第1章


  2000.4.21 けせらが家にやってきた
 
 この前会ったときと同じ、愛くるしい姿で、お店の箱の中で私たちを待っていた(かどうかはわからないけれど)小さな仔犬に、私たちは“けせら”という名前を用意していた。
 このとき、けせらはまだ、この世に生まれてから、わずかに44日を数えただけだった。
 こんなに早く、お母さん犬から離されて・・・、と思うと、少し胸がチクリと痛んだ。
 一度目のワクチン注射をしてもらい(ちょっと早すぎるかもしれないと思ったが、大丈夫でした)、けせらもなんだか、どこかがチクリと痛んだに違いない。
 小さなけせらが入れられた小さな箱と、何とも言えない大きな期待を抱えて、車に乗り込む私たち。
 「仔犬が酔ってしまうといけないので、家に着くまで開けないでください」
と言われたけれど、けせらが、箱の中でずっとバタバタしているので、つい、途中で一回箱から出し、タオルでくるむようにだっこをして、ついでに記念すべき、1枚目の記念撮影。
 けせらは全てに興味津々で、キョロキョロしては、歩き回りたそうに、私の腕の中でバタバタしていた。 


4.25 新しいお家って
 けせらが家に来てから、数日が過ぎた。
 よく本なんかでは、仔犬は環境が変わると不安がり、また、ワクチンを接種した直後などもデリケートで、慣れるまでしばらく、体調を崩してしまったり、食欲がなかったり、ということもある、などと書いてあるが、けせらには、全然そのようなことはなかった。
 ドライフードをお湯でふやかして、冷ましてスプーンでつぶしてからあげる、1日3度のシンプルな食事もしっかり食べるし、1日に何度も健康的なうんちをするし、すやすやとよく眠る。
 けせらが元気な仔で、ただそれだけで、本当によかったと、しみじみと感じさせられる。
 それでも小さなけせらは、ちょっとしたことで消えてしまうんじゃないか、と思うくらい、本当に小さくてかわいくて・・・。
 あまりに静かだと、つい不安になってしまう。
 起こさないように、そーっとのぞいては、すやすやと眠る姿に安心し、そのかわいらしさに見入ってしまう日々だった。


4.26 けせらが見てる
 仔犬は、1日24時間の内、20時間近くも眠っているらしい。
 かわいいからといって、かまい過ぎると、睡眠不足によるストレスを与えてしまうという。
 ペットショップで、こんな注意をうけた。
 しばらくはダンボールの中で、上からバスタオルをかけるなどして、暖かくって、周りを気にせずよく眠れる環境にしてあげること。
 また、接するのは、ごはんのときや、それ以外でも1日2回ぐらいなど、仔犬の負担にならない程度にし、邪魔をしないように、ゆっくりと眠らせてあげること。
 それから、夜中などに吠えたりないたりしているときにかまってしまうと、騒げば来てくれる、と覚えてしまい、うるさいわんちゃんになってしまうので、なきやむまで放っておくこと。
 それでもやっぱり、うんちはしていないかとか、ちゃんと眠っているだろうかとか、けせらちゃんのお顔が見たいだとか、いろいろ気になるものである。
 気付かれないように、そぉーっと、そぉーっと、タオルの隙間からのぞいてみると、けせらもこっちを見ていたりすることもある。
 しかも、とってもおすまししてね。
 「くぅーん、くぅーん(遊んで!遊んで!)」
 そういうときは、しばらく優しくなでて「ねんね、ねんね」と言って退散したりするときもあるが、やっぱりかまいたくなるもので・・・。
 確実に、ぺットショップで言われた以上にかまってしまう。
 箱の外に出してもらうと、とにかくうれしくて仕方がない様子で、けせらはやんちゃぶりを発揮する。
 初めのうちは、たどたどしくって上手に歩けなかったけれど、早速私の足にじゃれ始めたりするようになった。
 やっぱりいたずらも大好きで、家の中を探検しては、あちこちを噛んでみる。
 そして、ちょっと油断すると、突然、ちー、っとやらかしてくれた。
 ダンボールの中にしかトイレがないので、けせらを出すときは、トイレも一緒に出して、けせらに見せながら、一定の場所に置いてやることにした。
 でも、けせらはおかまいなしに、私の手の届かない所に行って、気持ちよさそうにしてしまう。
 もう、ちゃんと叱って教えるからね。 
 早く覚えてくれるといいな。
 自分から眠ろうとはせず、外に出していると、いつまででも飛び回って遊んでいそうな勢いのけせら。
 箱に帰るのは、何だかとっても切なそう。
 私も切ないよ、けせら。
 でもね、雑巾がけはもう充分したし、けせらだって、今はいっぱい眠るのが、大事なお仕事なんだから。
 けせらは、よく遊んだ分、すぐにぐっすり眠ってくれるので、こっちも安心だった。
 よく食べて、よく眠って、トイレもいっぱいして、とっても元気に遊ぶ、けせらは本当に良い仔!


4.27 ほら、こんなに小さい!
 だっこをすると、手の中にすっぽりと収まってしまう。
 でも、やんちゃなけせらは、じっとしているのが苦手みたい。
 「こんな所でじっとしているより、早く降りて走り回りたいよー」


いたずら天使の寝顔
4.28                4.29
 眠る、眠る、眠る。
 ときにはタオルに顔をうずめて、ときには丸くなって、という具合に、いろいろな格好をして眠るけせら。
 そりゃあ、起きているときだって、けせらはものすごくかわいいけれど、眠っているときのけせらは、まるで天使みたい。
 見ているだけで幸せになってしまう、いたずら天使の寝顔。
 こんなにあいらしい寝顔から、あんなに元気に飛び回る、ものすごくやんちゃなけせらを、一体誰が想像できることやら。


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