| 34.第二幕.その1 |
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| ■ドレス色当てゲーム、そして新郎も中座 | |
| 新婦中座のあと、僕はそのまま新郎席に残り、皆さんと話の続きを楽しんだ。名古屋港水族館に勤務されているKさんからペンギン帽子をいただいたので、それをかぶってポーズを決めたりしていた。 | |
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| (司会) 『さて、お色直しのあとには、ケーキ入刀のコーナーが控えております。ここで皆様から、ケーキに添えるお飲物のリクエストを頂戴したいと思います。最初にお席にお配りしてありました袋の中に、お飲み物のリクエスト用紙が入っていることと思います。用紙に書かれております中から、お好きなものをお選びください。のちほど、デザートタイムに、こちらのウェディングケーキをお召し上がり頂きたいと思います。 それからここでもうひとつ、皆様にはゲームでお楽しみいただきたいと思います。ゲームの説明は、新郎のHARUNAさんにお願いいたします』 |
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| 司会者の方の言葉のあと、ゲームの説明をおこなった。 (HARUNA)『このあと、新婦がお色直しをして登場します。カクテルドレスに着替えて出てくるんですが、その色をお当ていただきたいという簡単なゲームです。先にお配りしておりました袋の中に、色当て回答カードというものがあります。ペンギンの絵柄とテーブルの名前が色別に描かれています。この中に5種類の色が書かれています。これだと思うものに丸をつけていただいて、のちほどスタッフの方が回収に参りますので、お渡しください。正解者の中から、さらにゲームをやっていただいて、1名の方に素晴らしいプレゼントが用意されておりますので、皆様、ふるってご参加のほど、よろしくお願いいたします。 えー、ひとつ、色当てのヒントを出しておきますと……、この会場のどこかにある色、です!』 |
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| (司会) 『すいませんHARUNAさん、ぜんぜんヒントになってない気がしますが……』 | |
| 司会者の方から、絶妙なツッコミが入る。 | |
| (HARUNA)『そうですか、すみません。みなさま、どうかよろしくお願いいたします』 |
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| ちなみにここで使用するドレス色当てカード・飲み物注文カードは、「23.ついにあと一月」で紹介したものである。 | |
| (司会) 『ありがとうございます。さあみなさま、こんな色とりどりのベゴニア温室の中で、会場内の色という、たいへん難しいヒントが登場しました。 くりかえしますが、皆様にお願いするのはふたつです。ケーキに添えるお飲物をお選びいただくこと、それから、新婦の着るドレスの色をお選びいただくこと、この二つです。どうぞみなさま、よろしくお願いいたします。 それでは、新婦にひきつづき、新郎のHARUNAさんもこれより中座となります』 |
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| ここで僕は、音響席奥にあるグッズ置き場に行き、大きなペンギンのぬいぐるみを2つ運んできた。これは、退席中の新郎新婦のかわりに、二人の席に置いておくものだ。一体1メートル近くあるので、椅子に置くとちょうどいい高さになる。 その後、僕はスタッフ出入り口のあたりからひっそりと退場し、控え室に移った。 |
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| (司会) 『しばらくの間はペンギンがメインテーブルのお留守番をさせて頂きますが、式後、車の運転がございますので、アルコール類は勧めないようにお願い申し上げます』 | |
| 司会者の方のアドリブで、新郎新婦不在の間をうまく取り持っていただいた。皆さん、和やかにご歓談頂いたことが、あとで聞いた話や撮影されたビデオから伝わってきた。 | |
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| 僕が控え室に戻ると、あでりーのお色直しが進行していた。用意していたドレスに着替え、それに合わせてメイク、ヘアスタイルが変えられていく。和装とおなじく、アルタモーダさんの手際は素晴らしい。見る間にあでりーの準備が整った。 僕のほうは、和装を脱がしてもらい、ペンギンタキシードの衣装に身を包む。タキシードのシャツとズボンは自分で身につけ、首にアスコットタイ風に巻くスカーフ、カフスボタンのあたりをスタッフの方にやってもらった。上着をはおり、最後にペンギンのバッジを、ポケットから顔を見せているようにつけた。これで完成である。さあ、周到に準備したこの衣装がウケるかどうか、勝負の時がやってきた。 あでりーのドレス姿にはもう、何も言うことはない。レイナ三城さんの素晴らしいドレスは今日、最高の輝きを放っている。 会場では、スタッフの方が2種類の用紙を回収して下さった。ドレス色当て回答カードについては、正解者のカードが選び出され、司会者に渡される。希望ドリンク用紙からは、各ドリンクの数が計算され、喫茶担当の方に伝えられる。すべて順調に進んでいる。やがてスタッフの方から、色当ての回答者が11名いらっしゃることが控え室に伝えられた。事前に危惧していたのは、回答者が1人、あるいは0人だった場合にどうしようかということである。この一報を聞き、僕とあでりーは安堵の声をあげた。 再入場の時間が近づいた時点で、僕ら二人はこっそり控え室を出て、宴席のすぐ近くにある場所で写真撮影をおこなった。あとは、司会者の方からの合図を待つばかりである。 |
