<<<back

Under 777hit!!

※このお話は『雨やどり』というパラレルの学生ゾロサンです※

Honey Honey Crescent Moon

<Vol.3>

 熱海城を見ながら、小高い山の頂上にあるらしい秘宝館を目指しロープウェイに乗り込む。雨も小降りになりつつあり、高いところからみる景色はそこそこ絶景と言えた。
 サンジはロープウェイに乗り合わせたカップルや団体客に紛れ、子供のようにはしゃぎながら景色を眺めている。
「へぇ。結構イイ感じじゃねぇか。近いのになかなか海とか行かねぇし、あんま良い想い出も無かったけどさ、海ってこうやって眺めるとやっぱ綺麗だよな」
「ああ」
「オマエ家族旅行とかで来なかった?ちょっとした遠足とかさ」
「遠足…?いや、こっち方面には来てねぇな。それにお前…家族旅行ったって、あの親父と一緒に旅行するくらいなら、ルフィと旅行した方がマシだろ」
「ルフィと?」
「まぁルフィとどっか出掛けるのも勘弁だけどな。ドコ行っても何か食ってるから、首根っこ捕まえんのが大変だ」
 わはは、と屈託無く笑うサンジだが、今ちょっと引っ掛かる事を聞いたような気がする。それが何だったか、スルリと頭の中を擦り抜けてしまった。
「お前は家族旅行で伊豆とか熱海とか来なかったのか?」
「んー…来てねぇよ。あ、ほら、もう着くぜ」
 そうこう話しているウチに、ロープウェイは山頂に到着した。
 しかし、カップルがやたらと多い。男の二人連れは、他には見当たらない。カップルの他は、どこかの会社のグループだろうか、年齢も違うような団体くらいしか居ない。
 その秘宝とやらは、やはりカップルで見るような物なのだろうか。こう、キラキラの宝石とかが展示してあって、売り物も高そうなカップルで買うような指輪だったりするのだろうか。
 だが団体客はどうなのだろう。
「なぁ、やたらカップルとか多くねぇか?つか、野郎二人連れなんて俺たちくらいしか居ねぇぞ」
「あ?別に宝石店に行く訳じゃねぇんだから別にいいんじゃねぇの。カップルが多いってそりゃ、旅行で来てるからってだけじゃねぇのか。オマエがそんなの気にするなんて珍しいな」
 まぁ、言われてみればサンジとゾロもカップルには違いない。傍目から見れば友人同士に見えるだろうが。
 ゾロは良く分からないと首を傾げつつ、サンジの後を着いて行った。
「…うげっ…」
「…んだこりゃ?」
 怪しい。
 あからさまに怪しい佇まいである。
「こんなトコロにある秘宝ってなぁ…なんだよ、オイ」
 サンジの腰はかなり引けている。
「…知るかよ」
 出口付近には、遠い目をして煙草を噴かしている人が数名いた。しかもほぼ全員が心なしか疲れたように見える。しかもカップルが多かった割に、そこに居るのは男ばかりだ。
「オイ、入るのか、入らねぇのか?」
 外装を見ただけで、止まってしまったサンジを促すと、ノロノロと歩き出した。
 入り口に向かって。
「…入る。せっかく来たんだ。秘宝とやらを見て帰る」
「そうかよ」
「わぉ!マーメイドちゃん!!…って、何で裸なんだ…?」
 ロビーに入ると、とんでもない物が目に飛び込んで来た。(後から分かったが実際はその人魚とやらは外にもあった)
 微妙に秘宝の意味が分かりつつあったが、二人とも何故か後戻りする事も出来ないような雰囲気で、ノロノロと歩を進める。
 チケットを渡し薄暗い中に入ると、更にとんでもない物が鎮座していた。
「ぅわ〜お…」
「でけぇな」
「いや、もう、でけぇとかそんな問題じゃねぇだろ、コレは…」
 笑うトコか。もう笑うしかないのか、サンジの笑いは強張っている。

−− こりゃ…ちょっと拝んでおくべきか?

