1.制定の趣旨
平成10年の世田谷区地域保健福祉審議会答申を受け策定した「子どもを取り巻く環境整備プラン」において、子ども条例制定が区の重要施策として位置づけられ、同時に、区議会においてもさまざまな議論がされてきた。
子どもは本来、自ら育つ内在的な資質をもっており、単に保護の対象としてのみ捉えるのではなく、その成長段階に応じて自らの意思と責任で判断し、行動する可能性をもった一人の区民として尊重されなければならない。そのため、何より大人が子どもを地域社会の一員として尊重し、世田谷区の未来を担う大切な存在として捉えていく区の子ども観を明らかにするとともに、保護者、学校、区民、事業者、区の責務を明確にし、子ども施策を総合的に推進するために条例を設定する。
2.条例の基本的考え方
(1)すべての子どもが育つことに関して基本的な考え方を明らかにする。
(2)地域社会の未来を担う子どもが育ち、育てることに関して、地域社会全体で支援すべきことを明らかにする。
(3)保護者、学校、区民、事業者、区の責務を明らかにする。
(4)地域社会や区政への子どもの参加を明らかにする。
(5)虐待の防止、いじめ等への対応の取り組み等の方針を定めるとともに、・子どもに関する区の施策の総合的かつ計画的な推進を明らかにする。
(6)子どもを含めたすべての区民等が条例の趣旨を正しく認識するため、子どもも理できる表現による条例とする。
3.予定
平成13年 9月 区議会に条例の素案を報告
平成13年11月 区議会に条例案を提案(予定)
(仮称)世田各区子ども条例案大綱
この案をもとに、子どもを含めたすべての区民がわかりやすい表現とする。
(前文)
子どもは、未来への「希望」であり、次代を担うべき無限の可能性を有している。
子どもは、個人としての尊厳と権利が尊重され、心身ともに健康で、自らの個性と豊かな人間性をはぐくむことができる社会で育つことが望まれる。
これは、我が国が平成6年に批准した「児童の権利に関する条約」、区が平成11年に策定した「子どもを取り巻く環境整備プラン」でも言われている。
区は、子どもの成長段階に応じて、地域社会全体が子ともをその一員として尊重し、子どもの個性と能力を発揮する機会を十分確保し、子どもの主体的な成長をはぐくんでいかなければならない。
子どもが、自らの意思と責任で判断し行動することができるよう支援するため、愛情と理解、時には厳しさをもって接することも大切である。
このことは、私たちが果たさなければならない責務であることを認識し、子どもが育つことに喜びを感じられる社会を実現するため、区は、子どもたちも含めたすべての区民等と連携して、子どもが健やかに、成長できるまちづくりを進めることを宣言し、この条例を定める。
第1総則
(目的)
すべての子どもが育つことについて基本的事項を定め、総合的、計画的に実施し、子どもが健やかに成長することができるまちづくりを進める。
(定義)
「子ども」とは、18歳末満のすべての者をいう。
(基本理念)
@子ども一人一人が持っている育つ力を思い切り輝かせる。
A 子どもが、自ら育つことに皆で関わり、子どもたちに学びながら子どものすばらしさを発見・理解し、子育ての喜び、育ちあう喜びを分かち合う。
B共に育ちあうことを通じて、子どもと一緒に築く。
(保護者の責務)
保護者は、子どもの養育と成長についての第一義的な責任を有していることを自覚し、子どもとふれあう機会を大切にするとともに、子ともが育つことに最善を尽くすよう努めること。
(学校の責務)
学校は、子どもの人間性と将来への可能性をはぐくむため、地域社会と−体となった取組の推進に努めること。
(区民の責務)
区民は、子どもが育つこと、子育てをしやすい環境づくりに積極的に関わるよう努めること。
(事業者の貴務)
事業者は、その事業、活動等に際し、子どもが育つこと、子育てをしやすい環境づくりに努めること。
(区の責務)
区は、基本理念に基づき、子どもに関する総合的な施策を策定し、保孝者、学校、区民及び事業者との連携のもとに実施すること。
第2 基本施策
(子どもの健康・育成環境)
区は、子どもの健康の保持と増進を図るとともに、安全で良好な育成環境を確保する。
(居場所の確保等)
区は、子どもの成長に応じた居場所の確保に努め、個性、人間性をはぐくむ体験や活動を支援していく。
(子どもの参加の促進)
区は、子どものさまざまな意見を受け止め、主体的な参加を促進するための会議の設置等必要な体制の整備に努める。
(虐待の禁止・防止)
1)何人も、子どもに対して、虐待を行ってはならない。
2)区は、虐待の防止のため、地域社会と連携を図り、子育て家庭への支援に努める。
(虐待の発見等)
区は、虐待の早期発見と保護を行うため、必要な啓発を行うとともに、児童相談所等 閑係機関及び民間団体等との連携の強化、必要な体制の整備に努める。
(いじめ等への取組)
区は、いじめ等の防止と解決を図るために、必要な啓発と速やかな対応を行うととも に、保護者等との連携の強化、必要な体制の整備に努める。
(子育て支援)
区は、地域社会全体で子育てを支援するため、区民活動の促進を図るための必要な体制の整備に努める。
(相談と擁護)
区は、子ども自身の問題や子どもに関する相談について、速やかに対応を行うとともに、必要に応じてその擁護に努める。
第3 推進計画
(推進計画)
1)区は、子どもに関する施策の計画的な推進を図るための基本となる計画として推進計画を策定する。
2)区は、推進計画の策定に当たり、あらかじめ区民及び区の子どもに関する関係機関の意見を反映することができるよう必要な措置をとる。
3)区は、推進計画を策定したときは、速やかに公表する。
(施策の評価)
1)区は、子どもに関する施策を効果的かつ効率的に推進するため、子どもに関する施策の評価を実施する。
2)区は、施策の評価に当たり、あらかじめ区民及び区の子どもに関する関係機関の意見を反映することができるよう必要な措置をとる。
3)区は、施策の評価をしたときは、速やかにその結果を公表する。
第4 推進体制
(総合的な推進体制)
区は、子どもに関する施策の計画的な推進を図るため、総合的な推進体制を整備する。
(国、東京都等との協力)
区は、子どもの育成環境の整備を図るために広域的な取り組みを必要とする施策については、国及び東京都その他の地方公共団体と協力して推進する。
(事業者の協力)
事業者は、従業員が、子どもが育つこと及び子育てに携わり、又は子どもが育つこと及び子育てを支援する活動へ参加することを促進するため、必要な便宜を図るよう努める。
(地域社会における連携)
区は、子どもが健やかに成長することができるまちづくりを進めるため、地域社会における連携を積極的に行うとともに、地域社会における自発的な取組が促進されるよう必要な措置をとる。
(啓発)
区は、条例の趣旨及び内容について、保蕃者及び子ども自身を含めたすべての区民に伝わるよう広報を行い、啓発に努める
第5 雑則
(委任)
この条例の施行に閑し必要な事項は、区長が定める。
附 則
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