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| ■カクテルドレスにて再入場 | |
| (司会) 『みなさま、たいへん長らくお待たせいたしました。これより、新郎新婦、装いを新たに、ご入場となります。はたして、新婦のドレスの色は何色でしょうか、どうぞご注目ください。 なお、新郎新婦のお二人が皆さまのテーブルへご挨拶に伺いますので、どうぞ温かい拍手やお言葉でお迎えください』 |
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| (♪BGM) The Signs of Love/Dreams Come True | |
| 入場口に立つと、会場から大きな拍手と歓声があがった。一気に場内が華やいだ雰囲気に包まれる。やはり衆目はあでりーのドレスに注がれているようだ。色当ての結果を知りたいのはもちろんだが、あでやかなドレス姿はそれだけで注目に値する。二人して気に入ったドレスである。僕らは堂々と胸を張り、テーブルの間を歩いていく。 BGMはあでりーの選曲で、彼女が持っていたCDの中から選んでくれた。曲調も歌詞の内容もともに素晴らしく、このシーンにぴったりだった。 |
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| (司会) 『皆様、新婦のあでりーさんにばかり目を奪われがちですが、どうぞ新郎のHARUNAさんにもご注目ください。なにやら普通のタキシードとは、若干異なった衣裳になっています。そで口、えり元、そして全体をよくご覧下さい。なにかに似ていませんでしょうか』 | |
| お願いした通りのアナウンスをしてもらう。僕の衣装もこの日のために知恵を絞って細工をしたのだ。あでりーに負けてはいられない。僕は袖口に手を隠してなるべくペンギンのフリッパー(羽根)のように見える格好をし、テーブルを移るたびにポケットにつけたペンギンバッジを見せびらかした。 ペンギンの姿になっていることに気づいてもらえるかどうかが不安だったけれど、みなさんすぐにわかっていただけたようで、すごく嬉しかった。ポケットのペンギンバッジを見せると、多くの人がアップで写真を撮影される。ペンギン仲間のテーブルでは、一斉にシャッター音が鳴った。このテーブルでウケているのが、何より嬉しかった。 |
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| すべてのテーブルをまわり、新郎新婦席に戻ると、まだウェディングペンギンのぬいぐるみが座っていた。慌ててスタッフの方が一人で持っていこうとするが、大きいのでなかなか一度に二体を持てず、とっさにカメラマンの柿本さんが手を貸して下さった。 |
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| (司会) 『お留守番のペンギンさんには、本日の本当の主人公お二人に、お席をお譲りいただきましょう。装いも新たに、お二人、メインテーブルにご到着でございます。どうぞみなさま、新たな祝福を、お二人にお贈り下さい』 | |
| テーブルの前に立ち、二人でお辞儀をし、席につく。 |
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| (♪BGM終了) | |
| ■ケーキセレモニー | |
| (司会) 『ここでお二人は、ケーキセレモニーへと、お進みいただきます。今日はお二人に、ケーキにご入刀ではなく、別のかたちでこのケーキを完成させていただこうと思います。それでは、よろしくお願いいたします』 | |
| (♪BGM) 永遠の人に捧げる歌/コモドアーズ | |
| 僕ら二人は席を離れ、メインスペースに置いてあるケーキの両脇に立つ。ケーキを作ったパティシエさんがそばに控えており、ペンギンの目の部分に生クリームをつけて下さった。僕とあでりーはケーキのそばに置いてあるチョコボールを一つずつつまみ、ケーキに近づく。なにが起こるのかよくわからないお客さんからざわめきがもれる。二人の手がペンギンの目のほうに近づくと、「目だ」「そうか」という声が聞こえてきた。両方の目がしっかりと生クリームの塗られた位置におさまると、お客様から歓声が沸き上がった。 | |
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| (司会) 『どうぞみなさま、あたたかい拍手をお贈り下さい』 | |
| 拍手のなか、もう一体のペンギンのほうにも、目玉を入れる。 | |
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| (司会) 『これが本当の“およめ入り”でございます。どうぞみなさま、大きな拍手をお贈り下さい』 | |
| 苦労して考えたケーキセレモニーもこれで無事終了した。安堵の気持ちを胸に、皆様に頭を下げる。 | |
| (司会) 『どうもありがとうございました。このケーキは、のちほど、皆様のもとへお配りいたしますので、お楽しみにお待ちください』 | |
| (♪BGM終了) | |
| パティシエがケーキと共に退場し、僕ら二人も席に戻った。 | |
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