ぼくは、ジャズはかなり聴いているほうだと思うのだけど、レッド・ガーランド、ウィントン・ケリーは、今回初めて聴いた。この時期のジャズが僕のなかでは脱落していたのだ。僕が知っていたのは、コルトレーンあるいはセロニアス・モンクなどのある程度前衛化したモダンジャズと、グレン・ミラー、ベニーグッドマン、デューク・エリントンといったスウィング時代のジャズだけ。で、その間、1950年代ー1960年代初めの、前衛化する前の、割とスタンダードなモダン・ジャズは、完全に抜けていた。
もともと、僕がジャズを聴きだしたきっかけはというと・・・。
中学生のころ、NHK教育テレビが『土曜倶楽部』という番組をやっていた。糸井重里なんかが司会していた『YOU』の後継番組で、あのときは、いとうせいこうが、司会だったと思う。そのなかに、夏目房ノ介(漱石の孫)の短いコーナーがあった。そこであるとき、夏目氏は、「昔は、ジャズ喫茶などというものがあって、薄暗いところで、馬鹿でかい音量のスピーカーの前に陣取って、首を振りながら聴いて・・・」などという話をしていた。へー、と思って聴いていると、なぞめいたコトバが僕の耳に飛び込んできた。「ジョン・コルトレーンとかね・・・」。「ジョン・コルトレーン」。謎めいていて不思議な響き。それで、気になって、図書館で、探してしまった。それで、借りて聴いたのが、『My
Favorite Things』と『至上の愛』のLP。で、非常に、気に入ってしまったのだ。
だから、たぶん、ぼくは、ジャズが好きというよりは、コルトレーンの音楽が好きで、その周辺を聴きまわってきたのだと思う。そういうわけで、コルトレーン周辺のちょっと前衛化した人のジャズは良く知っているのだけど、その前の、おしゃれで楽しいモダンジャズは、よく知らなかった。
しかし、知らない、ということは恐ろしい。聴いたこともないのに、「あんなのは、たいした音楽じゃないね!」などと、思いこんでしまう。で、今回、はじめて聴いてみたら、これはこれで、非常によかった、というわけ。ある意味、いままで、前衛派に洗脳されていた、といってもいいかもしれない。ぼくにとっては、新発見なのでした。
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