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由香里さんが書いたサイドストーリー 「白い影−命の輝くとき」


■ 開かれた心の扉 3

『先生は自分に厳しいんですね。とっても。それで負わなくていい責任もひとりで負って。先生はあれほど止めたのに・・』
『あの身体じゃ相当な痛みがあったはずだ。それをこらえて病院をぬけて行ったのも、彼女にしてみれば・・どうしてもそうしなければならなかったんだろう』
『あの時は宇佐美さんも無理してパーティーに行ったから、その後急に倒れてしまって。それで何もかも・・。あの人、今どうしてるでしょうか。病院を退院した後・・大変だったようですけど』

繭子の衝撃的な会見を通して、その後TVの芸能ニュースは連日大々的に一連の事件を報道していた。繭子の女優生命は絶たれるかもしれないとしきりに噂となって語られていた。
『女優にとっては大きなスキャンダルだったろうな。致命的とまではいかなかったとしても、彼女にとっては辛い試練だったろう。』
倫子は繭子の面影を思い浮かべた。最後に病院での記者会見に臨んだ繭子の表情は、受け持ち看護婦として同席した倫子の心にも、強い印象となって残っていた。
会見では辛辣な芸能記者達の厳しい質問にも、繭子は凛とした表情を崩さず、真実をありのままにはっきりと自分の意志を答えていた。

『私・・あの人の看護の受け持ちが出来たこと、良かったなって思ってるんです。私にとっても、いい経験になったんです。石倉さんと同じように・・』
その言葉に庸介は倫子を見つめた。
『彼女にとても大切なことを教えられたような気がして・・。
宇佐美さん、立派でした。病院の記者会見の時。宇佐美さんのことを思い出すとあの人の生き方って、私素敵だなぁって憧れるんです、この頃』

倫子は流れる川の光を目で追いながら言葉を続けた。
『なんて強い人だろうって。何だかあの時のあの人を見てそう感じたんです。
凄い人だなぁって。まるで・・何て言うか・・自分の命をすり減らすように必死に生きてる姿がとても心に焼きついていて・・。
我儘でもあの人は・・自分に正直に、精一杯生きてるんですよね。
そして自分で自分の道を切り開いていって・・。
会見で自分の本心をきっぱりと話した時の宇佐美さん、とっても綺麗でした。先生が言ったように。
何を言われても凛とした表情のまま最後まで・・・。
先生の言葉であの人立ち直れたんです。
きっとこれからも自分の夢をつかむために、あの強さで、どんな困難なことも乗り越えて生きてゆくんでしょうね。そんな宇佐美さんの生き方、尊敬できます、私も・・・』

”死んでも鬼のように生きていく・・・”
会見に赴く時、庸介の言葉を受けてそう語った繭子の燃えるような瞳を倫子は忘れられなかった。あの我儘さも、あの激しい気性も、厳しい芸能界で生きる彼女にとっては、自分を守るための唯一の武器だったのかもしれない。そう思うと繭子の生き方は素晴らしいとさえ倫子は感じた。
自分の意志を決して曲げることのないあの強さも・・・。

じっと倫子の言葉に耳を傾けていた庸介は、ふと歩く足を止めて立ち止まった。
気がついた倫子は庸介を振り返った。
庸介は立ち止まったまま、目を伏せて何かを考えているようだった。

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