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由香里さんが書いたサイドストーリー 「白い影−命の輝くとき」


■ ふれあう心 1

庸介と倫子がレストランについた時にはもう日はとっぷりと暮れていて、川の対岸にある都会のビル街は鮮やかなイルミネーションで埋め尽くされていた。
テラスから見える川の水面には、輝き始めた都会の夜景が鮮やかに映えて、ゆらゆらと揺れながら繊細で華麗な光をかもしだしている。
この時間になると広い客席も半分程埋まり、落ち着いた店内も恋人達や若いグループ客の会話で弾んでいた。

ウエイトレスに案内されて二人は窓辺の席についた。
天井まで総ガラス張りになっている店内からは、一面に夜の都会の夜景を見渡すことができる。
見事な夜の世界の美しさに、倫子はおもむろに立ち上がり、吸い寄せられるように窓辺にたたずんだ。
船体のデッキのように作られているテラスから見ると、まるで船に乗って揺られているような感覚になってしまう。
これほど寒い冬の夜でも、テラスで肩を寄せ合いながら囁きあっているカップルが何人かいる。そんなカップルの姿を微笑ましい思いで見つめながら、倫子は流れる川に視線を移した。
林立するビルのイルミネーションは川の水面に溶け込むように流れ、ちらちらと揺れ浮かぶ水面の光は、漆黒の絨毯に散りばめられた宝石のように美しい輝きを見せている。
その川の彩りもゆるやかな流れにのって次々とその色彩を変えてゆき、遠く彼方で夜空の星と重なり合っていた。

『光の川のよう・・・。今夜の顔・・・』
そっと倫子はつぶやいた。
『光・・・?』
『川に移る光。あんなに華やかに揺れて・・・。まるで光の川みたいなんです』
倫子の言葉に、庸介も夜景の川に視線を向けた。
『これもこの川のもう1つの顔・・・かな』
『川の・・・』
『ええ・・。川はいろんな顔を見せてくれるんですよね。いつも違う顔。悲しい時も、寂しい時も。それから・・・』
そこまで言いかけて、倫子は少しはにかんだように言葉を継いだ。
『嬉しいときも』
『・・・』
『ほんとに綺麗』
倫子は窓ガラスに映る川の水面の光を指先で触れた。指先に光の溶けた小さな水滴がわずかに流れて落ちた。

『君は前にもそう言ったな』
『え・・・?』
『川の顔・・・』
振り返ると、庸介も同じように倫子の横に立ち、光の川を見つめていた。
そう語った彼の瞳の奥にも、水面の光は潤むように映っている。

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