35.第二幕.その2
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■ドレス色当て結果発表 & プレゼント争奪ゲーム
(司会) 『ここでいよいよ色当てクイズの結果ですが……、もうみなさまおわかりですね! 緑色のカクテルドレス、本当によくお似合いです。それでは見事、正解された方のお名前を発表させていただきます。○○様、○○様、……』
 司会者の方が、順に名前を読み上げる。呼ばれたほうはもうわかっているので、はにかんだ表情で聞いている。僕らのほうは、ああこの人が当ててくれたのか、という気持ちで発表を聞く。ここでなんと、あでりーの両親がそろって正解していることが判明し、あでりー側親類の方から、「出来レースじゃないか?!」との楽しいヤジが飛ぶ。
(司会) 『以上11名のお客様なんですけれども、しかしみなさま、プレゼントはたった一つでございますので、どうぞ11名の皆様、前のほうにお進みください』
 正解者の方々が、メインテーブルの周りに集まってこられる。これからリボンを使ったゲームで、2名まで絞り込むのだ。
(司会) 『さあ、ただいま、たくさんのリボンの束が参りました。このリボンをみなさまに一本ずつ、お持ち頂きます。どうぞみなさま、一本ずつお持ち下さいませ。さあ、早い者勝ちですから、どうぞ』
 テープは11本が束になり、司会者の方が真ん中あたりを手で握っている。その一端を11名の方に一本ずつ持っていただき、もう一方の端から2本を選んで、僕とあでりーが持つ。最後に司会者の方が握っている手を離すと、僕とあでりーが選んだのと同じリボンを選んで下さった方が残るしくみである。つまりは大きなくじ引きだ。みなさん、よくわからないながらも選んで下さる。あでりーの両親も遠慮がちにリボンをつかみ、またヤジが飛ぶ。
(司会) 『それでは今から、一斉にリボンを引っ張っていただきます。HARUNAさんとあでりーさんとつながれたリボンだけが、ピーンと張ることになります。よろしいでしょうか。HARUNAさんのかけ声で、一斉にリボンを引いていただきます。それでは参りますよ』
(HARUNA)『じゃ、いきます。せーの!!』

 僕のかけ声で、司会者の方が握っている手を離す。僕ら二人とつながっていないリボンははらりと下に落ち、2本だけがピーンと張られて残る。
(1)全11名の方がリボンを握り、僕ら二人は別の一端を一本ずつ持つ


(2)司会者の方がリボンを離す


(3)僕ら二人と同じリボンを持った人だけが残る
 当選者は、HARUNA側友人のMAさん、それからあでりーの元上司であるMUさんのお二人だった。お二方から歓声があがり、落選の方からも笑顔がもれる。ねらった通りの展開だった。

 使い終わったリボンをみんなでかたづける。当選者二人が他のみなさんに対し、申し訳なさそうなそぶりになっているのがなんだか微笑ましい。
(司会) 『さあ見事、プレゼント獲得チャレンジゲームへのチャレンジャーが決まりました。申し訳ございません、その他のお客様、残念賞は気持ちだけとなっておりますので、どうぞお席のほうにお進みくださいませ』
 あでりーの両親も、笑いながら席に戻っていく。

 そしてここからいよいよ、1名を決めるゲームがおこなわれる。
(司会) 『さあ、どちらが勝ち残るか。みなさん、応援よろしくお願いします。ゲームの説明は、HARUNAさん、おまかせしました』
 ゲームは、ぐらぐらする台の上にペンギンの人形を交互に置いていき、台が揺れてペンギンを落としたほうが負けになるという単純なものだ。知人がドイツみやげに下さったもので、箱には「PLITSCH-PLATSCH PINGUIN」と書かれている。ドイツ語は読めないので、適当に「ペンギンぐらぐらゲーム」と僕らは呼んでいた。
 マイクが手渡され、予定通り、ここからは僕が進行役を務める。

(HARUNA)『ゲームなんですけれども、例によって、ペンギンのゲームでございます』

 またか、という声がちらほら聞こえる。

(HARUNA)『こちらにですね、こういう、台があります。これは氷山を模しているんですが、支えている紙をとりますと、こういう風にぐらぐらします。そして、この台にこのペンギンの人形を……もうおわかりですね、交互に置いていきます。置いた瞬間にがらがらっと崩れて、一体でもペンギンが落ちたほうが負けとなります』

