26.あと半月
2006 6
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■DVD完成

 事前の打ち合わせをすべて終え、準備もいよいよ大詰めに入った。
 あでりーは、彼女が調べてくれた貸し切りバスの料金、引き出物で購入した品々の料金、等の支払いを済ませた。それから、署名式で使用する色紙について、招待客が名前とメッセージを書く位置を間違えないよう、テーブルごとの色で線を引き、スペースを区切ってくれた。
 僕は、BGMとビデオを収めたDVDをようやく完成させた。大略は5月末には出来上がっていたのだが、音量合わせ、DVDのメニュー作成など、細かい調整を続け、DVDディスクへの焼き込みまでのすべての作業を終えた。

 
■プリザーブドフラワー

 6月16日、あでりーの実家近くにある、プリザーブドフラワーの教室「ベーシック」さんを訪れた。式内であでりーの持つブーケ、僕が胸に挿すブートニア、それからお互いの両親に渡すためのアレンジメントを作る予定だった。

 プリザーブドフラワーとは、生花の花の部分だけ切り取ったものを脱水脱色したのち、保存剤を注入し、色をつけたものである。ドライフラワーと違い、見栄えは咲いている状態のまま、数年も保存がきく。今回僕らのおこなった作業は、上記の行程を終えて出来上がった大量のプリザーブドフラワーを加工し、ブーケやブートニアを作ることである。

 使う花はバラである。まずはお互いに、好きな色のバラを選ぶところからはじまった。
 つぎに、花の中央に細い針金を挿し、下まで貫通させる。次にまた別の針金を花の下部に横から挿し、そこに垂直方向に、上から見ると十文字になるよう、もう一本の針金を挿す。十文字に挿した針金を花の部分で下方に折り曲げ、花の中心に挿した針金と共にまとめる。まとめた針金に緑色のテープを巻き付けると、自由に曲げて固定できる茎となる。これを使い、様々な形を作っていくのだ。

 花を3本仕上げたあと、今度は葉っぱや果実などに針金を取り付け、やはり自由に曲げて形を作るためのパーツを作っていく。こうして一通りのパーツが仕上がると、先生は僕の目の前に、四角い小皿が二つ乗ったプレートを置いた。小皿の一方にはマリモのような球形の物体が入っている。発砲スチロールか固めのスポンジのような素材だ。もう一方のお皿にも同じ素材が入っており、こちらは四角い。
 先生は、さあ、今作ったパーツを使って、ここにアレンジメントを作っていきましょう、とおっしゃった。思い出したが、事前の打ち合わせの時に、両親用のアレンジメントとして、おおよそどういう形のものがいいかを聞かれたことがあった。僕はこの小皿に花を飾るタイプのものを選び、あでりーは額縁タイプのものを選んでいた。
 
【花に針金を挿すところ】
【できあがったパーツ群(奥)と、アレンジ用のお皿(手前)】
【あでりーの作ったパーツ群】
 
 
 僕もあでりーも、ここですこし考え込んでしまう。好きなようにやっていいとは言われるものの、絵を描いたことのない者がいきなり大きなキャンバスを与えられたようで、さてどこから手をつけていいものやらと思案にくれた。それでもなんとか方針をたて、花に手を伸ばし、針金製の茎をスポンジに挿していく。

 先生の指導ははとても優しく、わかりやすかった。この先生の素晴らしいところは、やり方を押しつけないところだ。正解などどこにもない、それぞれの人ごとに形があって当然なのだ、という方針で、それでもポイントはいくつか与えてくれる。この日初めての体験だった僕も、わからないながら作っていくうち、何をどうすればいいのか、だんだんとわかりはじめてきた。

 四角いほうのスポンジに花3つを挿し、そのまわりに葉っぱを飾る。もういっぽうにはシンプルに果実だけをつけ、両方のお皿を長い葉っぱでつなぐようにすると、なんとか格好がついた。あでりーのほうは二回目ということもあって、額縁の中に自分なりの花をきれいに咲かせていた。
 お昼前に二人とも作業を終え、めでたくアレンジメントは完成した。これでいったん休憩となり、食事のあと、午後からはブーケとブートニアの製作にかかることになった。
 
【一所懸命、作っているところ】
【完成!】


 ブーケはサイズが大きいので、パーツ作りが大変だった。花に針金を挿し、緑色のテープを巻く。最初はこのテープ巻きがうまくできずに仕上がりが汚くなっていたが、そのうちコツがわかってきて、素早くきれいに出来るようになった。僕はこのあとテーピングの鬼と化し、あでりーの分まではりきってテープ巻きに精を出した。

 花のうち、ひときわ大きなものについては、花弁と花弁の間に脱脂綿を小さく丸めて押し込む。これにより、花がより大きくきれいに開いて見えるのだ。逆に、花びらを数枚取ったものを重ねて細く丸め、小さな花を作る作業もある。
 パーツは花や葉っぱだけではなく、飾りとなるリボンやビーズなど、様々な種類がある。こうして作ったパーツを、あでりーが一つにまとめはじめた。すごい。すこしずつブーケの形になっていく。
 
【ふたたびパーツ作り】
【ひたすらテープを巻く僕】
【出来上がったパーツ】
【ブーケの形に束ねはじめるあでりー。僕はひたすらテーピング】
【途中段階のブーケ。完成まであともう少し】
 
 
 午後の作業も佳境を迎えたころ、僕は仕事のため先に帰り、あとはあでりーが一人で仕上げてくれることになった。申し訳ない気持ちともう少しやっていたい気持ちとで後ろ髪を引かれながら、教室をあとにした。
 あでりーはそれからブーケをしあげ、さらにはブートニアも作ってくれた。僕が帰ったあとも写真をたくさん撮ってくれたので、帰ってきてから二人で製作過程を確認することができた。
 
【最後の作業をおこなうあでりー】
【こちらはブートニア】
【ブーケ、ブートニア、共に完成。見よこの大きさを!】

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