8.次々と
2005 9
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■プリザーブドフラワー

 会場が決まり、衣装選びも軌道に乗り始めた。僕らは手分けをして、さらに次の段階へと準備を進めることにした。
 僕は、会場となる加茂花菖蒲園さんとの打ち合わせのための資料を作成した。初回の打ち合わせは9月末から10月あたりを想定し、それまでに我々の要望の詳細内容を伝えておこうと思った。式の日時、招待客の概数、メインステージとして使いたい場所、希望する概算料金、食事内容など、この時点で想定できる項目をすべて網羅した。もちろん、本物のペンギンを式の中で使わせてもらいたいことも書いておいた。

 あでりーは、プリザーブドフラワーの教室にでかけた。最初聞いたときは、「ブリザード」フラワーってなんだろう? と思ったぐらい、僕の知識は浅かった。ブリザードならぬ「プリザーブド」フラワーとは、生花に特殊な処理を施し、数年はそのままの状態を保つことができるお花のことである。地元で入門的なレッスンが開催されるのをみつけ、あでりー一人で行ってきたのだが、これが収穫大であった。
 結婚式で使うさまざまなものに、このプリザーブドフラワーが応用できるらしい。ブーケはもちろんのこと、ウエルカムボードから、種々の飾りつけ、プレゼント用の花束、リングピロー、引き出物やネームスタンドにもできる。高砂に飾ってもいいし、両親へのプレゼントにも最適だ。

 以前からあでりーは自分でブーケを作りたいと考えていたようだが、普通の生花だと式の前日に時間を取られ、保存にも気をつけなくてはならず、どうするか悩んでいたらしい。その点プリザーブドフラワーなら、1ヶ月前に作って取っておける。両親に渡す花束も、生花だと持ち帰りや日持ちの点で難しいけれど、プリザーブドフラワーなら鉢植えタイプで手作りのものを渡せる。すっかり気に入って帰ってきた。
 上記の報告を一通り終えたあと、彼女から提案があった。ブーケと両親に渡すための花づくりを一緒にやらないかというものだった。式の一ヶ月前ぐらいに、今回習ったのと同じ教室に行き、二人でレッスンを受けながら作っていく。実際には式の2週間前ぐらいに行くことになるのだが、この時点でそれほど気乗りのしていなかった僕も、結局は大満足で花づくりを終えることになる。

〜 この日にあでりーが作ったコサージュ 〜



■入籍に関わること

 入籍の時期をどうするか。それは、6月にあでりーの実家にあいさつに行った際、義父から出された宿題だった。僕らは二人で話し合った結果、やはり新婚旅行前に入籍を済ませようということになった。そして、どうせならば意味のある日にしたいといろいろと考えた末、二人が出会った11月5日で落ち着いた。
 この決定により、また様々なことが動き始める。結納を交わさないことは先に書いたが、結婚前にお互いの両親どうしが顔合わせをする機会は必要だと考えており、そのこともお互いの両親に話し、了解を得ていた。11/5に入籍をするなら、それより前に顔合わせの機会を設けなければいけない。時間にそれほど余裕はない。

 僕としては、どちらかの家で一度対面すれば十分だと思っていた。この時期はかなり忙しくなることもあって、僕の実家のほうへは忙しい時期が過ぎてからゆっくり、という感じで考えていた。が、義父はそうではなく、お互いの実家に一度ずつ顔見せをすることが必要だという考えだった。このあたりについて、ふたたび僕は彼女の両親と話をし、結果、10月中旬にあでりーの実家で食事会をおこない、その後、10月末に兵庫の僕の実家に行く、ということに決定した。


■いろんなところへ

 式に出席してもらう方へ、少しずつメールで連絡を取り始めた。いずれも色よい返事ばかりだった。それから、遠方からの招待客のため、会場近くで宿泊する場所を探してみた。新幹線の掛川駅ちかくで、2つほど大きなホテルがあった。「掛川グランドホテル」と「パレスホテル掛川」である。ホテルでは他にも、会場へのバスの手配、着物の着付け、ウェディングケーキの用意などをしてもらえるかを確認したかったため、あでりーが質問事項をまとめ、メールを出してくれた。返事はすぐに来て、どちらもおおよそ望んだことは実現できそうだった。

 あでりーの両親と二度目の話合いをした同じ日、僕らはあでりーの実家近くにある柿本写真館に足を運んだ。ここは、あでりーが小さい頃からなにかにつけお世話になっている写真屋さんで、結婚の話が決まった早い段階で、式の写真はここに頼みたいという彼女の要望があった。
 カメラマンの柿本さんは僕と同年代ぐらいのさわやかな男性で、にこやかにお話をすることができた。そこで僕たちは、会場まで出張していただくことの了承を得、その場合の料金が概算でどのくらいになるのかをお聞きした。

 その後は、貸衣装屋さんへと足を運んだ。「まきやす」さんというお店である。こちらで、白無垢とドレスを数着ずつ、試着させてもらった。白無垢についてはけっこういい柄のものがあったが、ドレスは残念ながら、レイナ三城さんのものと比べるとどれも見劣りするものばかりだった。
 不肖ながら僕も、紋付き袴と燕尾服を試着させてもらった。どちらも、着るのは生まれて初めてのことである。袴は黒と白の二色を試したが、新婦が白を着るなら新郎は黒のほうがしっくりきそうだった。

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