00-11: 厳寒の那須山頂尾根                                                    **

            南 月 山      1,776m


 南月山(みなみがっさん)は、那須連峰の南縦走路で、展望の素晴らしい尾根として親しまれている。山の名は、その山容が出羽三山の一つである月山に似ていることに因んで名付けられたと言われている。ロープウェイ山麓駅の登山道から登って小一時間、南と北の縦走路の分岐にあたる峰の茶屋から南に聳える茶臼岳や、北の縦走路にある朝日岳のような荒々しい男性的な山々とは対照的に、なだらかな尾根道でたおやかな山容を誇る南月山は女性的な山と言える。

 しかしながら、山は天候次第で初級の山もすぐに上級の山に早変わりする。特に那須の尾根づたいは風の通り道で、油断のならないコースである。11月中旬でもあり、今年は紅葉が遅かったので、もしや紅葉にめぐり合えるのではと一縷の期待を込めてやって来た。しかし山の上半分は既に白いものに覆われて、紅葉は遠の昔のことであったかのようである。この冬山景色を仰ぎ見て、皆、果たして目的地の南月山まで辿り着けるやら?と早々に不安がよぎってきた。山頂は1,776mで、三本槍や朝日岳より低いが、長い雪の中の尾根歩きと、寒さと、風が問題だ!


日時:    2000年11月19日(日) 晴れ時々曇り
参加者:  小林、小谷野、栄、昌谷、桜井、柴崎、野崎(静)、林、平山(三)、細谷、巻島、
     諸橋、矢野、山下(記)
交通: 行き:JR・東鷲宮(5:59)―>黒磯(7:47着) タクシー(8:00発)―>途中(8:40着)
       帰り:バス・那須湯元(17:00)―>黒磯(17:50着)JR・黒磯(17:11)―>
        東鷲宮(19:07着)


登山コース: 約5時間(除く昼食時間)   22,800歩

 最近は男性の参加率が低かったが今日は半数の7名も参加し、久しぶりに14名の大パーティである。JRの黒磯駅で下車すると、少し風が吹いており、果たして尾根の強風は吹き荒れていないであろうか?と心配しながら、那須連峰を仰ぎみる。7合目当たりから上に、既に白いものが被い始めており、一抹の不安がよぎる。ロープウェイ山麓駅までバスを予定していたが、200円ぐらいの差なのでタクシーを選択した。しかしながら、タクシーが登って行くうちに路面凍結でスリップし出して、山麓駅の2kmぐらい手前で下車せざるを得なくなった。降り立った路面はアイスバーン状態で歩くのさえ危ない状態である。女性の一部から「このまま引き返そう。」と声が上がったが、「とにかく登れるところまで行こう。」という事で、山麓駅まで凍りついた道路を避けて、少し雪の積もっている登山道に足を踏み入れた。(写真:タクシーも路面凍結で引き返す)

(ロープウェイ山麓駅〜峰の茶屋〜牛ヶ首) 2時間 (10:00〜11:00〜12:00)

 山麓駅の登山口では、他のパーティも引き返すか進むか迷っている。我々よりも高齢者の女性のパーティが「行きましょう。」という事で登り始めたのに刺激され、「よし、先ず峰の茶屋まで行ってみよう。そこまでは比較的風も無く、緩やかな登りだから。そこで引き返すかどうかを決めよう。」という事になった。


 雪が少し登山道を被ってはいるが、峰の茶屋までは風もそれ程でなく、むしろ雪景色を楽しみながらの登りとなった。前回ここに来た時は輝く若葉と石楠花の咲き乱れる初夏の高原の彩りがあったが、今回は雪の入り混じった灰色を主体とした単調な冬景色で、これも又一興でもある。

 峰の茶屋に到着した。やはり尾根の峠であるので風が強い。これから先、茶臼の西側を巻いて尾根を南月山まで行くのは、雪と風と寒さとの戦いであり、強行する組と山麓駅に引き返す組に分かれる事にした。昌谷さん、桜井さん、細谷さん、そして巻島さんは引き返す組になり、那須湯本の鹿の湯で落ち合うことになった。
(写真:凍えつく無間地獄)
 峰の茶屋で小休止した後で、強行組は強風と戦いながら牛ヶ首に向かって、ガスの吹き出る無限地獄を横切りながら進む。皆、防寒着で体を被うが、強風の為鼻が凍りつくほどの寒さで、とにかく目標方向に進む。マイナス10℃ぐらいの寒さだ。上を見上げると、茶臼岳の山頂の巨大な岩石の塊が雪を被って、今にも我々の方に転がり落ちてきそうな不安定さでのしかかっている。やっと牛ヶ首に到着した。そこから南方向に、なだらかな日の出平とその向こうに南月山が望める。展望は良好、足場も悪くない。しかし、この風の強さと寒さの中を、全く木のない尾根道を南月山まで往復する事は、かなりの荒行事である。南月山は諦めて、茶臼岳の南山麓を巻いて那須湯本まで下る事にした。

(牛ヶ首〜鹿の湯)  3時間(12:00〜15:00)

 下りは、茶臼岳と南月山に挟まれた谷間を歩くので、風がほとんど無く、先ほどまでの寒さが一気に緩んだ。しかし、雪の深さが20〜40cmぐらいあり、靴がもぐってしまい不安定で歩きにくい。途中、南斜面で小一時間の昼食を取る。後は一気に「鹿の湯」を目指して下山。
(写真:雪の南月山を諦めて、左に下山)

 鹿の湯に到着すると、運良く別パーティも到着したばかりとのこと。「峰の茶屋から山麓に戻ったら、ロープウェイが運転開始されていたので、茶臼岳の頂上まで登ってきた。」との事。もしかすると、我々が昼食を食べながら、雄大な茶臼岳を仰ぎ見ている頃、別パーティは我々を悠然と見下ろしながら、那須の高山の大気を五臓六腑に吸い込んで、那須連峰の冬景色の眺望を満喫していたのかもしれない。


(本日のハイライト)

鹿の湯:
 那須湯本の硫黄が吹き出る殺生石の少し下の谷あいに「鹿の湯」はある。ここは、昔からの湯治場で宿泊施設は無くて、温泉のみである。全くの元泉であり、一切暖め返す循環湯を使ってないとの事だ。温度調節は流れ込む湯量で調節している。少ない湯量だと、外気で冷えて低い温度になり、湯量が豊富だと、冷めるよりも熱い温泉が入ってくるので熱い湯になる。最も熱い湯は、48℃。5分も漬かったら茹でタコのようになってしまう。最もぬるい湯が40℃である。今日は、日曜でもありごった返すほどの満員だ。入湯料:¥
400

芭蕉の一句:  石の香や 夏草赤く 露あつく  (前回の俳句と比較してみよう!)


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