梗概の書き方

 文芸系の多くの賞には「800字程度の梗概(あらすじ)を付けること」といった感じの応募規定が付いています。
 梗概がきちんと書けているかどうかは審査の重要なポイントの一つで、梗概だけで独立した点数を付けている賞も少なくありません。
 梗概は小説本編を濃縮したものなので、梗概が面白い作品は小説本編も面白く、梗概がつまらない作品は小説本編もまたつまらない、ということがほとんどです。
 梗概を書く能力というのは、自分の作品を客観的に把握する能力でもあるので、面白い小説が書けたのに面白い梗概が書けない、というのは確実にマイナス点になります。
 小説本編の面白さの骨格を過不足なく規定の文字数内にまとめた、面白い梗概を書く努力をしてください。

 この時に一つ注意してほしいことは、梗概は宣伝文ではないということです。あくまでも長い本編を非常に短くまとめた総集編のようなものなので、きちんと完結していなければなりません。
 つまり「誰々の運命やいかに?」とか「そしてついに決着の時を迎えた…」とか、そういうふうに途中で終わっていてはいけない、ということなんです。結末まで、きちんと書く必要があります。ここらへんを勘違いしている応募者がかなりいるので、気をつけてください。
 原稿用紙の枚数が違うだけで、基本的に小説本編と梗概とは等価なものです。

 小説を読む前に結末をバラしてしまうことを不安に思う応募者もいるかもしれませんが、本当に面白い小説というのは、結末がわかっていても何度でも繰り返し面白く読むことができるものなのです。一度読んで結末がわかってしまったら二度と読む気になれない、というような小説ならば、一次選考すら通らないことでしょう。
 結末がバレてしまうことを、全く気にする必要はありません。
「梗概は結末まできちんと書く」これが基本です。

 私が下読みをする時には、まず全部の原稿をざっと見て、梗概の面白そうな順に読んでいくようにしています。梗概が面白い期待値の高い原稿は気合を入れて読み、梗概がつまらない期待値の低い原稿は後回しにするということです。限られた時間で何十本もの原稿を読まなければならないわけですから、最後のほうになればなるほど、下読みさんも疲れてきています。パッと見て「これを一番に読んでみたい!」と思わせるような、是非そんな梗概を書いてほしいと思います。


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