42.第三幕.その4
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■新郎新婦、最後の退場
(司会) 『それでは皆さま、新郎新婦、退席となります。皆さま方には、花道にご移動いただきまして、バブルシャワー、シャボン玉でお二人をお送りいただきたいと思います。係の者がご誘導いたしますので、どうぞ皆さま、花道のほうにご移動をお願いします』
 お客様は全員、最初の入場時に通ってきた花道に移動する。スタッフの方が、手吹きのシャボン玉セットと、電池式のシャボン玉製造器をランダムに配ってくださった。準備が整ったのを見計らい、僕とあでりーは花道のほうへ歩いていき、メインステージ出入り口のあたりで立ち止まる。皆さんはすでにテストがわりにシャボン玉を吹いている。
(司会) 『それでは、新郎新婦、退場です』
(♪BGM) キング・オブ・プライドロック〜サークル・オブ・ライフ/劇団四季
 オープニングと同じく、ここで流すBGMも、ミュージカル「ライオンキング」の曲を使った。無数のシャボン玉の舞い踊るなかで、命を賛美する荘厳な音楽が流れる。後日、DVDでこのシーンを見た知人が、「映画みたいだね」と言ってくれた。
 花道はほんの僅かしかないのに対し、曲は2分半もあるので、僕らは皆さんにあいさつをしたり、言葉を交わしたりしながら、ゆっくりと進んだ。皆さんの笑顔がとても嬉しくて、胸が熱くなった。
 人垣が切れるあたりに僕の父親が立っていて、一所懸命シャボン玉を吹いてくれていた。あでりーは、「シャボン玉なんて何年ぶりですか?」と話しかけたようだった。






 曲が終わりに近づいた時点で、皆さんから離れ、振り返る。曲のエンディングに合わせ、二人でおじぎをした。
 心の底からの満足感を感じた。それから、この楽しいひとときが終わってしまう寂しさも。


■全員での記念撮影
(司会) 『皆様、本日は本当にありがとうございました。このあと、全員揃っての記念撮影がございます。係の者がご説明いたしますので、よろしくお願いいたします。間もなく新郎新婦もそちらへ向かいます。揃っての記念撮影のあとも新郎新婦はしばらく残っておりますので、スナップ写真やお話など、ご自由にお楽しみください。なお、バスをご利用のお客様は、3時半に駐車場より出発となりますので、よろしくお願いいたします。コースター、席札立て、シャボン玉等は、今日の記念に、ぜひお持ちくださいませ』
 お客様たちは記念撮影のため別のスペースに移動し、僕ら二人はいったん控え室に戻った。
 あでりーがメイク直しをするかたわらで、僕はなんだか腑抜けのような状態になっていて、この時に何をしたのか、何を思ったのか、ほとんど覚えていない。

 記念写真は、ひな壇に並ぶのではなく、全員が固まって立っているところを、脚立の上からカメラマンが撮影する形である。ひな壇を使うと手間がかかるし、既にお酒の入っている方などは危険でもある。そこで、打合せの結果、こうした形式を取ることにした。これはいい案だったと思う。
 皆さんの待っているところへ、遅れて僕らも入っていった。やがてカメラマンの柿本さんの指示により、写真のための体系が組まれる。僕とあでりーだけは椅子に座り、ひざにペンギンを抱えての撮影となった。あでりーの抱えたペンギンは眠たいのかおとなしくしていたが、僕のほうのペンギンはけっこう暴れるので、支えているのが大変だった。何枚かを撮り、記念撮影は終了した。
 記念撮影のあとは、各自自由にスナップを撮り合った。僕ら二人はそのまま椅子に座り、交代でいろんな人たちと一緒に写真を撮った。あでりーのひざの上のペンギンは、ずっとそのままおとなしくしていた。やはりペンギンは大人気で、みんなが背中やフリッパーを触っていく。








 やがてバスの出発時刻が迫り、一人ずつ引き上げていく。僕は席を立ち、去っていく方々にあいさつをして回る。
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