99-9 秩父のパノラマ尾根                                      **

        大持山・小持山   1,294/1,273m


 武甲山から南に延びる尾根伝いに位地する大持山・小持山は、秩父市街からは武甲山に隠れて望む事ができない。名実共に武甲山に隠れた存在の両山であるが、近年登山道の見通しを良くする為に木立を切払ってからは、武甲と奥地秩父連山に挟まれた絶好のハイキング・コースに生まれ変わったとの事である。秩父駅前からタクシーで武甲の東側を巻きながら南に向かい、生川登山口まで進む。タクシーの窓から見る武甲の北側の山肌は、切り刻まれた石灰岩の岩肌を無残に露出して、山が悲鳴を上げているようで見るに忍び難い。しかしながら生川まで進むと、南西から見る武甲はまともな自然の山肌を表わし、その勇姿を眼前に展開してくれる。   タクシーを降りた生川付近は清流と黄や紅に色づいた山々の織り成す錦とで、未だ遅い紅葉のただ中にある。先月末の会津・荒海山の紅葉に続いて、再びここ秩父で紅葉を愛でる機会に巡り合えた幸運を喜びあった。

大持山は余り知られてない山であるが、武甲より1m低いだけの標高であり、小持山も頂上付近は起伏の激しい岩場で少々スリルも味わえて、変化に富んだすばらしいハイキング・コースだ。大持から小持へ続く尾根伝いの頂上付近の道筋は、既に木々の葉も落ちて絶好の眺望を提供してくれる。北に雄大な武甲山、そのはるか遠方に日光連山から谷川岳までの展望が望める。東に大霧山から武川岳まで、南に奥多摩の山々、そして西に奥秩父山塊が広がって360度の眺望が得られる。生川からの標高差は約800m、浦山口までの行程は25,000歩あり、多少体力を要する中級のコースといえる。


日時:   1999年11月23日(火) 曇時々晴 
参加者: 太田、林、細谷、巻島、諸橋、吉田、矢島亜紀夫/文江、山下(記)
交通:   行き:東武・幸手(5:45発)―>羽生(6:38着、6:45発)―>秩父(8:56着)
     帰り:浦山口(18:18)?>羽生(19:54着) 東武・羽生(20:09)―>幸手(21:00)


登山コース: 約6時間     (除く昼食時間) :  24,800歩

 秩父へ向かう熊谷駅で乗換えを忘れ、列車が羽生へ折返すハプニングがあり、30分遅れで秩父に到着した。秩父駅からは2台のタクシーに分乗して生川登山口まで行く予定であったが、我々のタクシーが奥の登山口まで入るのを嫌がった為、途中で下車。他のパーティは、タクシーで登山口まで我々を追い越して入って行く。ここで更に30分をロスしてしまった。「今日は時間をロスする日かな?」

(生川登山口〜妻坂峠〜大持山〜小持山山頂)  3時間10分(9:20〜10:25〜11:55〜12:30)

 大持沢と小持沢の合流地点が生川の始まりで、その辺りが登山口となっている。せせらぎを背後に聞きながら、武甲山との分岐を直進して杉林の中を進む。今日の上りは先の荒海山の急登と違いなだらかな登りで、足慣らしにちょうど良い。初参加の矢島(文)さんが先行してパーティを先導して行く。かなりの健脚で、我々が何度か遅れを待ってもらう意外な展開となった。紅葉を愛でながらの1時間ほどの登りで妻坂峠に着いた。ここから北方に秩父市街が霞んで見下ろせる。林さんの解説によると、「妻坂峠は、鎌倉初期の武将である畠山重忠が、頼朝挙兵の際に加勢として鎌倉に赴く際に、この峠で愛妻との別れを惜しんだ事に因んで名付けられた。」との事である。約800年の時間の壁を越え、戦場に赴く武将の気持ちになってみようと試みるが、平和ボケした私には、残念ながら当時の重忠の心の中の一片さえも思い描けない。

 今までの比較的なだらかな登りから、妻坂峠を過ぎると急登となる。景色も目に入る余裕すらないような急坂を、皆息を切らせて葉の落ちた広葉樹林の中を、落葉に足を滑らせながら1時間程登り詰める。やがて尾根に出て、急に眺望が開ける。すばらしい眺めだ。遠く日光連山が雲の上に浮かんでいる。双眼鏡で覗くと白根山が白い雪を被って、うす紅く日に輝いて見える。鳥首峠への分岐を経て、右に折れて10分ほどで、大持山山頂に着いた。先行の3パーティ程が既に弁当を広げ、中にはコッフェルの煮込みうどんを啄ばんで入るパーティもいる。山頂は狭いので、予定通り小持山まで行ってそこで昼食としよう、と言う事になった。小持山までは30分ほどの尾根歩きであるが、空腹を忘れる程、深い秩父山塊の眺望を十分堪能しながら岩山の小持山に歩を進めた。
(写真:大持山から子持山とその先の武甲山を望む)






(小持山山頂〜シラジクボ〜浦山口)  3時間 (13:20〜13:45〜16:20)

 小持山での昼食は、風も無く久しぶりに和やかな円座の昼食となった。太田さんが毎度のワインを取り出し、本日は“ボルドー・ワイン”での乾杯となった。初参加の矢島さん夫妻は、どっさりと食物を取出して皆に大盤振る舞い。「良くこんなに沢山食料を運んで、何であんなに早く登れるの?」

 昼食後は、武甲山に向かって尾根を歩き、シラジクボの分岐を左に折れて浦山口への下山となった。途中、道筋に巨大な動物の糞があって、「これはおそらくのもの。誰が先頭を行く?」
(写真:小持山からの下山)


(本日のハイライト: 「今は昔、竹取の翁といふものありけり」)

 孟宗が生い茂る竹林の中で、大きな木のたらい湯に浸かって、笹の囁きを聞きながら疲れた体を休めていると、何時しか平安の竹取物語の世界にタイム・スリップしそうだ。これはこの宿の主人が思い描いた世界をここ秩父の浦山川添いに再現した世界であろう。一見の客である私が、この家の主人の意図するところに、こうもすんなりと入り込んでしまう事は、実にうまい舞台装置を用意したものだと感心させられた。 いつか又、この「お宿 竹取物語」に来てみよう。そして、心行くまで竹林の中の露天風呂に浸かって、平安の古きよき時代を思い起してみよう! かぐや姫が現れるかも知れない。


「登山」トップへ戻る

トップページへ戻る