3.会場さがし
2005 2〜3
←前へ  次へ→
■比較検討

 僕の提案に、あでりーは少し驚きながらも、「それならいいかもね」と乗り気になってくれた。
 さっそく調べ物をはじめた。宗教を絡めない人前式にしたいこと、挙式と披露宴を兼ねた総合パーティー形式にしたいこと、式の中でなんらかの形でペンギンに登場してもらいたいこと、式の時期は2006年3月ぐらいを考えていること、などを条件に、様々な水族館に問い合わせをし、結婚式をおこなうことができるかどうかを尋ねた。

 水族館の返事はさまざまだった。以下にまとめてみる。
 
鳥羽水族館 過去に一度事例があるが、当時の担当者はおらず、実現できたとしても膨大な金額がかかる。
鴨川シーワールド 年に2〜3組のみ受け付ける。キリスト教形式が基本。ペンギンを水槽の外で使うなら、夏場は難しい。
新江ノ島水族館 閉館後、スペースレンタルという形で、挙式が可能。ただし、ペンギン水槽の周辺は狭く、スペースとしては不適当。
サンシャイン国際水族館 閉館後、スペースレンタルという形で、挙式が可能。
海遊館 大水槽を眺めるVIPルームが、開園時間中に使用可能。
名古屋港水族館 過去に一度事例があるが、当時の担当者がいない。水槽前は使えるが、ライトアップは不可。水槽の隣の標本ルーム・ペンギンライブラリーは比較的自由に使えそうだが、開館時間中は難しい。レストランは自由にアレンジ可能であり、水族館閉園後も使えるため、披露宴会場としては適している。
南知多ビーチランド 過去に一度、「初夢実現」的に実施したことがある。閉園後の実施となる。大水槽前の披露宴は可能。ペンギンは、フンボルトなら外で使うことも可能。
 
 新江ノ島、サンシャイン、海遊館などのように、もともとスペースレンタルとしての利用を考慮しており、挙式も何組か実施されているところもあれば、ほとんど事例のないところもあった。
 これらのうち、関東と関西に位置するものは、残念ながら候補から外れた。僕(HARUNA)の親類が兵庫県、妻(あでりー)の親類が愛知県と東京、という具合に分かれており、挙式の場所としては、やはり中間地である東海地域が妥当であろうという判断からだった。

 名古屋港水族館に知り合いがいらっしゃったので、話をうかがってみた。披露宴会場としてレストランが比較的自由に使えそうだが、ペンギンを絡めた式、という点においては思い通りにおこなうのは難しそうだという印象を受けた。
 南知多ビーチランドにも足を運び、担当の方とお話をさせていただいたが、やはり思った感じの式にはなりそうになかった。


■掛川花鳥園、そして加茂花菖蒲園へ

 それまで水族館ということで調査を進めていたが、ひとつ思いついた場所があった。掛川花鳥園である。ここは水族館ではないものの、ペンギンが飼育されており、しかも彼らと自由に触れ合うことができる全国でも珍しいところだ。それまでに三度ほど訪れたことがあり、花でいっぱいの温室は、披露宴会場としては申し分がなかった。場所としてすこし関東側に寄りすぎているものの、ぎりぎり許容範囲である。一度、遊びがてら行ってみることにした。

 事前に約束をとりつけておいたので、話し合いはスムーズにはじまった。ただ、過去に事例はないこと、温室の床は水やりなどでかなり汚れているので、衣装が心配であること、鳥がいるため大きな音響は難しいことなどを聞かされた。さらに、開園時間内なら人員が割けるが、閉園後は難しいこと、逆に、開園時間中は自由にスペースを使うのは難しいこと、くわえて、同経営の別施設である神戸花鳥園がちょうど我々の挙式予定時期に開園するため、忙しくて人員を割けないかもしれないことなどを聞かされ、実質的に、ここでの実施は難しいという雰囲気だった。

 ここで、担当のスタッフの方がひとこと付け加えた。
「当社の系列で、加茂花菖蒲園という場所があります。もしからしたら、そこなら可能かもしれません」
 加茂花菖蒲園という場所の存在は知っていた。花菖蒲を見ることのできる施設で、昔ながらの庄屋屋敷も残されている。ただ、雰囲気は純和風という感じで、僕の描く式のイメージとは合致しない。それでも、一度行ってみますか、と言ってくださったので、お願いします、と車に乗り込んだ。

 加茂花菖蒲園に到着した。そこには庄屋屋敷のほかに、掛川花鳥園と同じような温室があった。二人でその中に入った瞬間、それまであまり気乗りしていなかった気持ちが一気に変化した。
 そこは花と緑にあふれた、楽園とも呼べる場所であった。おまけに、庄屋料理というおもてなし料理がここなら用意できるとのことだった。さらに、4月〜6月の菖蒲の開花時期以外は閉鎖されており、この時期をはずせば貸し切りにすることも可能となる。
 素晴らしい会場、そして様々な好条件がそろっていた。
 僕ら二人は思った。
「ここで結婚式を挙げたい!」

 加茂花菖蒲園の担当の方はいらっしゃらなかったため、案内して下さった花鳥園のスタッフさんに、事情を説明してもらうことになった。帰宅後、あらためてメールを出すと、数日後に返事が来た。4月上旬には使用できるか否かの返事ができるでしょう、とのことだった。

  
 
〜 この日に撮影した、加茂花菖蒲園の温室 〜





←前へ  次へ→