもたちと世界を結ぶ、日本と世界を結ぶ、そして我々の願いを結ぶ」という意味だそうです。
ニュースでこれを見たとき、いったい誰が作ったんだろうと興味を持ちました。テレビでも新聞でも教えてくれません(そういうことを知りたがるのは業界の人だけか……)。インターネットで調べると、ベテランのインダストリアル・デザイナー、栄久庵(えくあん)憲司さんとのこと。ちょっと意外でした。若手のグラフィックデザイナーでもいい仕事をする人は結構いるのに、なぜこの人だったのか、そんなことにも興味が湧きました。
でもぼくは個人的にこのデザイン、気に入りました。招致そのものにはそれほど積極的に賛成はしていないけど。さあ、都民や国民の意識は果たしてこれで盛り上がるか?
逃げ水じじぃ 7/12
日ごろ運動不足になりがちなのですが、これでもなるべく歩くようにはしているのです。先週末、光が丘公園をウォーキングしました。
公園に入ってしばらくたったころ、別の道からこれもウォーキングしていると思われる老人がやってきました。歳はおそらく70代、背は高いのですが、ひょこひょこと、今にも倒れそうな歩き方で、姿勢も左肩が下がっていて、バランスがよくない。ちょうどぼくの20mほど前を歩いていたのですが、ぼくはその人を見ながら、そのうち追い越すか、どこかで別れるだろうとぼんやり考えていました。
ところが、その老人はぼくを先導するように、まったく同じコースを歩き続けます。振り向くことなく。しかもいっこうに距離が縮まりません。数百メートルほど進んだところでぼくは急に競争意識が出てきて(変に無理をする)、ペースを上げました。
さらに1kmほど歩き続けると、老人との距離は7、8mくらいまで縮まりました。よし、あとは時間の問題だ、それにしても意外に速いなこの人は、と頭の中ではいろんなことを思いめぐらしていました。しかし、ペタペタと聞こえる足音は、ぼくより速いピッチで、乱れることなく続きます。意外に手強いなと感じながら、ぼくはピッチも歩幅も上げました。
ところが、その老人はぼくが追い上げるのに気づいているのかいないのか、いつの間にかまた差を少しずつ拡げ始めたのです。気がついたら、また10m以上引き離されていました。上り坂になっても、ペースが落ちることはありません。ぼくはすでにすねや太股が痛くなり始めています。まずい、このままでは追いつくことなく公園を出ることになりそうだ、と焦りを覚えたのですが、老人は楽々と歩いています。今にもぶっ倒れそうな前傾姿勢なのに……。いったいどういう顔をしているんだ? できれば追い越して見てみたい。
しかし、その老人の後ろ姿を追いかけ始めてから2km余り、ついに差を縮めることなく、ぼくはコースを外れて家に戻らなくてはいけなくなったのです。まいったな……。ぼくよりずっとタフじゃないか。痛む足でぼくはそのまま自宅までウォーキングを続けました。
きっとあれは、夏の季節に光が丘公園に出没する妖怪、「逃げ水じじぃ」に違いないとぼくは今、思っています。
絵封筒展 7/5
きのう「絵封筒展」を見に行きました(千代田区大手町の逓信総合博物館)。これは楽しかった。封筒の表に絵を描いて、実際に送られたものばかり、絵本作家から子どもたちまでの作品が1000点以上、展示されていました。
封筒の表書きだから、相手の名前・住所が必ずあり、切手も貼ってあります。それをうまく利用して絵にしているところが、この絵封筒の面白さです。実にいろんなアイデアと画材で作られていて、色といい形といい、ワクワクするようなものばかりでした。
絵手紙というものは絵柄も文字も内容もワンパターンで、ぼくは好きじゃないのですが、それに比べて、絵封筒の方は実に自由で、描く楽しさが溢れていました。メール全盛時代だからこそ、こんな手紙は作るのも楽しいし、受け取るのも嬉しいでしょう。
NHK新日曜美術館での紹介を見て、ぜひ行こうと思っていたのですが、期待に十分応えてくれる内容でした。入場料はたったの110円。8日(日)までなので、もしよかったらみなさんもどうぞ。■
明日の記憶 7/3
日曜日に、妻に引きずられて「明日の記憶」を見てしまいました。若年生アルツハイマーの物語で、渡辺謙さんの演技がさすがに光っていました。
力作だなとは思ったのですが、でも、内容としては突っ込みどころがたくさんあって、実際にアルツハイマーの家族を抱えている人が見ると、いろんな箇所で、ここ変だよ、と思うのではないでしょうか。実際とのズレが多いと、本来なら感動するはずの場面でも、リアリティーが出てきません。この種の映画の難しさを感じました。
荻原浩さんの原作は読んでいませんが、去年だったか、この人の『神様からの一言』というのを図書館で借りてきて、十数ページくらいで読むのをやめたことがあります。今ふうのセリフをふんだんに入れて、時代をつかもうとしているのでしょうが、言い回しにしてもギャグにしてもちょっと推測できてしまうような所があり、あまり意外性がない。人物がみんな凡庸になっているような気がするのです。「明日の記憶」も、聞き覚えのあるセリフで構成されているような印象でした。……それがこの作家の特徴と言うことなのかな。
6月の「ごあいさつごあいさつ」
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