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海と風の詩 番外編
〜濡れた浜辺で初エッチ 1〜


 わずかに雨の味がするキスを繰り返しているうち、想いを確かめあった恋人達が自然とそうするように、サンジの応える唇の感触にその口内に熱いゾロの舌が入り込んできた。
 とても自分よりも幾つも年下の子供が求めるような、可愛らしい口付けではなく、それは明らかにサンジの体温を上げていく、激しくて深い行為だった。
 気が付けば、いまだに裸のまま晒されたサンジの肌をゾロの分厚い手が這いまわっていた。その手は、濡れて滴が伝っている体を丹念に摩り、首筋を指先が掠めていき、雨に軋んだ髪を掴まれて。ゾロの手が、サンジの存在全てを確かめるように、優しく動いていく。

 (ヤバイ・・・・。)

 息苦しいほどのキスを繰り返すうちに、ぼんやりと体の力が抜けてくるのを自覚しながら、サンジは思った。

 (コイツ・・・、ここでヤル気だ・・・。)

 確信できるほどに、ゾロのその行為は熱が篭っていて、繰り返される口付けからも、サンジはゾロが自分に何を求めているのか、無視することは出来なかった。
 それに、ついさっき、あれは単に激情に任せた成り行きの行動だったにしろ、ゾロはサンジを力でねじ伏せようとした。その意味が、サンジ自身にも分からないではない。

 だが、うっすらと開いたサンジの瞼の向こうに映るのは、静かに風だけが通り抜けていく小さな松林。

 (止めねぇと・・・。)

 学校からそのままサンジを追ってきたのか、自分と同じように雨に濡れているゾロの制服の背中を引っ張って、どうにかサンジはゾロの唇から逃れようとした。
 人影はないとはいえ、今はまだ日も高い時間帯。しかも今目の前にいて、サンジの体をきつく抱きしめて離さないのは年齢的には今だ大人とは言い切れない存在。
 サンジはどうにか自分自身の理性が残っているうちにと、ゾロの腕から逃れようと身を捩った。
 
 別に、ゾロとエッチするのが嫌、というわけでもない。
 確かにサンジ自身、男と寝たことなんかはなかったが、それでもゾロの腕の強さとか、暖かさとか、こういうところはガキだよな、と笑いたくなるくらいに不器用に、ひたむきに自分を求めてくる態度だとか、そう言うもの全てが嬉しくて、愛しくて、ゾロが欲しいと思っているなら、こんな体なんかいくらでもくれてやる、そう本気で思えた。そして、それ以上に、サンジ自身もゾロに触れたいという欲求がないはずがなかった。
 ゾロを求める熱い波は、確実にサンジの体をその方に押し流していこうとしている。
 
 だが、しかしだ。

 (いくら体は一人前だって、年的にコイツが『経験有り』とは思えねぇ。)
 
 (それなのに、このまま、ここでってのは、マズいだろ。)
 
 (初めてが男相手で、しかも青姦ってのは・・・。)

 その事に、まったく罪悪感を感じないわけではない。
 かといって、ゾロを他の誰でも他人の手に触れさせるのはサンジ自身も我慢できるはずがない。気が付かなかったとはいえ、今までずっとサンジはゾロだけを見てきていたのだ。今更それを自分以外の手に委ねたり出来はしない。
 
 (まぁ、その辺は妥協してもらおう。)
 
 というか、今現在、これでもかというほどにサンジを求めているゾロが異論を唱えるわけはないのだが。
 そこまでは、なんとかサンジは自分の中で勝手に折り合いをつけたのだが、それでもやはり場所だけは気になった。

 (せっかくの『初エッチ』が屋外ってのは・・・。)

 しかも、二人とも体中びっしょりと雨に濡れていて、さっきゾロに湿った砂の上に押し倒されたおかげで、体には地面に落ちていた枯葉だとか、砂だとか、とにかく目に付くだけでも結構な感じに汚れにまみれている。はっきりいって、あまり美しい状況ではなかった。
 サンジ的にも、どうせ初めて男と寝るなんて体験をするからには、もっとちゃんとした、それなりの場所で落ち着いてコトに及びたい。
 なぜなら。

 (どう考えても俺が『掘られる』んだろ・・・。)

 目の前の図体のでかい『弟』が、頑固で自分勝手で我が強いことはサンジは百も承知だ。きっとただ肌を触れ合わせるだけでは我慢するはずなんかもないだろうし、ましてや自分が組み敷かれる側に回るはずがない。この勘だけは外れないだろうと、サンジは確信していた。
 そして、なによりサンジは徹底してゾロに甘く出てしまうことも自覚している。ゾロが本気で望めば、サンジにはNOとは言えない。
 
 (なぁ、ゾロ。別に俺は嫌がってるワケじゃねぇんだぜ。)

 (ただ、今ここでってのは待てって言ってるだけだ。)

 サンジはそんな意思を込めた瞳で、全身で欲情していることを隠そうともせずに体に触れてくるゾロを見上げて、激しい鼓動が聞こえてきそうな厚い胸を押しやった。

 「っ・・・。んだよ。」

 だが、サンジが見せた抵抗が気に入らないとばかりに、ゾロはわずかに離れた唇からすぐに不満の声を上げた。そんな様子のゾロにサンジの胸にも少しばかりキュッと痛みが走ったが、それでもこのままゾロに流されてしまうだけの思い切りを付ける事は出来なかった。