 あでりーが、僕の説明にあわせてゲームを組み立て、持ち上げたり人形を置いてみせたりなど、フォローをしてくれる。
X
(HARUNA)『どうぞ緊張なさらず、お二人にがんばっていただきたいと思います。これはちなみにドイツのゲームでして、我々二人の知人がドイツにいらっしゃるんですけれども、おみやげに買ってきて下さったゲームです。日本にはもちろん、売ってはおりません』

 さりげなく自慢をはさんでみたりする。

(HARUNA)『それでこのペンギンの人形ですが、あまり近くで見ないようにしてください。意外に可愛くありませんので』

 そう、ペンギンの人形は白黒二色の成形なのだが、目の部分が白くてなんだか不気味なのである。
 とにかく説明を終え、じゃんけんで負けたMAさんから先に置いていくことに決まる。時間節約のため、僕とあでりーが何体かペンギンを置いた状態からスタートをする。
(司会) 『さあいよいよ、戦いがはじまります』
 お二人とも、意外にあっさりと大胆にペンギンを置いていく。まあこのゲームは、最初の10個くらいは簡単に置けるのだが、台に乗っているペンギンの数が多くなるにつれ、台の揺らぎも大きくなってくる。他の皆さんも熱心に見ていて下さるようで、台が揺れるたびに、「おお〜」という声がわき起こる。それでも、変わらずにお二人とも大胆に置いていく。
【左がMAさん、右がMUさん】
 ここで司会者の方が、あるご指摘をしてくださった。
(司会) 『HARUNAさん、なんと、MAさんとMUさん、下のお名前が一緒なので、○○(同じお名前)対決となっています!』
 言われるまでまったく気づかなかった。さらに会場は盛り上がってきた様子だ。
 そうこうしているうちに、さらに揺れが激しくなってきた。さすがにお二人のペンギンを置く指も慎重になる。
(HARUNA)『さあ、一体でも落としたら負けですよ』

 軽くプレッシャーを与えながら実況はつづく。この調子だとかなり最後までもつれるかと思い、

(HARUNA)『最後の4つくらいが勝負です。まだまだいけるでしょう』

 などと話した瞬間、MAさんの置いたあとの台が大きく揺れ、一気に4〜5体ほどのペンギンが崩れ落ちた。会場から大きな歓声があがる。

(HARUNA)『ああ〜! 勝ったのは、MUさんです!』
【MAさんがペンギンを置いた瞬間……】


【台が大きく揺れ、ペンギンが崩れ落ちた!】


【勝ったのはMUさん!】
 勝負がつき、BGMが鳴りやんでファンファーレが鳴り響く。このシーンはBGM担当のSさんと、事前に何度も打合せをおこなった。ゲームの勝敗がついた時点で素早くDVDの「次へ」ボタンを押し、ファンファーレの音を鳴らしてもらうように頼んであったのだ。タイミングばっちり、お見事、Sさん!
(司会) 『おめでとうございます!』
 拍手が鳴り響き、MUさんが笑顔で周囲にお辞儀をされる。
(司会) 『さあ、見事勝者となられましたMUさんには、プレゼントの目録が、素敵なドレスをお召しになりましたあでりーさんから贈られます。幸せ賞は、今日は静岡までお越し頂いておりますので、静岡名産、高級メロンでございます。お受け取り下さい』
 あでりーがMUさんに目録を手渡す。MUさんとあでりーは以前同じ職場で働き、あでりーがとてもお世話になった方である。目録を手渡しながら、いろいろと言葉を交わしている。
(司会) 『どうぞみなさま、本日のナンバーワンチャレンジャー、MUさんにどうぞ大きな拍手をお贈り下さい』
 MUさんは終始にこやかな表情だった。会場もうまく盛り上がってくれた。思えばこのゲーム、まったく結婚式には向かないゲームである。なにせ、崩れるとか落ちるとか、結婚式の場では禁忌とされる概念や言葉の数々が飛び交うのだ。また、二人用のゲームなので、まず最初に二人に絞り込む必要もあり、手間がかかってしまう。それでも僕はどうしてもこのゲームをやりたかった。やり終えた今、やはり思いを貫いてよかったと思う。

 MUさんと僕ら二人で記念写真を撮り、それぞれ自分達の席に戻る。
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