夢の詰将棋でもあげていた300手超えの煙がついに実現しました。
本作は煙詰の長手数記録作品(311手)です。
作者「煙詰最長手数記録作
本作は 近藤真一作貧乏煙 看寿賞作、スマホ詰パラNo.12966 Okara作「全駒煙に仕上げて!」 スマホ詰パラ賞2019上半期1位作 を300手超の全駒煙にすることを目標に創作した作品。
近藤さん自身の貧乏煙の自作解説にて
「私以外にも三百手超えの煙詰創作:挑戦者が現れることを切に望みます。」
Okaraさんのミニ煙の自作解説でも
「全駒煙を是非創って貰いたくて敢えて投稿しました。」
との記載があるため、発表する価値はあると判断し、発表に至りました。」
ということで、近藤真一さん、Okaraさんの作品をベースに全駒煙詰として完成させた作品です。
実際には、その前身として斉藤仁士さん「冬の旅」(近代将棋1981年9月、無防備煙145手、早詰)があり、
それをヒントに貧乏煙に仕立てたのが、看寿賞を受賞した近藤真一さんの作品(詰パラ2001年10月、貧乏煙143手)です。
看寿賞受賞作の解説(全詰連HP)
に創作の経緯として
「本作の竜馬追い手順は斎藤仁士氏の無防備煙『冬の旅』(近将S56.9)の余詰筋を検討中に偶然、発見した。」
と書かれています。

近藤さんは、この龍馬追いの回転の中で、馬による連取りが入る余地があることを発見、56龍66馬86玉の形から、対角線上の駒を取ることできるのです。
そこで99と、22との2枚を配置して、サイクルを大幅向上、一挙に200手代に載せました。
記録展示室No.60近藤真一さん(おもちゃ箱2009年8月、貧乏煙217手)で、
結果発表時に吉田京平さんのアドバイスで6手更新、この改良図223手が現在貧乏煙の長手数記録作品になっています。
近藤さんは11や33に駒が置ければ300手超えの可能性があるということで、
「私以外にも三百手超えの煙詰創作:挑戦者が現れることを切に望みます。」 と希望していました。
その声に応えたのがOkaraさんの「全駒煙に仕上げて!」(スマホ詰パラNo.12966 2019.5.14、持駒ありの金なし煙275手、棋譜ファイル)で、
33歩、11とと2枚追加することに成功しました。

そして、この99と33歩22と11とと4枚連取りするのはそのままに全駒煙に仕立て上げ、ついに300手超えの煙を実現したのが西嶋悠太さんの「全駒煙に仕上げた!」です。
本作に至るまでの各氏の功績を池田俊哉さんが解説していただいているので、まずは池田さんの短評、いや長評から。
- 池田俊哉さん:
- 近藤氏の貧乏煙は斉藤仁士氏の「冬の旅」の回転順非限定を二枚の歩(52歩と95歩(中途配置))を置くことで限定、完成した(パラ2001.11)が、
その8年後、22と、99との二枚のと金を配置することで200手越えの作品としている(2009.08おもちゃ箱)
ただ、この改良作の発表時に作者は
「本作は最終完成形とは言えません。
99と、22とのはがしは連取りになっています。
その連取りを拡大する33、11などに玉方の歩が置ける可能性があります。
すると、三百手を超える煙詰が生まれることになります。
(中略)
私以外にも三百手超えの煙詰創作:挑戦者が現れることを切に望みます。」
と書かれているが、16年の時を経てそれが実現したことになる
本図の場合、33歩の追加配置に加え、11と(受方)を置けたことが大きく、その順を成立させる16銀(余詰消し)の配置が素晴らしい。
これらはOkara氏の功績と言えよう
もちろん西嶋氏の功績も大きく、連取り回転順のみを取り上げて発展させたOkara氏案に加えて近藤氏作にあった最下段への回転を追加し、
また中盤から終盤に必要な23桂を打つ序を追加するなど素晴らしい逆算と思う
本作は煙詰初の300手越えとして当然称えられるべきと思うが、完全オリジナルと捉えられるかというと微妙なところなのかもしれない
作者名も「西嶋悠太 with Okara inspired by 近藤真一」あたりとなるのかも...
何はともあれ、素晴らしい記録の達成に称賛を送りたい
では手順を鑑賞していきましょう。
長手数なので、変化紛れの解説はキーポイントにとどめます。
詳しくは棋譜ファイルをご参照ください。
46と、同と、47と、同と、同馬、45玉、46馬、44玉、
45馬、43玉、44歩、32玉、31と、同玉、23桂打、41玉、
52歩成、同玉、43歩成、同玉、44馬、52玉、43馬、62玉、
72と、同玉、83と左上、62玉、73と上、同と、同と、同玉、
64銀、84玉、94金、同馬、同と、同玉、61馬、95玉、
62馬、96玉、85銀、同玉、87香、同金、74角、86玉、
75銀、97玉、86銀打、同金、同銀、同玉、53馬、77玉、
88金、76玉、87金、同玉、65角、77玉、68と、同飛成、
79香、同龍、67金、78玉、38龍、89玉、88金、同龍、
同龍、同玉、83飛、78玉、87飛成、69玉、68金、同玉、
馬を軸にして1段目まで追い上げ、再び入玉させます。
いかにも煙詰といった手順で、どんどん駒が消えていきます。
盤面がすっきりしたところで、大駒追いが始まります。
67龍、59玉、86馬、49玉、69龍、48玉、59馬、57玉、
58龍、66玉、56龍、75玉、86馬、84玉、54龍、73玉、
74龍、62玉、95馬、52玉、72龍、53玉、62馬、64玉、
74龍、55玉、44馬、46玉、76龍、57玉、66馬、46玉、
56馬、35玉、57馬、44玉、74龍、53玉、54龍、62玉、
35馬、72玉、52龍、73玉、62馬、64玉、54龍、75玉、
84馬、86玉、56龍、77玉、66馬、86玉、
(右図)
134手目の局面に注目。
66馬の空き王手で99とや33歩を取れることがわかります。
でも、どっちを取るべきか?
