結婚の約束を交わしたのは、2005年2月のことだった。交際を始めてからちょうど2年が経過していた。付き合おう、と切り出した時と同じように緊張しながら僕が話し、彼女がOKをしてくれた。
さてこれからどうしよう、という話になったときにあでりーは、「式は無し、ってことでいいんだよね?」と聞いてきた。お互いに派手なことは好きではなく、僕も通常の結婚式ならするつもりはなかった。ただひとつ、やってみたい形の式があった。
僕とあでりーが出会ったきっかけは、2002年の秋におこなわれた、「ペンギンアート展」という展示会である。プロアマ問わず、日本中のペンギン好きの作品が一同に会する催しだ。毎年芦屋で開かれていたものが、その年だけ名古屋で開催された。有志が集まって作業しているものだから、とにかく人手が足りない。ちょうどそのころ無職だった僕が店番を頼まれ、一緒に店に立ってくれたのがあでりーだった。
お互いにペンギン好きで、過去のペンギンアート展の常連だった。同一の趣味から話が合い、つきあい始めてからも、水族館や動物園など、ペンギンに関連する場所によくでかけた。出会いのきっかけにはじまり、二人の生活の隅々にまで、ペンギンが浸透していた。
「水族館で結婚式がしたいんだけど」
僕はあでりーにそう持ちかけた。