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※このお話は『雨やどり』というパラレルの学生ゾロサンです※

Honey Honey Crescent Moon

<Vol.4>

 サンジは不機嫌を目一杯顔に貼り付け、むっつり黙り込みそっぽを向いたまま、ゾロと顔を合わせないようにしている。こんなトコロに長居しても仕方がないので、二人とも無言でロープウェイに乗り込んだ。
 行きはあんなに楽しそうだったのに。
 何だってんだと、眉間の皺を深くする。
 車に乗り込んでも黙りこくって、息苦しい事この上ない。
「おい。宿ドコにあんだよ」
「……」
 相変わらずサンジは無言のまま、苛立たしげにカーナビを操作すると、宿までの道を入力し、また顔を背けた。
 無機質な声が、宿までの道をアナウンスする。

−− ったく。何が気に入らないってんだ…

 まぁ、宿に着くまでにはサンジの機嫌も直るだろう。というか、直って貰わなければせっかく二人で旅行に来た意味が無い。ケンカは日常茶飯事で、まぁ何とかなるだろうと、仕方なく車を発進させた。
 しかしカーナビが有ろうと無かろうと、迷うのがゾロである。
「…っ。テメェ!右だっつってただろ、今!!バカかテメェは!その耳は飾りもんか?!」
 漸く口を開いたかと思えば、出てくる言葉は罵詈雑言。
「言うのが遅ぇんだよ」
「ああ?!何百メートルも前から言ってただろ!!」
「そんな早く言われてもな」
「じゃぁどうすりゃ良いってんだ、このクソマリモ!!手取り足取りハンドル切ってやんなきゃなんねぇのかよ?!」
「お前がちゃんと見てればいい」
「………!!」
 口をパクパクさせているサンジの顔を横目で見る。この呆けた顔が可愛いな、と思う。
「あ!だから、今んトコ右だってばよ!!なんだよ、もうっ。しょうがねぇなっ!」
 とうとうサンジが放り出してあった地図を拡げだした。カーナビは軌道修正させようと必死で道を模索している。右へ曲がれと何度も機械が告げる。サンジまでも右だ右だと騒ぎ出して、とうとうゾロは
「右ってどっちだ」
 と言い出した。





「もう疲れた…」
 サンジが地図を放り出し、疲れたを連発し始めた頃、漸く目的地に辿り着いた。既に日はどっぷりと暮れ、虫の音が聞こえている。

−− そりゃ、あんだけ文句とか喋り続けてりゃなぁ…

 機嫌は相変わらずよろしく無いようだが、先程の仏頂面よりはマシになっている。元々サンジは黙っていることが出来ないタチなので、機嫌が良くても悪くても何かしら喋っている。そのサンジが無言でいる事の方が居心地が悪いので、怒られてもバカだと言われても、少しは機嫌が直ったな、と思いホッとした。
 四苦八苦の末辿り着いた宿の門構えを見て、ぐったりしていたサンジが急に元気になった。
 砂利を敷き詰めた日本家屋の静かな佇まいである。ひっそりと建つ宿は、決して豪華過ぎず、こぢんまりと収まっているのに、高級感が漂っていた。
「ちょっココで止めろ。駐車場の場所聞いて来る」
 元気よく飛び出して行ったサンジを見送る。

−− 元気じゃねぇか

 と、思わず苦笑いが漏れた。疲れたのはこっちの方だと言いたいが、仕方がない。何がどうしてなのか分からないが、惚れてしまっているのだ。
 だが、先程のケンカは、一体何だったのかと思い返しても良く分からない。

−− 大体アレのドコが秘宝なんだ?

 それもよく分からない。
 思い返しているウチに、話が途中で終わってしまったサンジのズリネタを聞き出さねば、と余計な事まで思い出した。
「おい」
「あ?」
 考え事をしていたので、既に車に乗り込んでいたサンジに声を掛けられるまで気が付かなかった。
「ぼけっとしてねぇで、車回せ。裏に駐車場があるってよ」
「あ、ああ」
 車が数台しか停められないような駐車場だったが、隙間に滑り込ませる。エンジンを止め、今日は一日グズりもせず、よい子だった愛車に明日もよろしく頼む、と軽くステアリングを撫でた。
 荷物を取りだし表に回ると、玄関には女将とおぼしき女性と、仲居が数名立っていた。
「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました。お疲れでございましょう?すぐにお部屋にご案内いたします。ごゆっくりおくつろぎ下さいませ」
 サンジは、若い女将の口から淀みなく発せられる言葉に、うっとり聞き惚れていた。ココで悪いクセが出なければいいが。
「お荷物をお預かりいたします」
「ええっ!!めっそうもありません、マダム!」
 やはり出たか…、とゾロは頭を抱えた。
「女性の手を煩わせる程の荷物などありません!あったとしてもコイツが持ちますので、どうぞお気になさらず!!」
「まぁ。でも…」
「ああ!!こんな素敵な女性と出会えるなんて!僕はここに来て貴女と出会う運命にあったのですね!!」
「あら…ありがとうございます」
 にっこり微笑む顔が上品だと、珍しくゾロは感心した。まだこんな風に笑う女が居るとは、貴重だ。
 隣で今にも膝を付いて女将の手を取りそうなサンジの腕を取る。サンジの目はまだハートマークのままである。げんなりしながら、女将に部屋へ連れて行ってくれるよう促した。
「部屋はどこだ?」
「失礼いたしました。こちらでございます。あの、お荷物を…」
「いや、いい。取りあえず部屋まで案内してくれ」
「はい、では…」
 先に立って歩き出した女将の後を、サンジの腕を引いて付いて行く。仲居ではなく、女将自ら案内してくれるとは思わなかった。
 サンジはと横を見ると、残された仲居達にニコニコと手を振っていた。

−− 駄目だ、こりゃ…

 サンジの女好き(或いは信仰)は、治りそうも無い。

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2005/1/13UP


全然サクサク進んでませんね;;
やっと宿にたどり着きましたよ、この人たち…。
でも続き頑張って書きます〜。ノロノロですが、お待ちくださいませ。