■キャンドルをめぐる冒険
年が明け、予定していた旅行は僕の体調不良のため延期となった。しばらくゆっくりと体を休め、2月に入ってからふたたび式の準備をぽつぽつと再開した。
ケーキ入刀の代わりに何かいい演出はないかと考えていた。そこで、ペンギンケーキにチョコレートか何かの目玉を二人で入れる、というアイデアを思いついた。ペンギンの目の部分に円を描いておいてもらい、当日のセレモニーで二人がチョコレート玉を埋め込むという、選挙当選の目入れのようなイメージである。これが可能かどうか、ケーキ屋のグリフォンさんにメールで確認をとった。
キャンドルサービスについても、僕らオリジナルな演出は何かないものかと頭を悩ませていた。一つの案はキャンドルリレーだった。出席者一人一人に小さなキャンドルを渡し、火を順番に移していくというものだ。亀山ろうそくで、結婚式に使うキャンドルが売られていることを知り、名古屋駅前にあるショールームを訪れてみた。
ショールームは一般向けのものではなかったのだが、電話で事情を話すと、すぐに予約を取り付けてもらえた。現地に行ってみると、大小さまざまなろうそく、というかキャンドルが並べられていた。火をともすと走馬燈のように模様が浮き出るキャンドルがきれいだった。それから目を惹いたのは、火をともすとメッセージが現れるキャンドルである。こちらを買って帰ろうかとも思った矢先、ふと、これなら自分で作れるかもと考え、何も買わずに帰った。
早速、実験をはじめた。おちょこぐらいの透明なカップの底に裏面からメッセージを貼り付け、カップの中に溶かした蝋(ろう)を流し込む。蝋が固まると不透明になり、底のメッセージは読めない。蝋にうずめた芯に火をつけ、中の蝋が溶けると、次第に底のメッセージが見えてくる、という仕掛けを考えた。適当なカップを探したり、芯をうまく立てる工夫をしながら何度も実験を繰り返したが、どうもうまくいかなかった。試行錯誤のすえ、これはあきらめようということになった。
■あいさつ回り
次なる大仕事は、式にご招待する方々へのあいさつ回りである。僕は結婚式の前に、親類関係についてはすべての方にお会いしようと思っていた。僕らの都合で、それぞれの出身地とはまったく関係のない静岡県で式を挙げることを決めた。そのことについて、実際に一人一人にお会いして、遠い場所になりますがよろしくお願いします、ということを伝えたいと思った。僕の両親などは、「なにもそこまでやらなくても」と反対したが、僕はどうしてもそうしたかった。
僕とあでりーとで、それぞれの親類についてのスケジュールを調整する作業に入った。僕のほうはすべて兵庫なので、実家の両親にお願いして都合を確認してもらった。
正確な住所や名前がわからない人についてはお互いの両親に確認し、友人関係についてもメール等で確認をおこなった。
まずは兵庫の僕の実家方面から始めることになった。3月3日、親戚ではないが兵庫の芦屋に住んでいらっしゃるOさん宅へ向かった。僕らの出会いのきっかけとなったペンギンアート展の創始者であり、出席と共に、是非スピーチをとお願いした。Oさんは照れながらも快諾して下さり、さらには結婚記念として貴重なペンギングッズを頂戴した。
翌3月4日は父方の伯父に会い、3月5日は僕の姉と母方の叔父宅を訪れた。あまり帰省していなかった僕は、叔父に会うのは何十年ぶり、姉にさえ5年以上会っていなかった。叔父の家には僕の祖母が住んでおり、会うのはやはり数十年ぶりだった。昨年から体調を崩していたらしいが、僕らの訪れた日は奇跡的に元気で、僕の姿を見て、「○○君が結婚か。夢みたいやな」とつぶやいた。一緒に行った僕の母は涙を流していた。僕も同じだった。
さらに翌日の3月6日には、父方の叔母宅を訪れ、さらに父方の従兄宅を訪れたがこちらは留守だった。とりあえず僕の側は、これで一通り終了となった。
名古屋に帰り、次はあでりー側の親戚を順番にめぐることになった。3月11日に名古屋市内に住む母方叔母、14日に新城市の母方伯母、15日に父方大叔母、と順調に訪問を重ねた。お名前や住所に
どこへ行っても温かく出迎えてくださり、会う前の緊張はすぐにほぐれたものだった。