 「はぁっ・・・。な、あ・・・。もういいだろ・・・?。家、帰ろうぜ・・・。」
 
 (俺の言いたいことくらい、分かってくれるだろ?。)

 サンジはわずかにゾロが離れたことで出来た余裕で、少し乱れかけた息を整えると、さっき引きちぎられて体の側に投げ出されたままだったシャツに手を伸ばしてそれを引き寄せようとした。
 
 だが、伸ばした腕はシャツに届く前に、もう一度きつくゾロの腕に捕らえられた。
 
 「嫌なのかよ・・・。」

 低い声がゾロの口から零される。言い訳や、言い逃れは許さないという強い瞳が真っ直ぐに見下ろしてくる。
 サンジが思っている以上に、ゾロにはとっくに余裕なんかなくなっていた。

 今すぐにでも、お前が欲しいんだよ。

 見下ろす緑色の瞳が激しくそう主張してくる。

 「俺じゃ、嫌なのか?、サンジ。」

 キリキリと奥歯を食いしばるように、ゾロが苦し気に言った。
 掴まれて、押さえつけられた手首が焼けるように熱い。

 「そ、う、じゃねっ。んっ・・・。」

 違う、そう首を振った瞬間、再びゾロの口が降りてきて、激しく貪るように口付けされた。
 だが、サンジの口内を荒々しく蹂躙した唇は一瞬で離れた。

 「じゃあ、いいだろ?。」

 「俺、もう待てねぇんだよ。」

 切羽詰ったような声。短く刈り上げた髪が、裸の胸に押し付けられた。
 ゾロの体が細かく震えているのが静かに伝わってくる。
 
 「今すぐ、お前を俺のもんにしてぇんだ。サンジ。」

 「もう、待てねぇ。」

 そのまま、額を押し当てたまま、ゾロがわずかに顔を滑らせて、雨に濡れたサンジの白い肌にポツリと落ちている小さな薄い色の尖りに舌を這わせた。

 「んっ・・・。」

 まるで予期していなかったその感触に、サンジの口から小さな吐息が洩れた。

 「ここじゃ・・・。うんっ・・・。」

 性急に、自分の熱をサンジに移そうと、有無を言わさぬ勢いでサンジの体を弄り始めたゾロに、小さく抗議の声をあげたサンジの口は、戻ってきたゾロの唇に強く塞がれた。
 熱を持ったゾロの舌が、その動きに臆するように戸惑っていたサンジのそれに絡みつき、吸い上げられて、裏も表もくまなく舐め上げられて、零れるお互いの交じり合った唾液がサンジの顎を伝って流れ落ちていく。
 窒息しそうなその口付けに、結局サンジの理性はあっけなく切れてしまった。
 掴まれていない片腕を、ギュッとゾロの首に回してその体を自分の方へと抱き寄せた。
 サンジからのその承諾のサインに、ゾロは深く唇を合わせたまま、サンジの体を両腕できつく抱きしめた。




 密着した体が熱い。触れてくる手のひらも、何度も触れ合って口付けた唇も、何もかもがとてつもなく熱く感じる。

 「サンジ・・・。」

 小さく名を囁く唇が、優しく濡れた肌を掠めていく。体を抱きしめていた手のひらが、ゆっくりとサンジの裸の胸に回されて、大きな仕草で撫で摩られた。
 触れる全てが自分のものであることを確かめるように、丁寧に丹念にくまなく動くゾロの手。
 その手はやがて、ためらいなく開いたサンジの足の間に下りてきた。
 ゾロの体を受け止めている格好のサンジには、逃げる事も拒む事も出来ない。
 ジーパン越しに、ゾロの手がやんわりとその部分を握りしめてきた。

 「感じんのか?。サンジ・・・。」

 そこに、すでに熱を持って硬さを返してくるサンジ自身を感じて、首筋に舌を押し付けるように舐め上げながらゾロが聞く。

 「・・・ルセー・・・。」

 頬が熱くて、きっと真っ赤になっているだろうことが自分でもわかる。

 「ガキのクセに・・・。生意気、なんだよ・・・。」

 恥ずかしさを誤魔化すようにそう言って、サンジはお返しとばかりにゾロの股間に手を伸ばして。
 
 サンジは、そこにあった自分の予想をはるかに凌駕するゾロの熱の感触に、ピタリと動きを止めてしまった。
 
 (デカッ・・・。)

 一瞬白くなったサンジの頭に浮かぶのはその2文字。
 
 (コイツ、いつの間に・・・。)

 小さい頃、一緒に風呂に入った時の記憶しかないサンジにとって、ゾロのそれはまったく予想外に急成長を遂げていたようで。

 (ぜってー、俺よかデカイ・・・。)

 わずかに年上としてのプライドを傷付けられた気もしたが、それ以上に。

 (大丈夫か?。俺のケツ・・・。)

 そっちの方が心配になってきた。
 そう思わざるをえないくらいのゾロの息子。
 一度は受け入れる覚悟はしたものの、少しばかり腰が引けるのは否めなかった。
 顔をわずかに引きつらせて恐る恐る視線を上げてみれば、そこにはとても14歳とは思いたくないくらいに余裕の笑みを浮かべたゾロの顔。ついさっきまで見せていた子供くささの欠片もない。

 「良いって言ったんだからな。今更逃げんなよ。」

 ニヤリと笑ったその顔に、サンジは心の中で叫んだ。
 

 『中学生でそのデカチンと、エロ親父クセー態度は反則だろーーーーーーがッッ!!。』








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