正解は33馬です。
次の手順で33歩が消えただけで局面が復元するのですが、33馬のところで99馬としてしまうとイで34玉で逃れ。
つまり、まず33歩を消す必要があるわけです。
33馬、85玉、「76龍、94玉、95歩、同玉、77馬、94玉、
96龍、84玉、95馬、75玉、76龍、64玉、73馬、53玉、
56龍、44玉、55馬、イ53玉、54馬、62玉、44馬、72玉、
52龍、73玉、62馬、64玉、54龍、75玉、84馬、86玉、
56龍、77玉、66馬、86玉、」
さて、次は99と、22とのどちらを取るべきか。
正解は今度は99馬です。
22馬だと66歩の中合があり、99とが残っているとこの変化が詰みません。
99馬なら66歩中合には、同龍、95玉、75龍、85香合、77馬、96玉、97歩、同玉、98歩以下で詰みます。
二つの変化で、取る順番が33歩、99と、22と、11との順に限定されているのは流石ですね。
99馬、85玉、「76龍、94玉、・・・56龍、77玉、66馬、86玉、」
22馬、85玉、「76龍、94玉、・・・56龍、77玉、66馬、86玉、」
11馬、85玉、「76龍、94玉、・・・56龍、77玉、」
これで対角線の駒はすべて消えたので、以下は煙に向かってきれいに収束します。
76龍、68玉、95馬、58玉、78龍、57玉、68馬、66玉、
76龍、55玉、46馬、44玉、74龍、53玉、35馬、42玉、
43角成、同玉、44龍、32玉、31桂成、同玉、22香成、同玉、
13馬、同玉、33龍、14玉、23龍、15玉、16歩、同玉、
17銀、同玉、27龍 まで311手
大駒3枚の大活躍で300手超え。 近藤さんが夢見ていた300手超えの煙がついに完成しました。
それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。
- Estalightさん:
- 単玉煙詰の長手数記録作品ですね。
単刀直入に言うと、個人的には煙詰で300手越は驚異的だと思います。
- 江市滋さん:
- 300手越えの煙詰、ということで、一応、作意さがし(大半の手順は、分かっているのだし)。
作意らしいものに辿りついて、納得する。
確かにこれは見事だ。
先行作品のオリジナリティは尊重すべきだと思うし、その意味で云えば、この作品に殆どオリジナリティはない。
その上で、これは本歌取りの完成形として、それこそ看寿賞級だと思った(特別賞級なのかも知れないけれど)。
確かに作者名がこの形で良いかはわからないが、先行作を踏まえての創作であることを明示しているし、先行作の作者も、改作されることを願っていた雰囲気もあるので、
オリジナリティのなさだけで存在を否定する必要はないのではないか。
(それを云うなら、私自身は、近藤さんの貧乏煙にもオリジナリティは余り感じていないので。
改作の過程を見て、旨く作っていることに感心したけれど、斎藤さんの「冬の旅」を最初に見た時の感動を超えなかったのは私だけではないと思う)
今回の改作部分だと、追い廻しを始める際の最下辺での手のつけかたと、2三桂打を加えたことなどで、狭いスペースに駒を詰込み、更に三百手を越えたことは、見事だと思った。
- 山下誠さん:
- 龍・角・馬のコンビネーションでと金を剥がす風変わりな趣向。素晴らしい完成度の全駒煙です。
- 名越健将さん:
- 近藤真一・Okara作を並べた所で力尽きてしまい、13手位しか進みません。
手順を並べてお楽しみください。
- たくぼんさん:
- まさか煙詰で300手越えができるとは驚きです。
それほど近藤さんの作品が凄かったということですね
- 橋茂さん:
- 何回も同じ詰め手順が繰り返されユーモラスです。
龍と桂馬での詰め上がり図にも斬新さを感じました。
※75手目に▲8三飛以外に▲8一飛、▲8二飛の非限定があります。
- 占魚亭さん:
- これは素晴らしすぎる改良。
「凄い」としか言えません。
- おかもとさん:
- 煙詰でこの手数、脱帽の一手。
- 那須清さん:
- 大駒三枚で追う趣向は手順が複雑で実に素晴らしい。
しかも全駒煙です。
- 竹園正秀さん:
- 長手数の煙を作り上げすばらしい
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