私立大学も動いている
鈴木 よく言われる、「日本も変わっているじゃないですか」という変わり方は、それじゃダメな変わり方なんです。そこが重要なポイントです。日本はいい国だし、好きですけど、だけどダメなんです。
運営者 すごく説得力があります。
もう一つの視点を申し上げるとするならば、どの視座に立って現状を認識するかという問題があって、今の日本がどういう趨勢にあるのかを考えるべきだと思うんです。
わたしは、「日本はすでに没落の過程にあるのだ」ということを認識できているかどうか、ここがまたひとつ重要だと思うんです。そこから考えれば、「ではこれから、いかにうまく没落していくか」と考え始めることができるわけです。
ところが、「いや、そんなことはないよ。悲観論からは何も生まれない。われわれはまだまだいけるし、今後もどんどん上がっていくんだ」、という高度成長型の幻想から逃れられなければ、「なに、成長率が上らないのであれば、公共投資をすればいいじゃないか。国債を発行して、何の問題があるんだ」・・・になるわけですよ。
鈴木 なるほどね。
運営者 それがまあ、竹中さんが大臣になったということや、もろもろありまして、失速してしまったわけでして。
それで今度はですね、国立大学が独立行政法人の一種である国立大学法人に4月から衣替えするということもあるので、そういう政策研究シンクタンクとして実際的な政策の創出ができる場になろうとトライするところがあっても・・・。
鈴木 おかしくはないですよね。
私立大学にも危機意識はありますから、本当に危機感を持って私立大学が動くときには、やると思いますよ。相磯秀夫さんのように意識の高い人もいらっしゃいますし。関西学院大学なども、学長は50代、副学長は40代という感じで非常に若返ってますよ。
運営者 私立大学も有望なんですね。
で結局、「知」を作るという観点から見て、大学の研究や教育がどうなっているのかについて教えていただきたいのですが、例えば「政策研究に力を入れよう」ということで研究費の配分を変えようとするなら、理念を新しくつくったり書き換えたりして、それに基づいてみんなの意識も同時に変革していくということが必要だと思うんです。それが最終的な結果として研究費の配分や研究施設の使い方を変えることに結びつくというのが正しい姿でしょう。
そういうことをするためのキーパーソンは、アドミができる人材ということになるのでしょうか?
鈴木 いえ、大学の研究のコントロールをする人というのは、アドミができるだけではだめです。学術的にもそれなりに評価されていないと。
それは、アメリカのシンクタンクなんかも、みんなそうですよ。ベストではないかもしれないけれど、それなりにできる人じゃないとつとまらないわけです。その意味では、ビジョンをもっているのは当然ですが、学術的に優れ、アドミ的にも有能であるというように2つの相反することができるわけですから、水の上を歩くことができるほどの凄い能力が必要なんです。