少年少女の目に映ったパレスチナ問題を、フィルムに焼き付けたドキュメンタリー。
イスラエル、パレスチナ双方から、何人かの子供を選び、インタビューしたものだが、少々変わった趣向。
はじめの方は、それぞれの子供に対する取材を別個に記録しているだけなのだが、そのうち、イスラエルの少年に、パレスチナの少年を取材したビデオを見せたり、パレスチナの少年に、イスラエルの少年を取材したビデオを見せるようになり、最後には、イスラエルの少年とパレスチナの少年を実際に引き合わせてしまうところまでいく。
感想。
・パレスチナ問題についての子供の見解を通して、大人が家庭で話している本音が見えてくる点が興味深い。
・パレスチナ問題、そして、その背後にある世界観に関して大きな断絶がイスラエル内部に存在することがあらわになっている点が興味深い。テレビなどみてても、世俗的なユダヤ人と、なかば狂信的なシオニストのあいだの距離を、ここまで、あらわにしたルポは、見たことがない。世俗的なユダヤ人の子供が、「嘆きの壁」で祈る信心深いユダヤ人をみて、怖がるという映像は、はじめて見た。
・イスラエルの子供の話からは、全く地に足の着かない、ある種「幻想的な」印象を受けてしまう。対して、パレスチナの子供の話からは、地に足についた現実的な印象を受けてしまう。パレスチナ人地区で何が行われているのかに対して、目隠しをされ、「きれいな世界」内部で育ったイスラエルの子供と、現実の中で全てを見てしまわざるを得ないパレスチナの子供の違いということになるのだろうが、興味深い。
なお、監督は、イスラエルで生まれ育ったが、その後米国へ渡ったユダヤ人。
現在、イスラエル政府を批判できるのは、こうした良識的なユダヤ人だけなのではないかと思うが、どうなのだろう?
そして、世界のユダヤ人内部で、パレスチナ問題にたいする見解が、現在どのような状況にあるのか(「一枚岩」とか、「対立がある」とか、あるいは、「イスラエル政府が怖くて批判したくても批判できないひとが多数」だとか、)、知りたくなってしまった。
一度目は、ジャーナリスティックな関心で、へー、こんな風なのか、などといって見ていましたが、二度目は、人間って、なんて悲しいんだろう、と、涙で目をウルウルさせながら、見てしまいました。
結構、お勧めの作品。 |