ゼルハはちょっと黙り込んだ。

…ウェイリスに誉められて、僕は落ち着かない気分だった。身に覚えのないことで誉められるのは、落ち着かない。

加えて、ゼルハ様とやらが口走った「大錬金術師ノーマン」という呼び名に、僕はドキドキしていた。見習いにすぎない、この僕が大錬金術師?

僕が、ぼんやりしているので、ウェイリスがゼルハ(ということにしておこう)に説明を始めた。

「…そうなの?」

ゼルハは、僕の顔をまじまじと凝視していたが、突然、僕の右手をつかんで、手のひらを眺めた。

「フム…どうやら、ホントにノーマンらしいわね。」

割とあっさり、ノーマン本人だと認めてもらえたことに、ホッとしながら、ゼルハの視線をたどって、自分の手のひらを見た僕は、ギョッとなった。

今まで気づかなかったが、右手のひらに、ひどくひきつれた大きな傷跡があったのだ。

まるで、皮をはぎとった後のようだった。ひどく古い傷だった。ゼルハは、その傷を眺めていたのだ。


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