親指シフト入力を始めた初期の頃には、親指シフトキーと他のかなキーとの同時打鍵の感覚が非常に快感です。他では体験できない独特の入力感覚があり、キーボードを打つことそのものが、非常に快感なんです。これは、おそらく脳の中に、親指シフト入力に対応する新しい神経ネットワークが作られるからなのだろうと思っています。
そして、この「同時打鍵の快感期」を過ぎると、ある日、突然、キーボードの感覚が消滅します。キーボードを打っているという感覚が、全く無くなってしまうんです。文章を考えると、指が勝手にキーボードの上を流れて、考えた文章が勝手に画面に表示されるようになります。
ローマ字入力などでも、慣れれば指が勝手に文章を打つという状態にはなります。しかし、それらとはまるで感覚が違います。
頭の中で考えたことが、次の瞬間、自動的に画面に文字列として出現している、まるでテレパシーによる「思考入力」ともいうべきこの感覚は、実際に体験してみると本当に感動的です。
親指シフト入力の特徴として、高速入力という点が強調されていますが、それは違います。キーボードを意識せず楽に簡単に入力できるから、結果的に高速になるだけなんです。
難しい作業に比べて簡単な作業は、自然と速く終わります。ただそれだけのことです。入力速度が速いというのは、単なる副産物にすぎないんです。
単純に入力速度だけならば、親指シフトよりも高速な入力方式は他にもたくさんあります。しかし、それらは、英文キーボードとは全く異なる配列の特殊なハードウェアを必要とするものが多いこと、また、既成の文章を清書入力するのには適しているが、考えながら創作しながらのリアルタイムでの入力には向いていない、などの問題点があります。
他の入力方式では、頭の中で文章を創る作業と、それをキーボードから入力する作業の二つを同時に行う必要があります。しかし親指シフト入力なら、文章を創ることだけに専念することができます。プロの作家に愛用者が多いということが、理解できると思います。
仕事として大量の原稿を書く際には、ベストな入力方式であり、プロの作家を目ざしているという人ならば、絶対にマスターしておいて損はないだろうと思っています。
ただし、初めてキーボードに触る、というような人には全くお勧めしません。まずローマ字入力を、基本である英文の入力を身に付けてから、転向するのが良いと思います。
それから、親指シフト村には面倒見の良い先輩作家が多数住んでいますので、新人さんが引っ越して来たりすると、あの有名な○○先生とお近づきになれる、などということも期待できるかもしれません。
プロの作家有志による、親指シフトに関するサイトもあります。
『親指シフト・キーボードを普及させる会』
http://www.oyayubi-user.gr.jp/
是非、プロの作家の名文を読んでみてください。