 巨根(といって良い物かどうか…)には、あまりにもでかすぎる物体に、思わずゾロは手を合わせたくなった。ここまで来ると柏手の一つも打ちたくなるというものだろう。
 だが、もう見るのも嫌だという様子で、サンジが目を背けつつ次の間に進んで行ったので、後に続いた。
「あー…なんつーか、秘宝の意味が分かった気がする…」
 俯き加減のサンジがぼそぼそ呟いている。
 回りを見渡すとカップルの女がきゃわきゃわ騒いでいる。その声すらもサンジには耐えられないようだ。
「四十八手だってよ、へぇ〜こりゃかなり無茶な体勢だろ、なぁ?」
 呑気に壁の絵を見た感想を述べると、サンジは嫌そうな顔を向けた。
「オマエなぁ…」
「しょうがねぇだろ、もう入っちまったんだしよ。笑い話の一つにでもするしかねぇだろ、こりゃ」
 開き直り、あっけらかんと言い放つと、暫く考えるような仕種をした後、サンジも諦めたようだった。これは笑いの種に使うしかないと思ったかどうかは定かではないが。
 ゾロとしては、四十八手もサンジとイタす時の勉強だと思えば、こりゃちゃんと見ておかねばと思わず真剣に見てしまった。
 張り型と書かれた陳列棚には、これでもかと言わんばかりの擬似男性器が並べられている。
「すげー。何だこりゃ。バイブか」
「声がでけぇんだよ、テメェ!!」
「…てっ。蹴るな」
 思わず漏れた感心したようなゾロの声に、すかさずサンジの蹴りが飛んできた。
「つーか、どうすんだよ、こんなモン集めて展示して…」
「だから、秘宝館なんだろ」
「オレはこんな、野郎のブツ模造品なんかにゃ興味ねぇよ。どうせなら麗しいレディを見たい…」
 途中で言葉を途切れさせたサンジの視線の先を追うと、春画があった。
「…ううっ…エロ本なら、家で一人でこっそり見てぇ…」
 何?聞き捨てならない。
「エロ本?お前が?お前、一人の時そんなモンみながらヤってんのか?」
 ゾロのオカズはサンジだ。そのサンジのオカズが自分ではないのは、ちょっと許せない気がする。
「違ぇよ。どうせ見るなら、一人でこっそり見るモンだろ、こう云うモンは。こんな堂々と猥褻物を陳列していていいのか?合法なのか?運営してるんだから、合法なんだよな…そりゃ、風呂やらナニやらの風俗だって普通に営業してるモンなぁ」
「お前のズリネタ何だ?」
「……はぁ〜?」
 サンジの、語っていたというか、独り言のように呟きが止まった。ゆっくり視線を向けるサンジの顔がじわりと紅くなる。口をパクパクさせて、何事かを言おうとしていたが、途中で諦めガックリと肩を落とした。
「オイ、途中で止めんなよ」
「……うるせぇ…アホ、ボケ、カス、死ね、クソッ」
「んだと、コラ。つか、ズリネタ何だって聞いただけだろうがよ」
「知るかっ!」
 くるりと背を向け、ドスドスと音を立てて先を急ぐように部屋を出て行った。といっても、次の間に行っただけで、すぐに追いついたが。

−− 知るかって、テメェの事だろうがよ。知らねぇって事ぁねぇだろ

 ムッとしつつも、答えてくれそうに無いサンジに今無理に言わせる事はないかと思い直し、取りあえずは目の前のお勉強道具を見る事にした。





「…はぁ…」
 秘宝館を出ると、出口付近の喫煙所で、サンジは煙草を噴かしながら深い溜め息を付いていた。そういえば入る前にやけに疲れたオッサンたちがココで遠くを見ながら煙草を吸っていた姿を思い出す。
 中を見終わった今なら、その気持ちがよく分かると言う物で。
 兎に角最後までとんでもなかった。ナニがドウと表現していいのか分からないが、成る程『秘宝館』とは良く言ったものだと、ある意味感心してしまう。
「止めときゃ良かった…」
 深々と溜め息を付くのは何度目だろう。
「ん?そうか?まぁ、確かに一遍来りゃ、もう二度は来なくていいかとは思うけど」
「オレは気持ち悪くなってきたぜ。野郎のブツが延々と…」
「女がアンアン言ってるのもあったろ」
「そうかよ!!でもオレは嫌だったって言ってるだろ!!蒸し返すなよ!」
 イキナリ切れ出した。何だってんだ。
「何でソコでお前が切れるんだよ。そもそも来たいって言ったのはテメェだろうが!」
「何だよ。オレが悪いってのかよ!知らなかったんだよ、んなトコだって!!」
「俺だって知らねぇよ、んな事」
 売り言葉に買い言葉。
 近くに居たカップルが遠巻きに見ているが、そんな視線など気にする余裕もなく、サンジの口論攻撃は止む気配は無い。ゾロも自分が悪いとは思っていないので、折れる気は無い。
 そういえば、先程まで降っていた雨は止んでいた。
 そんな事すらも気が付かないままで、暫しケンカは続いてしまった。

<<<back next>>>

2004/9/27UP


何やら秘宝館の詳しい説明とか書いてしまいました;;
スミマセン(汗)
でも私が行ったのは、もう何年も前の話なので、記憶からかなり抹消されておりました(-_-;;
そして、ちょっとトラブル(笑)
ココから先は、出来るだけサクサクUPしたいと思います〜!