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庚申山(こうしんざん)は、日光中禅寺湖の南西、松木渓谷の南に位置して、皇海山や日光の山々の展望台の山ともなっている。7合目付近から切立つ岩壁となり、古くから庚申講の総本山として、信仰登山の山としても有名だそうである。又、江戸後期に滝沢馬琴によって書かれた関八州を舞台とする「南総里見八犬伝」の中の1つの舞台ともなった山で、その奇岩怪石群がいかにも物語の神秘さを裏付けてくれる。
幸手から庚申山へのルートは2つ有るが、今日は時間節約の為、渡良瀬渓谷鉄道を使わずに、東武日光駅経由でマイクロバスを雇って登山口の銀山平まで入った。登り前半の庚申山荘までの林の中の比較的なだらかな山歩きと、後半のクサリやハシゴを頼りによじ登る岩場とで、非常に変化に富んだ登山が味わえる。頂上付近は木々に囲まれて眺望は良くないが、少し先の展望台まで足を延ばすと、一気に展望が開け、紅葉の松木渓谷の向こうに皇海山が聳え立つ。そのはるか右後方に白根山、そして北東方向には男体山、女峰山が望める。ここは日光の山々の展望台ともいえる絶景の場所である。山頂は1,892mで、銀山平からの標高差が約1,000m、岩場を考慮すると中級者コースの山と言えよう。
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登山コース: 約6時間30分(除く昼食時間) 27,000歩
当初の渡良瀬渓谷鉄道ルートを変更して、東武日光経由で、林さんがあらかじめ手配した10人乗りのマイクロバスに乗って、足尾経由で銀山平まで入った。今日は紅葉の最盛期で、日光と足尾間の道路は、朝の8時前というのに早くも渋滞が始まっている。地元の運転手だけに、渋滞を避けて裏道をすいすいとかいくぐって銀山平まで1時間で着いた。約1時間の時間短縮が出来た。この時期は日没も早く、今日のような長丁場の登山コースでは、この1時間が貴重である。今日は帰りのランニングがない事を祈って!
(銀山平〜庚申山荘〜庚申山頂): 3時間30分(9:00〜11:10〜12:30) 14,000歩
庚申山の登山口である銀山平は、足尾から20分程庚申川に沿って細いアスファルト道を上ったところにある。この先も川に沿ってアスファルト道は続くが、ここで全ての車は足止めされる。このあたりは、足尾温泉の源泉が湧き出て、国民宿舎の「かじか荘」があり、紅葉を愛でる観光客と、庚申山、皇海山への登山者でにぎわっている。他に2組のパーティが一緒に庚申山に向かってスタートした。庚申川に沿って、アスファルト道を1時間ほど上って一の鳥居にでる。ここが本来の登山道入口で、赤いペンキ塗りたての鳥居が建っている。近くに庚申七滝が紅葉の中にしぶきを上げている。川面はかなり下の方で、そこまで降りれば七滝がきれいに見えそうだが、先を急ぐ為、下まで降りずに上から覗いただけで鳥居に引き返した。庚申川と分かれて鳥居をくぐり水面沢沿いの山道に入ると、信仰の山らしく、ここから頂上までポイント毎に、“丁目”(約110m/60間/丁)が刻んである。標高差1,000mを超えるにしてはかなりなだらかな行程で、程よいペースで庚申山荘まで約1時間程を紅葉を愛でながらのぼる。(写真:紅葉の中を)
庚申山荘は二の鳥居に当たり、昔この辺りに庚申講の総本山である猿田彦神社が有ったとの事である。庚申山荘も新しく建替えられ、今は一泊2,000円素泊まりの山荘が営まれ、皇海山の登山基地として賑わっている。この庚申山荘越しに眺める庚申山のパノラマは実に雄大である。今までのなだらかな樹林帯の山から奇岩、怪岩の岩肌が屹立する屏風のような岩壁が山荘の後方に聳えている。少し雲がかかっている為、さらに神秘さを漂わせている。「これからあそこにチャレンジするのか?」と、少し気を引き締める。岩場はハシゴやクサリの連続で、今までのなだらかな山歩きから一変する。(写真:岩場を鎖につかまりながら)
岩肌に蘇生した七かまどが、真っ赤な実をつけて無表情な岩場を彩り、季節感をアピールしている。岸壁から見下ろす紅葉はこの時期ならではの絶景で、遠い昔の滝沢馬琴も同じ景色を眺めたのかなと思いつつ、足元に気をつけながら岸壁を上る。やがて、岸壁の上に出て、それから頂上までは又、なだらかな米つが樹林の尾根歩きとなる。頂上は残念ながら眺望は得られず、さらに北側の展望台まで歩を延ばす。突然視界が開けて、正面に皇海山が松木渓谷越しに紅葉の中に聳えている。雄大な日光連山を展望しながらの昼食は、登りの緊張感と程よい疲れを癒しつつ、至福の達成感と共に今日も又新たな感激を与えてくれた。
(庚申山頂〜銀山平): 3時間(13:10〜16:10)
いつも天候に恵まれず、今日のように素晴らしい眺望はなかなかめぐり合えない。昼食を取りながらの眺望が実に素晴らしく、名残り惜しみつつ山頂を後にする。岩場の下りは登りより危険なので、皆慎重に歩を進める。今日は下りのランニングをせずに、ほぼ予定通り銀山平に到着した。ここ「かじか荘」の温泉は中々のものである。紅葉の山々を眺めながらの露天風呂は、シーズンでもありイモ洗い状態での賑わいである。中には缶ビールを片手に、手ぬぐいを頭に載せて「イイ湯だな、アハハッ−!」
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