99-Y6: とにかくタフなやつ                    ***

    朝日岳   1,870m


 標高はそれ程でないが、距離が長くてとにかくタフな山だ。下から眺めると連邦の左端に位置する大朝日岳(おおあさひだけ)が目指す山だが、深い所に位置する為、当日下山をする場合は前日に朝日鉱泉か古寺鉱泉に泊らざるを得ない。

「島原山コース」、「平岩山コース」、「中ツル尾根コース」と三つの登山コースがあるが、「日帰り登山者は最も短時間で登頂できる中ツル尾根コースをとった方が良い」と、宿の主人の助言である。最も短時間と言っても、往復16Kmで、9時間は要するとの事である。 中ツル尾根コースは、三つのコースの真ん中に位置し、最初沢づたいに4Km、後半4Kmがかなりきつい中ツル尾根を登りに登るコースである。「この山のタフさは、おそらく100名山のトップ5には必ず入ろう」との事である。標高差は朝日鉱泉が550mであるので、約1,300mである。難度よりも体力を要するタフさから、上級の中のコースといえよう。


日時:   1999年8月31日(火)曇時々雨、頂上付近であられと秒速30m位の突風
参加者:  単独行
交通:  車: 下山後、朝日鉱泉(14:00)―>山形―>自宅(22:00)


登山コース: 約7時間30分    (32,265歩)

(朝日鉱泉〜分岐〜大朝日岳山頂) 4時間4分(5:20〜6:40〜9:24)

 泊った朝日鉱泉を出発したのは3人の登山者の中で最後尾の5時20分。トップは61歳の小沢さんで、1時間前、そして2番手は66歳の豊田さんでその10分後に出ている。二人とも高齢なので、「1時間のハンディでちょうど良いかな。登りの2/3位までには追いつけよう。」とタカを括って出発した。山荘前の吊り橋を渡って、緊張感を持っていよいよ大朝日に挑戦。黒俣沢に沿って中間点の分岐まで4Km余り登りのない沢添いの細い登山道を滑落しない様に気を遣いながら進む。

 沢沿いの道なので、沢を交互に超えるたびに吊り橋がかかっており、4つの吊り橋を渡たる沢の渓流の醍醐味を堪能しながら、気持ちは早、大朝日の頂上に向いている。4っ目の吊り橋を渡るといよいよ後半の4Kmの中ツル尾根の登りにかかる。かなり急な登りで、10分も登ると息が切れる。しかし、先行の2人を追いかける身なのでとにかく休まずに登り続ける。時々、ヘビヤモリガマヒルと、
冷やっ!とする生き物が、自然の息使いを与えてくれる。「ここのガマは皆肥満」で、運動能力が極めて低く、近づくとのっそりと道を譲る。「おい、気をつけないとさっきのヘビに食べられてしまうぞ!」

 2時間の登りの後、やっとハイ松帯の中ツルの尾根に出た。風が強く下から吹き上げてくる。風速30m位はあるであろうか?時々雨混じりで、視界も悪く、体が飛ばされそうだ。「単独行だからとにかく怪我をしない様に気をつけよう。自分の後ろに誰もいない事だし」。先行者に中々追い着けない、「彼らはかなりの足利きだな。」頂上の15分手前で彼ら2人が降りてきた。「未だ30分の遅れだな。」横殴りのあられ混じりの突風が吹き荒れる山頂にやっと着いた。4時間を超えてしまった。記念写真を撮ろうとしたら、カメラのバッテリーが切れて動かない。「残念、今度からは、フィルム・カメラを必ず持参しよう。」あられが吹きつける頂上は、ほぼ視界ゼロ。

(大朝日岳山頂〜出合〜朝日鉱泉) 3時間26分 (9:30〜11:30〜12:56)

「早々に退散しよう!」。たった6分の頂上で、しっかりと頂上の景色を頭の中に焼き付けただけで、何の登頂の証拠も残さず、後ろ髪引かれながら頂上を後にする。登る時は、とにかく頂上を極めようと一目散に登ったが、帰りは余裕ができて、登りで見えなかったミヤマ・リンドウが青紫にきれいな花を鈴なりに咲かせている。「おっと、君は登りの時に道を譲ってくれた、灰色に黒点のヘビだね。又会ったね!」 結局、最後まで、先行の2人には追いつけなかった。年齢に関わらず、何と健脚な高年者なのだろう! 宿のお上さんが言うには、「1時間ほど前に到着されて、鳥海山に向かわれましたよ。」


(本日のハイライト)

朝日鉱泉での3人
 それぞれ「日本100名山」を目指す3人(一人は付き添いの人がおるので、4人)が、山の中の山荘で巡り合った。山口から来ている小沢さんは61歳で、既に86山を登っている。今回の山行では東北の6つを登っており、あと2つ挑戦との事である。「来年中には100山を達成する予定だ。その時は、山口で初めて100名山を征服した人との事で、山口新聞が取材してくれる約束だ。」との事。愛知から来た豊田さんは66歳で、約60山を征服している。私は最年少で、たった14山しか登っていない。ここ朝日鉱泉のオーナーは ”ナチュラリスト” と言う事で、日本カモシカに造詣が深い方であり、100名山にも理解の深い方との事であるが、残念ながら今夜の会話の中には入らなかった。初めて会った3人だが、共通の目標の為か、またたく間に意気投合し山の談笑に花を咲かせた。8時になった。「さー寝よう!明日はタフだから4時起きだ。」と小沢さん。私は、月山の山行記をPCに入れる為、あと2時間ワープロ作業だ。

トップページへ戻る

「登山」トップへ戻る